社会保障では今のところ,毎回1問出題されています。
法制度の知識が問われる事例問題は,普通の一問一答式(いわゆるタクソノミーⅠ型)に比べると,事例を絡めている分,問題が難しくなります。
それでは,今日の問題です。
第25回・問題55 事例を読んで,医療保険制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
会社員のHさんは,健康保険の被保険者であるが,うつ病により会社を休職し,健康保険の傷病手当金を受給している。うつ病の原因が職場環境にあると考え,労働者災害補償保険法(以下「労災保険」という。)よる労働災害の認定を請求するとともに,病気の治療に専念するため,会社を退職することを予定している。
1 Hさんに支給される傷病手当金の額は,休業前の6か月間に支払われた平均賃金の80%である。
2 Hさんが退職後も傷病手当金の支給を受けるためには,健康保険の任意継続被保険者となる必要がある。
3 Hさんが健康保険の被保険者となって二年を経過する前に休職した場合には,傷病手当金は支給されない。
4 Hさんに対する傷病手当金は,労務不能となった日から連続する3日の待機期間の後,4日目から最長で1年6か月間支給される。
5 Hさんの請求が認められた場合,労災保険に基づく休業補償給付が支給されるため,健康保険による傷病手当金は減額される。
医療保険に関する事例問題の場合,かなりの頻度で出題されるのが,傷病手当金です。
傷病手当金って何? と思う人はかなり勉強不足の状態だと言えるので,しっかり覚えてください。
傷病手当金は,2022年に制度が変わり,この問題では今は正解がありません。
この問題の本来の正解は,選択肢4です。
4 Hさんに対する傷病手当金は,労務不能となった日から連続する3日の待機期間の後,4日目から最長で1年6か月間支給される。
制度が変わったのは,最長で1年6か月間が通算で1年6か月間となったことです。
Hさんに対する傷病手当金は,労務不能となった日から連続する3日の待機期間の後,4日目から通算で1年6か月間支給される。
これが現時点(2023年3月)で正しい文章となります。
それでは,ほかの選択肢を確認します。
1 Hさんに支給される傷病手当金の額は,休業前の6か月間に支払われた平均賃金の80%である。
傷病手当金の額は,平均賃金の3分の2です。
2 Hさんが退職後も傷病手当金の支給を受けるためには,健康保険の任意継続被保険者となる必要がある。
傷病手当金を受け取るために健康保険を任意継続するというのは,何ともおかしな話です。
退職前の1年以上にわたって被保険者であったなら,傷病手当金を受け止ることができます。
3 Hさんが健康保険の被保険者となって二年を経過する前に休職した場合には,傷病手当金は支給されない。
退職した場合と異なり現職の場合は,被保険者の期間にかかわらず,傷病手当金は支給されます。
5 Hさんの請求が認められた場合,労災保険に基づく休業補償給付が支給されるため,健康保険による傷病手当金は減額される。
労災が認められると,傷病手当金に変わって休業補償給付が支給されます。
同じ事由による傷病では,休業補償給付と傷病手当金は併給されません。