ILO基準の社会保障給付費の機能別内訳は,
1 高齢
2 保健医療
3 家族
4 障害
5 労働災害
6 失業
7 住宅
8 生活保護その他
に分類されて,まとめられています。この順番は多い順になっています。
令和2年度・2020年度では,高齢が約半分を占め,3割の保健医療と合わせて,この2つで8割を超えます。
注意すべきポイントは,「家族」です。
家族は,10年くらい前から比べるとかなり増えてきています。
以前は,わずか数パーセントにすぎませんでしたが,近年の少子化対策により,給付が伸びています。
それでも10%にも到達していません。
今後は,10%を超えると考えられると思いますが,家族がどの程度なのかは,必ず押さえておきたいです。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題50 「平成28年度社会保障費用統計」(国立社会保障・人口問題研究所)の内容に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 社会保障給付費の対国内総生産比は20%を超えている。
2 政策分野別社会支出の構成割合が最も高いのは,「家族」に対する支出である。
3 政策分野別社会支出のうち,「住宅」支出の構成割合は10%を超えている。
4 部門別社会保障給付費の対国内総生産比をみると,「医療」が最も高い。
5 社会保障財源をみると,公費負担の割合が最も高い。
この時に,OECD基準の社会支出が初めて出題されました。
政策分野別社会支出は,
保健
高齢
家族
遺族
障害・業務災害・傷病
失業
積極的労働市場政策
住宅
他の政策分野
に分類されて,まとめられています。この順番は多い順になっています。
社会保障給付費の1位と2位が入れ替わっていますが,社会保障給付費と異なり,1位と2位の差はわずか数パーセントしかありません。
そのため,政策分野別社会支出の最も多いものが問われることはないと言えます。
そのため「高齢と保健を合わせると8割を超える」というところが重要です。
社会保障給付費と社会支出の内容は,基本的にほぼ一緒なので,それぞれを詳細に覚える必要はありません。
変な覚え方をするとあいまいになるので,注意が必要です。
それでは,解説です。
1 社会保障給付費の対国内総生産比は20%を超えている。
これが正解です。
対国内総生産比は,とても覚えにくいものです。
対国民所得比も出題されるので,特に覚えにくいです。
対国内総生産比は,約20%
対国民所得比は,約30%
国民所得に比べて,国内総生産のほうが規模が大きいので,比率にすると,上記のようになります。
2 政策分野別社会支出の構成割合が最も高いのは,「家族」に対する支出である。
政策分野別社会支出は,保健と高齢が1位と2位となります。家族は多くなっていますが,10%まではありません。
これは,社会保障給付費と同じです。
3 政策分野別社会支出のうち,「住宅」支出の構成割合は10%を超えている。
保健と高齢を合わせると8割を超えるので,それ以外は10%を超えるものはないと推測できます。
住宅は,1%にも満ちません。
4 部門別社会保障給付費の対国内総生産比をみると,「医療」が最も高い。
ようやくここで,社会保障給付費が出題されました。
しかし,少しひねりが入っています。
部門別社会保障給付費は,年金,医療,福祉その他(5:3:2)の順になっていることは何度も出題されていますが,ここでは対国内総生産比を聞いています。
しかし,年金,医療,福祉その他のうち,年金が最も大きいことが分かっていれば,同じ分母で割っても,割合は年金が最も大きくなります。
5 社会保障財源をみると,公費負担の割合が最も高い。
社会保障財源は,社会保険料:公費=6:4 となっています。
これは,これまでに何度出題されてきたか分からないほど,繰り返し繰り返し出題されています。
〈今日のまとめとして〉
国家試験は,もちろん新しいものを加えて出題されますが,基本的には過去に出題されたものを押さえていくと合格基準点に到達できます。
つまり,参考書に書かれているものを確実に覚えていけば,必ず合格できるということです。
不合格になるのは,覚え方が甘いということに尽きます。覚え方には工夫が必要です。