2023年4月2日日曜日

医療保険の事例問題に強くなる

法制度系の事例問題は,意外と手ごわいです。


医療ソーシャルワーカーは,クライエントの経済的問題の解決が業務となるので,医療保険に精通することが必要です。


フェイスシートには,加入する医療保険を記入する欄があります。その情報が必要なのは,加入する医療保険によって,内容が異なるからです。


例えば,傷病手当金を給付している都道府県等が行う国民健康保険はないことなどがあります。(コロナ特例を除く)


それでは,今日の問題です。


第27回・問題55 事例を読んで,医療保険に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 自営業者のDさん(72歳)はQ市国民健康保険の被保険者である。民間企業に勤務し,協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)に加入する息子のEさん(47歳)と二人で暮らしている。Dさんは,難病の治療のため,1年以上の入院が必要であると診断され,隣接するR市にある病院に入院することになった。

1 Eさんが世帯主となっている場合,国民健康保険料の納付義務はEさんが負う。

2 同一世帯に属するDさんとEさんが同一の月に支払う一部負担金の合算額が所定の額を超える場合,国民健康保険から高額療養費が支給される。

3 Dさんが病院のあるR市に住所を変更する場合,DさんはR市国民健康保険の被保険者となる。

4 Dさんが退院後に介護保険を利用し,同一の月の国民健康保険と介護保険の自己負担の合算額が所定の限度額を超える場合,国民健康保険から高額介護合算療養費が支給される。

5 Dさんが自営業を廃業し,Eさんが加入する健康保険の被扶養者となる場合,Dさんは75歳以降も被扶養者として扱われる。


なかなかの難問だと思います。


習ったことがないような問題が出題されると難問奇問と言われますが,国家試験で本当に怖いのは,こういった問題です。


難問奇問と一般的に言われそうな問題は,知識がある人も知識が足りない人も同じ条件で問題を解くために,受験生に差が生じません。


しかし,今日の問題のようなタイプは,知識の差によって受験生に大きな差が生じます。そういった面で,資格試験の理想だと言えます。


それでは,解説です。


1 Eさんが世帯主となっている場合,国民健康保険料の納付義務はEさんが負う。


これが正解です。


保険料は誰が納付するのかは,社会保険を押さえる場合の柱の一つです。

国民健康保険の保険料の納付義務があるのは,世帯主です。


2 同一世帯に属するDさんとEさんが同一の月に支払う一部負担金の合算額が所定の額を超える場合,国民健康保険から高額療養費が支給される。


高額療養費は世帯合算することができますが,それは同一の医療保険の場合です。


DさんとEさんの場合は,国民健康保険と健康保険と別々の医療保険制度に加入しているので,世帯合算はできません。


3 Dさんが病院のあるR市に住所を変更する場合,DさんはR市国民健康保険の被保険者となる。


Dさんが入院する病院のある市町村に住所を移した場合でも,加入するのは入院前の住所地の国民健康保険のままです。


これを住所地特例といいます。住所地特例は介護保険法などにもあります。


住所地特例があるのは,施設が多い市町村の財政を圧迫しないためです。


4 Dさんが退院後に介護保険を利用し,同一の月の国民健康保険と介護保険の自己負担の合算額が所定の限度額を超える場合,国民健康保険から高額介護合算療養費が支給される。


高額療養費制度は,同一の月の自己負担を合算します。


しかし,高額介護合算療養費の場合は,1年間の自己負担を合算します。


5 Dさんが自営業を廃業し,Eさんが加入する健康保険の被扶養者となる場合,Dさんは75歳以降も被扶養者として扱われる。


75歳以上は,後期高齢者医療制度に加入します。

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