今回は,ドイツについて学んでいきたいと思います。
ドイツは,世界に先駆けて,社会保険制度を取り入れたことで知られます。
社会保険制度を作ったビスマルクにちなんで,社会保障制度の中心を社会保険方式とするスタイルを「ビスマルク型」ということもあります。
日本の社会保障制度はドイツを参考にして作られた側面があるので,日本もあえて分類するなら「ビスマルク型」と言えるのかもしれません。
介護保険制度もドイツを参考にしたものの一つです。
〈ドイツの介護保険制度の特徴〉
・介護手当がある。
・0歳から被保険者となる。
・障害者も対象とする。
・財源は保険料のみで,税は使われていない。 など
それでは,今日の問題です。
第29回・問題55 諸外国における社会保障制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 アメリカには,国民保健サービス(NHS)と呼ばれる,原則無料の医療保障制度がある。
2 イギリスには,高齢者向けのメディケアという公的な医療保障制度がある。
3 ドイツの介護保険制度では,公的医療保険の加入者が年齢にかかわらず被保険者となる。
4 スウェーデンの老齢年金は,完全積立の財政方式に移行している。
5 フランスの医療保険では,外来診療に要した費用は保険者から直接医療機関に支払われるのが原則である。
少し高度な問題かもしれません。
スウェーデンの年金制度があまりよく知られていないためです。
それでは解説です。
1 アメリカには,国民保健サービス(NHS)と呼ばれる,原則無料の医療保障制度がある。
国民保健サービス(NHS)は,イギリスの医療保障制度です。
2 イギリスには,高齢者向けのメディケアという公的な医療保障制度がある。
メディケアは,アメリカの医療保障制度です。
アメリカの公的な医療保障制度は,高齢者・障害者等を対象とするメディケア,低所得者を対象とするメディケイド,の2つしかありません。
それ以外の人は,民間の医療保険に加入します。
3 ドイツの介護保険制度では,公的医療保険の加入者が年齢にかかわらず被保険者となる。
これが正解です。
ドイツの介護保険は,日本と異なり,●歳以上といった年齢区切りがありません。
4 スウェーデンの老齢年金は,完全積立の財政方式に移行している。
これがこの問題の難易度を上げているものです。
日本は,賦課方式を採用しています。
賦課方式とは,高齢者世代の給付は,現役世代の保険料によって賄われるものです。
そのため,現役世代が少なくなると困ります。
積立方式は,自分が納付した保険料を将来受け取るものです。
スウェーデンの老齢年金制度は,賦課方式と積立方式を組み合わせたものとなっています。
そのほかに,低所得者のための無拠出による最低保証年金があります。
社会福祉制度が発達しているスウェーデンであっても,年金制度は社会保険制度を採用しているところがポイントです。
医療保障制度は国によってさまざまですが,年金制度は,社会保険制度を採用する国が多いようです。
5 フランスの医療保険では,外来診療に要した費用は保険者から直接医療機関に支払われるのが原則である。
フランスの医療保障制度は,社会保険制度を採用しています。
特徴は,費用の支払いが償還払い方式を採用していることです。
日本の医療保険は,法定代理受領という方式を採用しています。これは,窓口では,自己負担分を支払い,医療機関は,保険分を診療報酬の審査支払機関に請求し,審査支払機関は,審査後,医療機関に支払う仕組みです。
これに対して,償還払い方式は,利用者は窓口で全額を支払い,後から保険適用分を受け取る方式です。
後から戻ってきますが,最初に全額を支払うのはかなり大変です。
そのため,医療費を抑制するように働きます。