労働者とは,賃金の支払いを受ける者をいいます。
労災保険は,労働者に業務災害,あるいは通勤災害が生じた場合に給付されます。
労働者であれば,パートなどの単時間労働者,日雇い労働者,外国人などに関係なく,労災が生じると労災保険が給付されます。
さて,今日のテーマは「労災保険が給付されないのはどんな時?」です。
労災が給付されない場合には,以下のような場合があります。
1.労災によって労働できない日が3日以内だった場合。
労災保険が給付されるのは,4日目以降です。
2.給与の支払いを受ける場合
労働できなくても給与の支払いを受ける場合は,労災保険は給付されません。労災保険は,所得補償だからです。
3.労災以外の傷病の場合
労災保険が給付されるのは,労働者の業務災害,あるいは通勤災害によって労務不能になり,給与の支払いを受けない場合です。業務災害・通勤災害以外は,健康保険などの医療保険が適用されます。
4.傷病,死亡に至った直接の原因が,故意の事故であった場合
自分でわざと自らの体を傷つけた場合は,もはや労災とは言えないからでしょう。
事例問題では,こういったところに気をつけながら問題を解いていきます。
それでは,今日の問題です。
第26回・問題53 事例を読んで,労働者災害補償保険制度(以下「労災保険」という。)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
W国から日本に来たKさんは,家電量販店を営むP社に雇用され,その指揮命令を受けて,積み下ろし作業をしていたところ,荷物が崩れて大けがをした。
1 Kさんが留学生であり,アルバイトとして働いていた場合,労災保険は適用されず,労災保険給付は行われない。
2 Kさんが故意に負傷の原因となった事故を生じさせた場合であっても,労災保険給付は行われる。
3 荷崩れの責任がP社にある場合,Kさんは,労災保険給付の価額の限度を超える損害について,民事損害賠償を請求できる。
4 P社が労災保険のための保険料を滞納していた場合,Kさんには労災保険給付は行われない。
5 Kさんの負傷が業務上の災害に当たると認定されても,KさんがW国に帰国した場合には労災保険給付は行われない。
今回の労働者は,外国人です。
これは,社会福祉士の国家試験です。
その性質を考えた場合,試験委員は受験者に知っておいてもらいたいことを出題するはずです。
しょうもないようなものを正解にすることは,まず考えられません。
これを意識するだけで確実に得点力は上がります。
この問題の場合は,しょうもないような選択肢はありませんが,社会福祉士がクライエントの支援を行う際,知っておくと良いものが正解になりやすいことを覚えておきたいです。
それでは,解説です。
1 Kさんが留学生であり,アルバイトとして働いていた場合,労災保険は適用されず,労災保険給付は行われない。
労働者であれば,留学生であること,アルバイトであることなどに関係なく,労災保険は給付されます。
2 Kさんが故意に負傷の原因となった事故を生じさせた場合であっても,労災保険給付は行われる。
負傷の直接的な限定が故意による場合は保険給付されません。
3 荷崩れの責任がP社にある場合,Kさんは,労災保険給付の価額の限度を超える損害について,民事損害賠償を請求できる。
これが正解です。
労災保険は,休業1日につき,給付基礎日額の80%(休業(補償)給付=60%+休業特別支給金=20%)が支給されます。
つまり,給与額以上の所得補償はありません。
それ以上の損害が生じた場合は,民事訴訟で会社に損害賠償を請求することになります。
いかにも知っておいて得になる知識でしょう。
4 P社が労災保険のための保険料を滞納していた場合,Kさんには労災保険給付は行われない。
労災保険は,事業主が保険料を滞納していても給付されます。
事業主には,追徴金などが請求されます。それにも応じない場合は,差し押さえが行われます。
5 Kさんの負傷が業務上の災害に当たると認定されても,KさんがW国に帰国した場合には労災保険給付は行われない。
外国人が帰国しても労災保険は給付されます。
もし不法就労で強制退去になったとしても,労災に対しては保険給付されます。