第35回国家試験は,合格率44.2%,合格基準点90点という結果となりました。
まさしく歴史が動いた瞬間です。
後世の人が社会福祉士の国家試験の歴史を振り返った時,ここが転換点になったことを知るのではないでしょうか。
合格率がどうなろうが,合格基準点がどうなろうが,覚えるべきものを確実に覚えれば合格できるので,それらを今までは特段気にしたことはありません。
しかし,よくわかることは,文章で構成する問題は,難易度をそろえることが難しいことです。
問題が易しくても難しくても合格基準点を6割程度に固定的に運用されるなら,問題が易しければ合格が楽になりますし,問題が難しい時は合格が難しくなります。
タクソノミーⅡ型,タクソノミーⅢ型は,知識がそのまま答えにならないので,問題の作り方によって,難易度は大きく変化します。
第35回では,不適切問題が1問あり,すべての受験者に1点が加点されました。
第35回・問題76 次の記述のうち,医療チーム内で専門分野を超えて横断的に役割を共有するトランスディシプリナリモデルの事例として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 Fさんの病状が急変したため,医師は,看護師へ静脈注射機材の準備,薬剤師へ薬剤の準備,医療ソーシャルワーカーへ家族への連絡の指示を出した。
2 災害発生による傷病者の受入れのため,G病院長は,全職員の招集,医師へのトリアージ,看護師へ手術室の準備,医事課職員へ情報収集などの指示を出した。
3 Hさんの食事摂取の自立の希望を達成するため,理学療法士は座位保持,作業療法士は用具の選定,管理栄養士は食事形態,看護師は食事介助の工夫を行った。
4 一人暮らしで在宅療養中のJさんの服薬管理について,往診医,訪問看護師,薬剤師,訪問介護員,介護支援専門員等の自宅への訪問者それぞれが,Jさんとの間で確認することにした。
5 自立歩行を希望するKさんの目標をゴールに,理学療法士,作業療法士,看護師,介護福祉士とでケースカンファレンスを行い,立位保持訓練の方法を検討した。
これがタクソノミーⅡ型に当たる問題です。
難しくなりすぎないように,設問には「積断的に役割を共有する」という但し書きを加えた工夫がみられます。
この問題を作った試験委員は,選択肢5を正解にしたつもりだったと思いますが,選択肢4も完全に間違いだとは言えないことが不適切問題になった理由でしょう。
これを踏まえて,今後はタクソノミーⅡ型,Ⅲ型はより慎重につくられていくことになるでしょう。
今後の行方
先に述べたように,文章で構成する問題は,難易度を安定させることが難しいと考えられます。
しかも知識がそのまま答えにならないタクソノミーⅡ型,タクソノミーⅢ型の問題は,丸暗記的な勉強では,正解することができません。
第35回国家試験は,第34回国家試験の厳しさを知っているからこそ,歯を食いしばって勉強した人が多かったと思います。
第35回国家試験が易しかったから合格できたと思うのは,大間違いです。
合格するのが以前よりも易しくなったと思って,気を緩めると足元をすくわれます。
第35回に合格した人は,もしかするとそれ以前に合格した人から揶揄されることもあるかもしれません。
しかし,決してそんなことはありません。確実な知識がなければ合格できない問題に生まれ変わった国家試験で見事合格できたのは,努力があってこそのことです。
今後,受験する人は,合格が易しくなったと思うのは,大間違いです。
どんな試験になろうと,努力不足の人が合格するのは困難です。
正しい努力を続ける人は報われます。正しい国家試験の姿です。