社会保険制度は,社会保険料を財源として運用されますが,日本の社会保険制度には,社会保険料だけではなく,税も財源としていることに特徴があります。
しかし,注意してほしいのは,財源割合では税が社会保険料を超えるようには制度設計はされないことです。
もし税財源のほうが多くなれば,それは最早社会保険制度は言えないものとなってしまうでしょう。
医療保険に対しても国庫補助と国庫負担があります。
ここでは,国庫補助と国庫負担の違いは問われないので,簡単に以下のように整理してみます。
保険者 |
療養の給付の費用 |
事務費用 |
協会けんぽ |
あり |
あり |
健康保険組合 |
なし |
あり |
都道府県等が行う国民健康保険 |
あり |
あり |
国民健康保険組合 |
なし |
あり |
注意すべき点は,いずれの保険者に対しても事務費用に対する国の負担がありますが,健康保険組合と国民健康保険組合の療養の給付には,国の補助はないことです。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題53 医療保険制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 後期高齢者医療制度には,75歳以上の全国民が加入する。
2 後期高齢者の医療費は,後期高齢者の保険料と公費で折半して負担する。
3 都道府県は,当該都道府県内の市町村とともに国民健康保険を行う。
4 健康保険組合の保険料は,都道府県ごとに一律となっている。
5 協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)の給付費に対し,国は補助を行っていない。
この問題の正解は,選択肢3です。
3 都道府県は,当該都道府県内の市町村とともに国民健康保険を行う。
従来,市町村国民健康保険と呼ばれていた市町村が保険者となる国民健康保険は,平成30年の制度改正で,都道府県も保険者になりました。
それでは,ほかの選択肢も解説します。
1 後期高齢者医療制度には,75歳以上の全国民が加入する。
後期高齢者医療制度の被保険者は,65~74歳で一定の障害がある者と75歳以上の者であることは,今までに何度も出題されています。
それでは,75歳以上の全国民が加入するのでしょうか?
いいえ,生活保護受給者は除かれます。
2 後期高齢者の医療費は,後期高齢者の保険料と公費で折半して負担する。
後期高齢者医療制度の財源は,保険料と公費に加えて,現役世代の保険者の拠出金である「後期高齢者負担金」によって賄われます。
4 健康保険組合の保険料は,都道府県ごとに一律となっている。
健康保険組合の保険料は,組合が独自に定めます。
5 協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)の給付費に対し,国は補助を行っていない。
協会けんぽの給付費(療養の給付等)に対して,国の補助があります。
少し複雑なので,上記の表は必ず覚えておきたいです。
給付費に対して国の補助がないのは,健康保険組合と国民健康保険組合です。
ただし,これらに対しても事務費用に対しては国の負担はあります。