社会保障の事例問題を確実に正解するためには,知識が必要です。
そういった意味では,タクソノミーⅡ型に分類されるのでしょう。
それでは,前説なしに今日の問題です。
第32回・問題55 事例を読んで,適切なものを2つ選びなさい。
〔事 例〕
Fさん(65歳女性)は,22歳からアパレル関係の大企業で正社員として働き,厚生年金にも加入していた。その後会社員の夫と結婚し,35歳の時に退職して専業主婦になった。48歳の時に個人事業主として手芸店を開き,現在ではかなりの事業収入を得ている。
1 Fさんが大企業で働いて厚生年金に加入していた時には,給与の額にかかわらず毎月定額の保険料を支払っていた。
2 Fさんは通算して10年以上年金制度に加入しているので,老齢基礎年金を受給できる。
3 Fさんが専業主婦であった期間は,Fさん自身が国民年金の保険料を納付する必要はない。
4 Fさんは,事業収入に応じた年金保険料を支払わなければならない。
5 Fさんは65歳なので老齢厚生年金を受給できるが,事業収入が基準を超える場合は年金額が減額される。
わくわくするような問題だと思いませんか。
問題を解くのが楽しいと思えるようになるのは大変ですが,そこまで至れば国家試験は盤石です。
国家試験に失敗する人に共通の傾向は,自信をなくして実力を発揮することができないままに試験が進んでしまうことです。
知識があることは合格するのに必要なことですが,それだけでは合格するのは難しいということなのでしょう。
それでは解説です。
1 Fさんが大企業で働いて厚生年金に加入していた時には,給与の額にかかわらず毎月定額の保険料を支払っていた。
厚生年金の保険料は,報酬比例(報酬によって保険料が変わること)です。
2 Fさんは通算して10年以上年金制度に加入しているので,老齢基礎年金を受給できる。
これが1つめの正解です。
老齢基礎年金を受給するためには,10年以上の加入期間が必要です(免除期間等も含む)。
以前は,25年が必要でしたが,近年の改正によって短縮されました。
3 Fさんが専業主婦であった期間は,Fさん自身が国民年金の保険料を納付する必要はない。
これが2つめの正解です。
第三号被保険者の保険料は,第二号被保険者全体で支えているので,本人は保険料負担がありません。
4 Fさんは,事業収入に応じた年金保険料を支払わなければならない。
報酬によって保険料が変わるのは厚生年金です。
Fさんは,現在は厚生年金には加入していません。
5 Fさんは65歳なので老齢厚生年金を受給できるが,事業収入が基準を超える場合は年金額が減額される。
これを正解だと思う人も多いでしょう。そのためにこの問題を正解するのが難しくなります。
在職老齢年金は,65歳以上70歳以上の厚生年金の被保険者が一定以上の報酬があった場合に,年金額が停止,減額される制度です。
Fさんは現在,厚生年金の被保険者ではないために,在職老齢年金の対象にはならないために,減額されません。