2023年2月19日日曜日

社会保障制度の発展と戦争の影響

社会保障制度を財源に着目して,分類すると


税を財源とする社会扶助方式

社会保険料を財源とする社会保険方式


に分けられます。


日本の場合,社会扶助方式は,社会福祉制度と生活保護制度があります。


そして,日本の社会保障制度の中心は,社会保険制度です。


この基本は確実に押さえておきたいです。


そのように方向づけたのは,多くの人が苦手としていると思いますが,1950年の社会保障制度審議会の勧告です。


歴史は過去の出来事ではなく,制度変更がなければ今の制度となります。


さて,今日のテーマは「社会保障制度の発展と戦争の影響」です。


日本の社会保障制度の発展に関して理解するためのキーポイントは,1945年以前とそれ以降に分けられることを整理しておくことです。


医療保険制度(健康保険制度&国民健康保険制度)と厚生年金保険制度は,1945年以前につくられたものです。


このうち,国民健康保険制度と厚生年金保険制度ができた背景には,戦争の影響が大きく関係しています。


国民健康保険制度は,健康な兵士を送り出すため


厚生年金保険制度は,戦争にかかる費用を確保するため


といった背景があります。


前回の記事も確認しておきたいです。

https://fukufuku21.blogspot.com/2023/02/blog-post_18.html


それでは今日の問題です。


第30回・問題52 公的年金制度の沿革に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 社会保障制度が本格的に整備されるようになった第二次世界大戦後,厚生年金保険制度が創設された。

2 国民年金法が1959年(昭和34年)に制定され,自営業者等にも公的年金制度を適用することにより,国民皆年金体制が実現することになった。

3 オイルショックに伴う急激なインフレに対処するため,1973年(昭和48年)改正により,厚生年金の給付水準を一定期間固定することとした。

4 持続可能な制度にする観点から,2004年(平成16年)改正により,老齢厚生年金の支給開始年齢を段階的に65歳から67歳に引き上げた。

5 将来の無年金者の発生を抑える観点から,2012年(平成24年)改正により,老齢基礎年金の受給資格期間を25年から30年に延長した。


歴史は過去のものではなく,途中で制度が変わらなければ,今の制度となります。


別の言い方をすれば,現在の制度を知っていると過去のことも推測できることがあります。


この問題であれば,選択肢4がそういったものに当たります。


4 持続可能な制度にする観点から,2004年(平成16年)改正により,老齢厚生年金の支給開始年齢を段階的に65歳から67歳に引き上げた。


現時点の支給年齢は,65歳です。


67歳に引き上げられたことはありません。


それでは,そのほかの選択肢を解説します。


1 社会保障制度が本格的に整備されるようになった第二次世界大戦後,厚生年金保険制度が創設された。


厚生年金保険制度は,1945年以前にできた制度です。


2 国民年金法が1959年(昭和34年)に制定され,自営業者等にも公的年金制度を適用することにより,国民皆年金体制が実現することになった。


これが正解です。


3 オイルショックに伴う急激なインフレに対処するため,1973年(昭和48年)改正により,厚生年金の給付水準を一定期間固定することとした。


給付水準を固定しては,インフレには対応できません。


この時に導入されたのは,物価によって給付水準が変動する物価スライド制です。


5 将来の無年金者の発生を抑える観点から,2012年(平成24年)改正により,老齢基礎年金の受給資格期間を25年から30年に延長した。


受給資格期間を延長すると将来の無年金者の発生を抑えることはできません。


逆に発生を増加させることになります。冷静に考えるとわかります。


受給資格期間は,15年から10年に短縮されました。




最新の記事

子ども・子育て支援法

  子ども・子育て支援法は,これまでにも出題されてきましたが,正式に出題基準に含まれたのは,第37回国家試験です。 子ども・子育て支援制度は,市町村が実施主体になっています。 支給申請は,市町村に対して行います。 児童福祉法には,入所系があるので都道府県の役割がありますが,子ども...

過去一週間でよく読まれている記事