この時期(4月),国家試験に合格できなかった人は,今まで使ってきた参考書などをそのまま使うか,それとも別な参考書などに変えるか,など葛藤することが多いと思います。
多くの人が使っているものは,多くの合格者を生み出していると思いますが,同時に多くの不合格者も生み出しているはずです。
国家試験合格に重要なことは,何を使って勉強するかよりもどのように覚えるか,のように思います。
これを使えば大丈夫だと思っていると足元をすくわれることになりかねません。
今回のテーマは,「雇用保険法が規定する失業」です。
「失業」とは,被保険者が離職して,労働の意思及び能力を有するにもかかわらず,職業に就くことができない状態にあることをいいます。
そのため,就職先が決まらずに大学等を卒業して無業状態である者は失業とはいいません。
それでは,今日の問題です。
第23回・問題54 雇用保険制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 雇用保険は,都道府県が管掌している。
2 雇用保険の被保険者とは,適用事業所に雇用される労働者であって,その所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上である者をいう。
3 雇用保険では,被保険者が離職したことを失業の要件としているので,新卒者であって被保険者でない者が就職できない場合には,失業には該当しない。
4 雇用保険は,自分が失業したときのための保険なので,労働者が自分で公共職業安定所に被保険者となったことを届け出なければならない。
5 失業の発生は国の責任なので,雇用保険の財源は,全額国庫が負担する。
古い問題ですが,今,出題してもそのまま使える問題です。
だからといって,古い過去問をリサイクルショップなどで購入して勉強することはおすすめしません。制度改正になっているものもあり得るからです。
さて,この問題の中で,制度上,絶対にあり得ない選択肢があります。
5 失業の発生は国の責任なので,雇用保険の財源は,全額国庫が負担する。
雇用保険は,社会保険制度です。社会保険制度は,保険料を財源とするものです。
日本の社会保険制度には,公費が投入されていますが,基本的には保険料を財源としなければ,社会保険制度にはなりません。全額公費を財源とする制度は社会扶助です。
また,日本の社会保険制度は,公費も財源としていますが,公費分が保険料分を上回る制度はありません。
それでは,改めて解説です。
1 雇用保険は,都道府県が管掌している。
雇用保険は,政府管掌です。
都道府県が保険者となる社会保険制度は,都道府県等が行う国民健康保険しかありません。
これでさえ,平成30年の制度改正によるもので,それより前には都道府県が保険者となる制度はなかったことになります。
2 雇用保険の被保険者とは,適用事業所に雇用される労働者であって,その所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上である者をいう。
雇用保険の被保険者は,「一週間の所定労働時間が20時間以上,かつ同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれる者」です。
3 雇用保険では,被保険者が離職したことを失業の要件としているので,新卒者であって被保険者でない者が就職できない場合には,失業には該当しない。
今日のテーマがようやく登場しました。
これが正解です。
雇用保険を知らずとも,よくよく考えるとこれが正解だとわかるのではないかと思います。
なぜなら,「失業」は「業を失う」と書くので,最初からなければ,「失う」とは表現しないからです。
日本語の用語は,このように意味を推測することができる可能性を秘めています。
4 雇用保険は,自分が失業したときのための保険なので,労働者が自分で公共職業安定所に被保険者となったことを届け出なければならない。
被保険者となったこと,及び被保険者でなくなったことを届け出るのは,事業主です。
5 失業の発生は国の責任なので,雇用保険の財源は,全額国庫が負担する。
先に書いたように,財源には,保険料が含まれます。