雇用保険の基本手当は,失業中の所得補償の中心です。雇用保険が失業保険と称されることもあるゆえんです。
給付される期間は,年齢,被保険者期間,離職理由によって変わります。
自己の都合よりも倒産や解雇による離職理由の方が受給期間は長く設定されています。
自己の都合であれば,離職前から準備することができますが,倒産や解雇では事前に準備ができないからです。
それでは,今日の問題です。
第34回・問題53 雇用保険法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 基本手当は,自己の都合により退職した場合には受給できない。
2 保険者は,都道府県である。
3 近年の法改正により,育児休業給付は,失業等給付から独立した給付として位置づけられた。
4 雇用調整助成金は,労働者に対して支給される。
5 雇用安定事業・能力開発事業の費用は,事業主と労働者で折半して負担する。
この問題は社会福祉士の国家試験にしては珍しく,制度変更があったものを早いうちに出題しました。
それは,選択肢3です。
3 近年の法改正により,育児休業給付は,失業等給付から独立した給付として位置づけられた。
これが正解ですが,雇用保険の改正法が施行されたのは,2020年(令和2年)4月です。
この問題が出題されたのは,第34回なので,2022年(令和4)2月です。
2年後に出題されています。しかし覚えておいてほしいのは,2021年(令和3)年ではないことです。
それでも約2年後に出題したのは,社会福祉士の国家試験では早い方です。
それだけ,育児休業給付は重要なものだということでしょう。
それでは,このほかの選択肢も解説します。
1 基本手当は,自己の都合により退職した場合には受給できない。
基本手当は,自己の都合によって退職した場合,倒産や解雇などに比べて給付期間は短くなりますが,自己の都合でも給付されます。
2 保険者は,都道府県である。
雇用保険の保険者は政府です。
4 雇用調整助成金は,労働者に対して支給される。
雇用調整給付金は,会社の売り上げなどが減少した場合に解雇しなくても済むように,事業主に給付する制度です。
給付金詐欺が横行したことは記憶に新しいところです。
5 雇用安定事業・能力開発事業の費用は,事業主と労働者で折半して負担する。
雇用安定事業と能力開発事業は,雇用保険二事業と呼ばれるものです。
失業等給付と育児休業給付の保険料は,労使折半ですが,雇用保険二事業の保険料は,事業主のみが負担します。
細かい話ですが,この選択肢が「雇用安定事業・能力開発事業の保険料は」ではなく,「雇用安定事業・能力開発事業の費用は」と出題されているのは,雇用保険二事業には国庫負担がないためです。
失業等給付と育児休業給付には国庫負担がありますが,雇用保険二事業には国庫負担はありません。雇用保険二事業は,保険料だけで運営されているのが特徴です。
そのため,「保険料は」であっても「費用は」であっても同じ意味となります。