雇用保険と労働者災害補償保険(労災保険)の保険者は,いずれも政府です。
医療保険と年金保険は複数の制度を組み合わせて国民皆保険・皆年金を形成しているために保険者が複数あり,制度が複雑ですが,雇用保険と労災保険はとてもシンプルです。
今回から雇用保険に取り組んでいきます。
保険者 |
政府 |
被保険者 |
一週間の所定労働時間が20時間以上,かつ同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれる者 |
適用事業 |
労働者が雇用される事業 |
保険料負担 |
失業等給付 → 労使折半 雇用保険二事業 → 事業主のみ負担 |
労災保険は,労働者であれば対象となりますが,雇用保険は,適用になる範囲が限定されます。上記の表にはありませんが,学校教育法の学生・生徒は被保険者となりません。
それでは,今日の問題です。
第26回・問題31 我が国の雇用保険制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 雇用保険は,従業員が5人以下の事業所は任意加入とされている。
2 雇用保険で支給される基本手当の1日の額(基本手当日額)は,離職した日の直前の6か月間における一日平均の賃金額の50%と規定されている。
3 雇用保険には,失業等給付のほか,失業の予防,雇用状態の是正及び雇用機会の増大,労働者の能力開発及び向上を図るための事業がある。
4 雇用保険への加入を決める基準は,6か月以上の雇用見込みがあることとなっている。
5 求職者給付の諸手当の支給は,継続的な求職活動を要件とする。
雇用保険は,1947年(昭和22年)の失業保険法を前身としています。いまだに雇用保険を失業保険と呼ぶ人がいるのはそのためです。
失業のみに備えた保険ではないので,専門家なら正しく雇用保険と呼びたいものです。
それでは解説です。
1 雇用保険は,従業員が5人以下の事業所は任意加入とされている。
雇用保険は,労働者を雇用している事業所に適用されます。
雇用する人数の規定はありません。
2 雇用保険で支給される基本手当の1日の額(基本手当日額)は,離職した日の直前の6か月間における一日平均の賃金額の50%と規定されている。
基本手当が失業した際に給付される雇用保険の中心となる給付です。
支給額は,離職前の賃金によって異なり,賃金が低い方の割合が高く設定されています。
3 雇用保険には,失業等給付のほか,失業の予防,雇用状態の是正及び雇用機会の増大,労働者の能力開発及び向上を図るための事業がある。
これが正解です。
これが雇用保険二事業と呼ばれるものです。
雇用保険は失業等給付だけではないということを高らかに宣言したものとなっています。
なお,育児休業給付は,以前は,失業等給付の中の雇用継続給付に含まれていましたが,現在は独立しています。
そのため,雇用保険の体系は以下のようになっています。
・失業等給付
・育児休業給付
・雇用保険二事業
4 雇用保険への加入を決める基準は,6か月以上の雇用見込みがあることとなっている。
雇用保険の加入要件は,「一週間の所定労働時間が20時間以上,かつ同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれる者」です。
5 求職者給付の諸手当の支給は,継続的な求職活動を要件とする。
継続的な求職活動は,求職者給付の諸手当の支給の絶対的な要件ではありません。努力義務規定となっています。
正解となった選択肢3を選べないとこの選択肢でつまずきます。正しい知識があれば難易度の低い問題ですが,知識不足では正解するのはかなり難しい問題でしょう。
とてもいやらしい問題です。