2023年2月25日土曜日

国家試験の合格基準

国家試験が終わると合格基準点,いわゆるボーダーラインがどうなるのかが話題になります。


第15回国家試験以降,正解と合格基準点が発表されています。


最低点は72点,最高点は105点,ととても大きな振れ幅となっています。

どんな勉強をすれば合格できるのか,と疑問にも思うかもしれません。


しかし,合格基準点は変わっても,6割程度という合格基準は変わっていません。


合格基準点が変わるのは,問題の難易度の差です。


合格基準点が低いのは,正解できる問題が少なかった

合格基準点が高いのは,正解できる問題が多かった


今後はどうなるのかはわかりませんが,これまで問題の難易度によって,合格基準点を変更してきたのは,長期の視点からみるととても妥当なことだったように思います。


もし固定されていたなら,難易度が低い年に受験した人は有利になり,難易度が高い年に受験した人は不利になります。


口の悪い人は,あの人は,難易度が低い年だったから合格した,と言うこともあるでしょう。


毎年,同じ難易度を保てる問題を出題できるならそれに越したことはありません。


それが困難なので,難易度による補正を行って,年度間の不公正が出ないように調整していると考えています。


不合格になったあとに問題を見るのは辛いことだと思いますが,もし冷静に振り返ることができれば,本来は正解できていた問題をミスしているものが多いことに気がつくと思います。


ある程度の勉強をしてきた人なら,おそらくそういった問題で正解できていれば,合格できた点数になるはずです。


しかし,ミスは必ず起きます。それが少ない人は合格し,多い人は不合格になります。


言えることは,合格するために必要なことは,出題基準に示されたものの範囲を確実に覚えていけば,合格できる知識にはなることです。


あとは,いかにミスしないで正解することです。


そうすれば,合格基準点が変わっても,合格基準が変わらない限り,必ず合格できます。


それでは,今日の問題です。


第35回・問題50 日本の社会保険に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 国民健康保険は,保険料を支払わないことで自由に脱退できる。

2 健康保険の給付費に対する国庫補助はない。

3 雇用保険の被保険者に,国籍の要件は設けられていない。

4 民間保険の原理の一つである給付・反対給付均等の原則は,社会保険においても必ず成立する。

5 介護保険の保険者は国である。


この問題の難易度は,決して高くはありません。


しかし,確実に正解することは簡単なことではありません。


それでは,解説です。


1 国民健康保険は,保険料を支払わないことで自由に脱退できる。


医療保険に限らず,社会保険は,被保険者の要件に当たる人は強制加入なのが特徴です。


加入が任意だと,社会保険の意味がなくなります。


2 健康保険の給付費に対する国庫補助はない。


健康保険にも国民健康保険にも国庫補助があります。


本来,社会保険は,社会保険料を財源として運営される制度ですが,日本の社会保険には,公費も使われていることが特徴です。


ドイツの介護保険は,社会保険料のみで運営され,税金は使われていません。

日本の介護保険は,ドイツを参考にして作られましたが,こういったところに違いがみられます。


3 雇用保険の被保険者に,国籍の要件は設けられていない。


これが正解です。


日本は,難民条約を批准しているので,一部の制度を除くと社会保障制度には,国籍要件が設けられていません。


国籍要件がある制度の代表は,生活保護法です。


第35回国家試験では,以下の問題が出題されました。


永住外国人には生活保護法に基づく受給権がある。


外国人には,生活保護法が適用されないので,受給権は認められません。


永住外国人にも法は適用されませんが,予算措置として,生活保護を受けられるようにしています。


過去に外国人に生活保護法が適用されないことを出題した時には物議を醸しだしたことがありますが,社会保障制度に精通していることが求められる社会福祉士には確かな知識が求められます。


これは,問題77ですが,この選択肢を消去できないと正解するのは簡単ではありません。


4 民間保険の原理の一つである給付・反対給付均等の原則は,社会保険においても必ず成立する。


必ず」という子どもでも正解なりにくいことを知っているものが含まれた文章ですが,「給付・反対給付均等の原則」があるために,混乱して重要ポイントを見落とします。

そしてミスが起きます。


民間保険は,今までの出題が少ないので,過去問では学べません。


参考書などで学ぶことが必要です。


保険原理には,

収支相等の原則(支払額と支給額が同額であること)

給付・反対給付均等の原則(受け取れる額によって,保険料が変わること)

保険契約者平等待遇の原則(加入者のリスクによって,保険料が変わること)


があります。


社会保険は,民間保険のこれらの原則にのっとって制度がつくられているわけではありません。


給付・反対給付均等の原則は,例えば年金保険制度であれば,決まった保険料を支払って,それにあった金額を受給します。


自分は,多くもらいたいから,多く支払うという制度ではありません。


これを知らずとも「必ず」があるので,消去できます。


5 介護保険の保険者は国である。


社会保険を覚えるときのポイントの一つは,保険者を押さえることです。


介護保険の保険者は,市町村(および市町村の広域連合)です。


社会保険制度は細かくて覚えにくいと思いますが,そんなに複雑で細かい出題はされないので,しっかり覚えれば得点を稼ぐ科目になります。


今日の問題のようなものを確実に正解し,得点を積み重ねていけば,合格基準点は必ず超えられます。

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