国民年金に対する国庫負担は,2004年・平成16年までは,費用の3分の1を負担していました。
それ以降,段階を追って,負担割合を引き上げ,2009年・平成21年に2分の1となりました。
2012年・平成24年には国民年金法を改正して,国庫負担割合の2分の1は,恒久化(これからもずっとという意味)されています。
それでは,今日の問題です。
第35回・問題55 公的年金制度に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 厚生年金保険の被保険者は,国民年金の被保険者になれない。
2 基礎年金に対する国庫負担は,老齢基礎年金,障害基礎年金,遺族基礎年金のいずれに対しても行われる。
3 厚生年金保険の保険料は,所得にかかわらず定額となっている。
4 保険料を免除されていた期間に対応する年金給付が行われることはない。
5 老齢基礎年金の受給者が,被用者として働いている場合は,老齢基礎年金の一部又は全部の額が支給停正される場合がある。
ちょっとひねりを入れて出題した問題です。
知識があいまいな人は,簡単に引っ掛けられてしまうような問題のタイプだと言えます。
それでは,解説です。
1 厚生年金保険の被保険者は,国民年金の被保険者になれない。
これが第1のひねりです。
厚生年金保険の被保険者は,自動的に国民年金の第2号被保険者となります。
2 基礎年金に対する国庫負担は,老齢基礎年金,障害基礎年金,遺族基礎年金のいずれに対しても行われる。
これが正解ですが,第2のひねりとなっています。
おそらく,「国民年金には国庫負担がある」と出題されていれば,素直に正解だと認識できるでしょう。
国民年金には,老齢基礎年金,障害基礎年金,遺族基礎年金があります。それをばらして出題しているところが,ひねりポイントとなっています。
このようにちょっと出題の仕方を変えるだけで,受験者の頭に「?」を生じさせ,混乱に陥れる高度な作問技術だと思います。
落ち着いて考えると,たとえば,「老齢基礎年金には国庫負担はあるが,障害基礎年金には国庫負担はない」,「障害基礎年金には国庫負担はあるが,遺族基礎年金には国庫負担はない」といったように,給付の種類によって,国庫負担があったり,なかったりするのは,おかしな制度だと思います。そんなことはありません。
3 厚生年金保険の保険料は,所得にかかわらず定額となっている。
厚生年金の保険料は,報酬比例です。
定額なのは,国民年金の保険料です。
4 保険料を免除されていた期間に対応する年金給付が行われることはない。
老齢基礎年金の場合,保険料を免除されていた期間は,国庫負担分が考慮されます。
たとえば,今後40年間,ずっと全額免除されていた場合は,老齢基礎年金の満額の2分の1の金額が給付されます。
国庫負担が3分の1から2分の1に引き上げられたことは,実はとても重要なことです。
5 老齢基礎年金の受給者が,被用者として働いている場合は,老齢基礎年金の一部
又は全部の額が支給停正される場合がある。
これが第3のひねりです。
被用者として働いている場合に,年金の一部,又は全部の額が支給停正されることがあるのは,老齢厚生年金です。
老齢基礎年金と老齢厚生年金を混同させるように出題するのは,かなりの高頻度で行われています。
たとえば,年金分割のこと,障害等級のこと,そしてこの問題にもあるように保険料負担など,数々あります。
医療保険と年金保険は,もともとあった制度を活用して,皆保険,皆年金を作り上げたために,制度の構造が複雑です。
その分覚えるのが大変です。だからこそ出題されることを覚えておきたいです。
特別に難しいものを出題することなく問題の難易度を上げることができるので,これからの国家試験には打ってつけだと言えるでしょう。
〈今日の一言〉
国家試験に不合格になると,知識不足を悔やみます。
確かに知識不足の人もいるでしょう。知識不足の人は,知識をつけるための勉強をすれば合格できるでしょう。
しかし,しっかり勉強して受験しても何度も不合格になっている人は,決して知識不足ではないと思っています。
この学習部屋は,そういったた仲間が合格してくれることを目的として開設して今に至ります。
ぜひ活用して,知識を得点力に変えていっていただきたいと思います。