カリキュラムが変わっても受験資格がなくなるわけではありませんが,できれば第36回で合格したいです。
第37回国家試験からは,令和元年度カリキュラムの国家試験に切り替わります。
第35回と第36回は,新しいカリキュラムによる国家試験への移行期間に位置づけられていますが,第35回国家試験を見る限り,それほど大きな変化は見られないので,第36回国家試験も同じような出題になるのだと考えられます。
最も重視したいのは,知識があることを前提にして,思考することで答えを出すタクソノミーⅡ型・Ⅲ型の問題に対応できる力です。
第35回・問題15 次の記述のうち,ヴェーバー(Weber,M.)の合法的支配における法の位置づけとして,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 法は,被支配者を従わせ,超人的な支配者の権力を貫徹するための道具である。
2 法は,伝統的に継承されてきた支配体制を正当化するための道具である。
3 法は,支配者の恣意的な判断により定められる。
4 法は,神意や事物の本性によって導き出される。
5 法は,万民が服さなければならないものであり,支配者も例外ではない。
この問題は,タクソノミーⅠ型とⅡ型の中間と言えるものかもしれません。
ある程度勉強した人なら,ヴェーバーの支配システムは必ず目にしていたはずです。
出題は,合法的支配が問われていますが,確実に正解するためには,伝統的支配とカリスマ的支配についても思い出すことが必要です。
それらを使って答えを考えます。
結構高度な思考が求められます。
1 法は,被支配者を従わせ,超人的な支配者の権力を貫徹するための道具である。
これは,カリスマ的支配に関連するものだと言えるでしょう。
2 法は,伝統的に継承されてきた支配体制を正当化するための道具である。
これは,伝統的支配に関連するものだと言えるでしょう。
3 法は,支配者の恣意的な判断により定められる。
これは,カリスマ的支配に関連するものだと言えるでしょう。
4 法は,神意や事物の本性によって導き出される。
これは,神意というところから伝統的支配に関連するものだと言えるでしょう。
5 法は,万民が服さなければならないものであり,支配者も例外ではない。
これが正解です。
合法的支配は,近代の民主国家の姿です。自分たちで定めた法やルールは,定めた本人にも適用されます。
この問題の元ネタがあります。
第27回・問題16 法と社会,そこに成立する秩序との関係に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ホッブズ問題とは,人々の私的利益の追求こそが,万人の万人に対する闘争状態を克服することを明らかにした議論のことをいう。
2 合法的支配とは,形式的に正しい手続きを経て定められた法に基づいていることを理由に,人々がその支配を受け入れていることをいう。
3 抑圧的法とは,支配者が被支配者を抑圧し黙らせるための手段として用いられるが,支配者自身もその法の支配を受けなければならないものをいう。
4 応答的法とは,法が政治から分離され,社会のメンバーすべてが等しく従うべき普遍的なルールとして形式化され,体系化されたものをいう。
5 自律的法とは,普遍性を維持しつつも社会の要請に応えるために,より柔軟で可塑的な運用を可能にする新たな法のあり方のことをいう。
この問題の正解は,選択肢2です。
この出題に従えば,第35回の問題は,以下のように考えることもできます。
1 法は,被支配者を従わせ,超人的な支配者の権力を貫徹するための道具である。
→ 抑圧的法
3 法は,支配者の恣意的な判断により定められる。
→ 抑圧的法
5 法は,万民が服さなければならないものであり,支配者も例外ではない。
→ 自律的法
つまり,合法的支配は,自律的法に含まれる概念だと言えます。
〈今日の一言〉
本当の知識だと言えるのは,例で説明できることだと思います。
そうすれば,ボーダーラインがどうなろうとも,必ず合格をつかめるはずです。