第35回国家試験というか,第34回国家試験からの出題トレンドかもしれませんが,特徴的なものとして気づくのは,法の目的が出題していることです。
学校の先生は,法の目的を押さえておくように言います。
それがようやく実るように傾向になってきたと言えるのかもしれませんが,覚えていなくても答えに困ることはないように思います。
多くの場合は,法の目的の中にその法の特徴を示す文言が含まれるためです。
第35回・問題28 生活困窮者自立支援法の目的規定に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 生活困窮者に対する自立の支援に関する措置を講ずることにより,生活困窮者の自立の促進を図ること。
2 すべての国民に対し,その困窮の程度に応じ,最低限度の生活を営めるよう必要な保護を講ずることにより,生活困窮者の自立の促進を図ること。
3 尊厳を保持し,能力に応じ自立した日常生活を営めるよう,必要な保健医療及び福祉サービスに係る給付を行い,生活困窮者の自立の促進を図ること。
4 能力に応じた教育を受ける機会を保障する措置を講ずることにより,生活困窮者の自立の促進を図ること。
5 社会,経済,文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されるよう施策を講ずることにより,生活困窮者の自立の促進を図ること。
この問題は,うまく作っていると言えます。
最後を「生活困窮者の自立の促進を図ること」で統一しているために,受験生の混乱を引き起こします。
以下のようにしてみるとどうでしょうか。
1 生活困窮者に対する自立の支援に関する措置を講ずることにより,生活困窮者の自立の促進を図ること。
2 すべての国民に対し,その困窮の程度に応じ,最低限度の生活を営めるよう必要な保護を講ずることにより,生活困窮者の自立の促進を図ること。
3 尊厳を保持し,能力に応じ自立した日常生活を営めるよう,必要な保健医療及び福祉サービスに係る給付を行い,生活困窮者の自立の促進を図ること。
4 能力に応じた教育を受ける機会を保障する措置を講ずることにより,生活困窮者の自立の促進を図ること。
5 社会,経済,文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されるよう施策を講ずることにより,生活困窮者の自立の促進を図ること。
共通部分は,正解以外は嘘なので,このように線を引いてみると明らかとなります。
あらあら不思議,丸裸です。
選択肢3・4・5を選ぶ人はまずいないと思います。
選択肢3は,介護保険法
選択肢4は,教育基本法
選択肢5は,障害者基本法
選択肢1と2は,いずれも「困窮」という言葉が含まれているので,迷ってしまいますが,冷静に考えると,選択肢1は,「生活困窮者に対する自立の支援」と明確に目的が書かれているので,これが正解だとわかります。
選択肢2は「最低限度の生活を営めるよう必要な保護を講ずる」という方法が書かれているので,生活保護法だと判断できます。
国家試験会場では,この冷静な判断ができなくなってしまうのがとても怖いです。
法の目的で困るのは,かつての規定を出題された場合です。
第35回・問題61 身体障害者福祉法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 身体障害者福祉法の目的は,「身体障害者の更生を援助し,その更生のために必要な保護を行い,もって身体障害者の福祉の増進を図ること」と規定されている。
2 身体障害者の定義は,身体障害者手帳の交付を受けたかどうかにかかわらず,別表に掲げる身体上の障害がある18歳以上の者をいうと規定されている。
3 身体障害者手帳に記載される身体障害の級別は,障害等級1級から3級までである。
4 都道府県は,身体障害者更生相談所を設置しなければならない。
5 市町村は,その設置する福祉事務所に,身体障害者福祉司を置かなければならない。
正解は,選択肢4というとてもシンプルなものなので,難易度は低いですが,判断しにくいのが,選択肢1です。
1 身体障害者福祉法の目的は,「身体障害者の更生を援助し,その更生のために必要な保護を行い,もって身体障害者の福祉の増進を図ること」と規定されている。
これは,身体障害者福祉法の目的で正しいですが,現在のものではなく,1949年・昭和24年に法が創設された当時のものとなっています。
現在のものは以下の通りです。
この法律は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)と相まつて、身体障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため、身体障害者を援助し、及び必要に応じて保護し、もつて身体障害者の福祉の増進を図ることを目的とする。
更生という文字が消えています。
ここで使われている更生とは,職業リハビリテーションを意味しています。
これに関しては,第22回国家試験で,以下のように出題されています。
第22回・問題129・選択肢1
身体障害者福祉法は,制定時には身体障害者の更生を目的とし,更生とは英語のリハビリテーションの訳で,医学的な回復を意味していた。
身体障害者の更生を目的としていたのは正しいですが,医学的な回復ではなく,職業リハビリテーションを意味しています。
過去にこのように出題されているので,これをヒントに作ったのが,第35回の国家試験だと言えます。
これまでも過去の問題をアレンジして出題されることがありましたが,第35回ではそれがあからさまにわかる問題が散見しています。
このような出題が見られていることで,今後もそうなるのかはわかりませんが,これもトレンドだと言えるでしょう。
ただし,多くの人は,古い問題を目にすることはまずないと思いますし,古いものは制度が変わっているので,一般の人が古本屋などで入手して勉強するのは怖いです。
過去問を参考にして,作られるのが参考書です。
丁寧に作られた参考書なら,身体障害者福祉法のかつての定義も書かれているはずです。
つまり,国試勉強の基本は,参考書に書かれているものを覚えるということになります。