社会保険を押さえる時の基本 |
●誰が取り扱うの?(保険者) ●誰が加入するの?(被保険者) ●誰が保険料を負担するの?(社会保険料負担) ●誰が保険料を納付するの?(納付義務者) ●どんな時に給付されるの?(保険事故) ●どのくらい払うの?(保険料率) |
今回は,このうちの医療保険の保険者について考えたいと思います。
医療保険
健康保険 ➡ 各保険者(全国健康保険協会&健康保険組合)
国民健康保険 ➡ 市町村&都道府県(都道府県は平成30年4月~)
国民健康保険組合
後期高齢者医療制度 ➡ 都道府県区域の全市町村が加入する広域連合
健康保険制度
健康保険の保険者は,主に中小企業の従業員が加入する全国健康保険協会,主に大企業や同業者が組合を作って保険者となる健康保険組合,の2つがあります。
全国健康保険と健康保険組合は,どちらも健康保険法が根拠法ですが,仕組みが若干異なります。
〈保険料率〉
健康保険組合は,組合ごとに設定することができます。
〈給付内容〉
健康保険組合は,療養の給付(療養の現物給付のこと)に関して,法定給付のほかに,独自に人間ドックなどに給付する付加給付を定めることができます。
ここが注意点です。
療養の給付は,組合の独自性が出るところなので,この部分の国庫負担はありません。
ただし,事務費用に対しては国庫負担が行われています。このようにして,全国健康保険協会とのバランスを図っているようです。
それでは,今日の問題です。
第34回・問題52 日本の社会保険の費用負担に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 健康保険組合の療養の給付に要する費用には,国庫負担がある。
2 患者の一部負担金以外の後期高齢者医療の療養の給付に要する費用は,後期高齢者の保険料と公費の二つで賄われている。
3 老齢基礎年金の給付に要する費用は,その4割が国庫負担で賄われている。
4 介護保険の給付に要する費用は,65歳以上の者が支払う保険料と公費の二つで賄われている。
5 雇用保険の育児休業給付金及び介護休業給付金の支給に要する費用には,国庫負担がある。
この問題自体はなかなかの難問ですが,この問題が出題された当時,正解することはそれほど難しくはありませんでした。
なぜなら,第31回に同じものが正解になっているからです。
3年間の過去問の範囲で,同じものが正解になることはめったにないことですが,こういったところが第34回の合格基準点(ボーダーライン)が105点になった理由でしょう。
それでは,解説です。
1 健康保険組合の療養の給付に要する費用には,国庫負担がある。
前説のように,健康保険組合の療養の給付に要する費用には,国庫負担はありません。
この問題の難易度が高いのは,この選択肢が原因です。かなり細かい出題だからです。
2 患者の一部負担金以外の後期高齢者医療の療養の給付に要する費用は,後期高齢者の保険料と公費の二つで賄われている。
後期高齢者医療制度の財源の特徴は,現役世代の医療保険の保険者からの支援金の「後期高齢者支援金」があることです。
これが財源の4割を占めます。
この支援金の拠出が財政を苦しめている保険者もあるようです。
3 老齢基礎年金の給付に要する費用は,その4割が国庫負担で賄われている。
国民年金の国庫負担率は,5割(2分の1)です。
かつては,3分の1ですが,2分の1に引き上げられ,恒久化されています。
4 介護保険の給付に要する費用は,65歳以上の者が支払う保険料と公費の二つで賄われている。
介護保険の被保険者は,第1号被保険者と第2号被保険者があります。
もちろん,第2号被保険者の保険料も財源とします。
5 雇用保険の育児休業給付金及び介護休業給付金の支給に要する費用には,国庫負担がある。
これが正解です。
この問題の難易度は決して低くはないですが,この選択肢が正解になったことで,正解しやすくなりました。
それは,第31回に以下の出題があったからです。
第31回・問題49 社会保険制度の財源に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 健康保険の給付費に対する国庫補助はない。
2 介護保険の給付財源は,利用者負担を除き,都道府県が4分の1を負担している。
3 老齢基礎年金は,給付に要する費用の3分の2が国庫負担で賄われている。
4 労働者災害補償保険に要する費用は,事業主と労働者の保険料で賄われている。
5 雇用保険の育児休業給付金及び介護休業給付金に対する国庫負担がある。
この問題の正解も選択肢5です。
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