社会保険を理解する基本はいくつかありますが,そのうち,社会保険料の納付義務者は,知識として抜けがちなので注意が必要です。
整理すると,以下のようになります。
社会保険料の納付義務者
世帯主
・国民健康保険
・国民年金
・介護保険の第1号被保険者
・後期高齢者医療制度
事業主
・健康保険
・厚生年金
・介護保険の第2号被保険者
・雇用保険
・労災保険
被用者の場合,基本的に保険料の納付義務は事業主です。
被用者以外の場合は,基本的に保険料の納付義務は世帯主です。
基本的に,というのは,被用者であっても,健康保険,厚生年金の対象とならない場合は,国民健康保険,国民年金に加入することになり,その場合は,世帯主が納付義務者になるからです。
言われてみると何のことはないとは思いますが,実際に国家試験で出題されるとかなりドキドキするでしょう。
それでは,今日の問題です。
第24回・問題50 社会保険料の徴収,納付に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 世帯員に国民健康保険の被保険者がいる場合,世帯主は国民健康保険以外の医療保険制度の被保険者であっても国民健康保険料の納付義務者となる。
2 介護保険の第1号被保険者と第2号被保険者,後期高齢者医療制度の被保険者が負担する保険料は,特別徴収の方法によって徴収される。
3 国民年金の学生納付特例制度により,保険料納付の猶予を受けた者が保険料を追納しなかった場合,当該期間の国庫負担分のみが老齢基礎年金の支給額に反映される。
4 雇用保険の保険料は,賃金総額に保険料率を乗じて算出された額を事業主が負担する。
5 厚生年金保険料と健康保険料の納付義務者は,被保険者である。
さまざまな制度を含めて出題されているので,知識不足の人にとっては相当難しく感じるのではないかと思います。
それでは,解説です。
1 世帯員に国民健康保険の被保険者がいる場合,世帯主は国民健康保険以外の医療保険制度の被保険者であっても国民健康保険料の納付義務者となる。
これが正解です。
世帯主がどんな制度に加入していたとしても,世帯員に国民健康保険の被保険者がいる場合は,世帯主が納付義務を負います。
2 介護保険の第1号被保険者と第2号被保険者,後期高齢者医療制度の被保険者が負担する保険料は,特別徴収の方法によって徴収される。
特別徴収とは,年金額が年18万円以上の場合,年金から保険料を天引きするものです。
介護保険の第1号被保険者と後期高齢者医療制度の被保険者には,特別徴収の制度がありますが,介護保険の第2号被保険者の場合は,医療保険の保険者が徴収します。
第2号被保険者の多くは,年金が支給されていないので,特別徴収の制度を採り入れる意味がありません。
3 国民年金の学生納付特例制度により,保険料納付の猶予を受けた者が保険料を追納しなかった場合,当該期間の国庫負担分のみが老齢基礎年金の支給額に反映される。
老齢基礎年金の支給額に反映されるのは,保険料の納付の免除を受けた場合です。
学生納付特例制度は,猶予されているだけなので,追納しないと老齢基礎年金の支給額に反映されません。
4 雇用保険の保険料は,賃金総額に保険料率を乗じて算出された額を事業主が負担する。
雇用保険の保険料は,労使折半です。
雇用保険二事業の場合は,事業主のみが負担します。
5 厚生年金保険料と健康保険料の納付義務者は,被保険者である。
厚生年金保険料と健康保険料の納付義務者は,事業主です。
被用者の場合は,基本的に事業主が納付義務者となります。