労災保険は,労働者を一人でも雇用していると適用されます。
このように労災保険は労働者保護の制度ですが,個人タクシーなどの個人事業主も加入することができます。
今日のテーマは「労災保険の保険料を事業主が滞納していたらどうなる?」です。
滞納中に労災が発生した場合でも,通常のように保険給付されます。
冷静に考えると労災保険は労働者保護の制度なので,事業主の都合で給付されたり,給付されなかったりするのは,おかしな話だと理解できることでしょう。
保険料を滞納中に労災が発生した場合,保険給付が優先されて,その費用の全額あるいはその一部が請求されます。
また,加入手続きの指導を受けていても加入しない場合は,さかのぼって保険料が徴収され,さらには追徴金も支払わなければなりません。
それにも応じない場合は,差し押さえなどが行われます。
労災保険に関しては,逃げ得はあり得ません。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題53 事例を読んで,労働者災害補償保険(以下,「労災保険」という。)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
Aさんは正社員として建設会社に就職した。正社員は他に7名いて,アルバイトとして学生のBさんが雇われている。Aさんは業務上の事由により右足を骨折してしまった。
1 この会社は,正社員が10名以下なので労災保険は適用されない。
2 Bさんは,学生なので労災保険の適用対象にならない。
3 骨折した事故が労災認定された場合,療養の給付について,Aさんに自己負担はない。
4 骨折した事故が労災認定された場合,Aさんが治療のため会社を休み,賃金が得られなくなった初日から休業補償給付を受けることができる。
5 会社が労災保険の保険料を滞納していた場合,Aさんは,労災保険の給付を受けることができない。
今回も労災に関する事例問題です。
この問題の正解は,選択肢3です。
3 骨折した事故が労災認定された場合,療養の給付について,Aさんに自己負担はない。
業務災害についての療養の給付には自己負担はありません。
ただし,労災であっても通勤災害の場合は,一部負担金の200円を減額して支給されます。
業務災害と異なり,通勤災害は事業主の管理下で発生するものではないためです。
それでは,このほかの選択肢を解説します。
1 この会社は,正社員が10名以下なので労災保険は適用されない。
労災保険は,1人でも雇用していると適用されます。
2 Bさんは,学生なので労災保険の適用対象にならない。
労災保険が規定する労働者とは,賃金の支払いを受ける者です。
パートなどの単時間労働者,学生,国籍など一切関係なく,労働者であれば適用されるのが,労災保険の特色です。
極端なことを言えば,不法就労の外国人であっても適用されます。
4 骨折した事故が労災認定された場合,Aさんが治療のため会社を休み,賃金が得られなくなった初日から休業補償給付を受けることができる。
休業補償給付は,労災のために労働不能となった日から4日目から給付されます。
3日までは事業主が賃金を保障しなければなりません。
5 会社が労災保険の保険料を滞納していた場合,Aさんは,労災保険の給付を受けることができない。
ようやく最後に今日のテーマ「労災保険の保険料を事業主が滞納していたらどうなる?」が登場しました。
前説のように,事業主が保険料を滞納していても保険給付されます。