2023年4月3日月曜日

事例問題に強くなる~労災保険①

医療保険と年金保険は,複数の制度を組み合わせて皆保険・皆年金を作り上げたために制度が複雑で覚えることも多くなります。

 

それに比べると戦後にできた労災保険と雇用保険の保険者は政府というシンプルな制度です。社会保障が苦手な人は,労災保険と雇用保険をしっかり覚えることをおすすめします。

 

今回から数回にわたって労災保険の事例問題に取り組んでいきたいと思います。

 

それでは,前説なしに今日の問題です。

 

33回・問題52 事例を読んで,労働者災害補償保険(以下「労災保険」という。)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 運送会社で正社員として働いているFさんは,合理的な経路及び方法により通勤中,駅の階段で転倒し,負傷した。

1 Fさんの負傷は業務災害ではないので,労災保険の給付は行われない。

2 Fさんの雇用期間が6か月未満である場合,労災保険の給付は行われない。

3 Fさんが療養に係る労災保険の給付を受けられる場合,自己負担は原則1割である。

4 Fさんが療養に係る労災保険の給付を受ける場合,同一の負傷について,健康保険の療養の給付は行われない。

5 Fさんの勤務先が労災保険の保険料を滞納していた場合,労災保険の給付は行われない。

 

健康保険法には,次のように規定されています。 

 

(目的)

第一条 この法律は、労働者又はその被扶養者の業務災害(労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)第七条第一項第一号に規定する業務災害をいう。)以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行い、もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。

 

健康保険は,労災以外に適用されます。

別な言い方をすると・・・

労災が適用される場合には,健康保険は適用されません。

 

ということで,今日の問題の正解は,選択肢4です。

 

4 Fさんが療養に係る労災保険の給付を受ける場合,同一の負傷について,健康保険の療養の給付は行われない。

 

健康保険よりも労災保険が優先されます。

 

それではこれ以外の解説です。

 

1 Fさんの負傷は業務災害ではないので,労災保険の給付は行われない。

 

労災保険が適用されるのは業務災害と通勤災害です。

 

労災保険ができた当初は業務災害を対象にしていましたが,モータリゼーションが進展する1970年代に交通事故が増加したために,通勤途中の事故で死傷した場合も労災保険が給付されるようになりました。

 

現在は,通勤途中に加えて,単身赴任先に向かう途中の事故も対象となっています。

 

2 Fさんの雇用期間が6か月未満である場合,労災保険の給付は行われない。

 

労災保険には,被保険者という概念はありません。労働者,つまり賃金が支払われる者であれば,労災保険が給付されます。

 

3 Fさんが療養に係る労災保険の給付を受けられる場合,自己負担は原則1割である。

 

労災保険による療養の給付を受ける場合には,自己負担はありません。

こういったところが,労働者保護のための制度であることと言えます。

 

5 Fさんの勤務先が労災保険の保険料を滞納していた場合,労災保険の給付は行われない。

 

事業主が保険料を滞納していたとしても労災保険は給付されます。

 

これもいかにも労働者保護のための制度であることがわかります。

事業主の都合によって,労災保険は給付されないとすると,悪質な事業主に雇用されている者は,あまりに不利です。

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