制度系の事例問題は,当然ですが,制度を知らないと正解することができません。
今回は,社会保障の事例問題を取り上げます。
医療保険は,療養の給付とともに現金給付のものがあります。
健康保険で規定される現金給付のものの代表は,傷病手当金です。
傷病手当金は,傷病によって労務不能になった日から,連続した3日間のあと,4日目から通算して1年6か月間給付されます。
そのほかの現金給付には,出産手当金と出産育児一時金がありますが,これらはまた別の機会に紹介します。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題54 事例を読んで,健康保険などに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
会社員のFさん(35歳,男性)は,健康保険の被保険者であり,妻のGさん(33歳)と同居している。GさんはFさんの加入する健康保険の被扶養者である。ある休日,FさんはGさんを同乗させ,自家用車を運転して行楽に出掛ける途中,誤ってガードレールに衝突する自損事故を起こし,二人ともケガをしたので,治療のため病院に行った。
1 事故はFさんの過失によるものなので,健康保険は適用されず,FさんとGさんは治療費を全額負担しなければならない。
2 事故はFさんの過失によるものなので,Fさんには健康保険が適用されないが,Gさんには治療費について健康保険の給付が行われる。
3 ケガのため,翌日から連続して会社を休み,その間,給与の支払がなかった場合,Fさんは休業4日日から傷病手当金を受けられる。
4 Gさんがパートで働いており,仕事を休む場合,Gさんは傷病手当金を受けられる。
5 Fさんのケガは,労働者災害補償保険の療養補償給付の対象となる。
このような事例問題では,傷病を負ったのは,仕事中(通勤も含む)なのか,それ以外なのかを確認することから始めます。
仕事中なら労災保険が適用されるからです。
この事例の場合は,休日中の事故なので,労災保険ではなく,健康保険が適用されます。
それでは,解説です。
1 事故はFさんの過失によるものなので,健康保険は適用されず,FさんとGさんは治療費を全額負担しなければならない。
2 事故はFさんの過失によるものなので,Fさんには健康保険が適用されないが,Gさんには治療費について健康保険の給付が行われる。
健康保険は過失であっても適用されます。
傷病を負った場合,健康保険が適用されないのは,労災保険が適用される場合と故意による場合です。
3 ケガのため,翌日から連続して会社を休み,その間,給与の支払がなかった場合,Fさんは休業4日日から傷病手当金を受けられる。
これが正解です。
注意が必要なのは,労務不能になった日から連続した3日間の後,4日目から給付されることです。
4 Gさんがパートで働いており,仕事を休む場合,Gさんは傷病手当金を受けられる。
傷病手当金は,被保険者本人の所得補償です。
Gさんは,被扶養者なので,傷病手当金は給付されません。
5 Fさんのケガは,労働者災害補償保険の療養補償給付の対象となる。
休日中のけがは,健康保険の対象です。