スウェーデンなど北欧諸国は,高福祉高負担というイメージがありますが,それ以上の知識をもつ人はそれほど多くはないように思います。
スウェーデンに関して,1990年代に行われたエーデル改革によって,医療サービスは日本の都道府県にあたるランスティング,福祉サービスは日本の市町村にあたるコミューンによって提供されている,と教科書などでは記述されています。
ランスティングは,現在「レギオン」と改称されています。
国家試験では,これがちょっと面倒になりそうです。
エーデル改革に関する出題では,ランスティングで良いですが,現時点の体制の出題では,レギオンとなります。
スウェーデンの社会保障制度を整理すると以下のようになります。
制度 |
方式 |
提供義務 |
年金,児童手当などの現金給付 |
社会保険方式 |
国 |
医療サービス |
社会扶助方式 |
レギオン |
福祉サービス |
社会扶助方式 |
コミューン |
社会扶助(生活保護に相当) |
社会扶助方式 |
コミューン |
それでは,今日の問題です。
第33回・問題27 各国の社会福祉や社会保障の現状に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 アメリカの公的医療保障制度には,低所得者向けのメディケアがある。
2 スウェーデンの社会サービス法では,住民が必要な援助を受けられるよう,コミューンが最終責任を負うこととなっている。
3 ドイツの社会福祉制度は,公的サービスが民間サービスに優先する補完性の原則に基づいている。
4 中国の計画出産政策は,一組の夫婦につき子は一人までとする原則が維持されている。
5 韓国の高齢者の介護保障(長期療養保障)制度は,原則として税方式で運用されている。
中国や韓国が出題されているのが新鮮です。
それでは,解説です。
1 アメリカの公的医療保障制度には,低所得者向けのメディケアがある。
アメリカの公的医療保障制度は,高齢者・障害者等を対象としたメディケア,低所得者を対象としたメディケイドがあります。
メディケイド(Medicaid)のaidは,助けるという意味です。
つまり,日本語では医療扶助になります。
2 スウェーデンの社会サービス法では,住民が必要な援助を受けられるよう,コミューンが最終責任を負うこととなっている。
これが正解です。
しかし,これを正解にするのはなかなか勇気のいることです。
コミューンが提供義務を負うのは,福祉サービスと社会扶助(日本の生活保護に相当)ですが,年金等の現金給付,医療サービスに関して,住民に身近なコミューンが最終責任を負っています。
3 ドイツの社会福祉制度は,公的サービスが民間サービスに優先する補完性の原則に基づいている。
ドイツの社会福祉制度は,民間サービスが公的サービスに優先する補完性の原則に基づいています。
もし,この出題のように,公的サービスが民間サービスに優先するなら,スウェーデンのように,高福祉高負担の国となってしまいます。
4 中国の計画出産政策は,一組の夫婦につき子は一人までとする原則が維持されている。
一組の夫婦につき子は一人までとする原則(いわゆる一人っ子政策)は,今は廃止されています。
急激な人口抑制政策は,急激な高齢化を招きます。
5 韓国の高齢者の介護保障(長期療養保障)制度は,原則として税方式で運用されている。
韓国の高齢者の介護保障は,日本を参考にして,社会保険方式を採用しています。