日本の障害者福祉は,障害種別ごとに発展してきたことが特徴です。
2005年(平成17年)の障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)は,障害種別をなくした障害福祉サービスに一元化したのが特徴です。
障害者福祉になじみがないとそれでも複雑に思うかもしれません。
高齢者福祉と異なり,就労支援系のサービスがあるのが,少しばかり複雑に感じさせる理由なのかもしれません。
しかし,旧体系に比べるとずっとシンプルで覚えやすくなっています。
障害福祉サービスは,名称で覚えることが可能です。
例えば,就労支援系サービスは,
就労していない → 就労移行支援 → 就労継続支援(A型・B型)
→ 就労定着支援
のイメージで覚えると押さえると良いです。
就労していない者が一般就労を目指して「就労支援移行」,一般就労できれば,「就労定着支援」,一般就労できなければ「就労継続支援」を利用する
というイメージです。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題58 「障害者総合支援法」の障害福祉サービスに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 生活介護とは,医療を必要とし,常時介護を要する障害者に,機能訓練,看護,医学的管理の下における介護等を行うサービスである。
2 行動援護とは,外出時の移動中の介護を除き,重度障害者の居宅において,入浴,排せつ,食事等の介護等を行うサービスである。
3 自立生活援助とは,一人暮らし等の障害者が居宅で自立した生活を送れるよう,定期的な巡回訪問や随時通報による相談に応じ,助言等を行うサービスである。
4 就労移行支援とは,通常の事業所の雇用が困難な障害者に,就労の機会を提供し,必要な訓練などを行うサービスである。
5 就労継続支援とは,就労を希望し,通常の事業所の雇用が可能な障害者に,就労のために必要な訓練などを行うサービスである。
(注) 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。
早速解説です。
1 生活介護とは,医療を必要とし,常時介護を要する障害者に,機能訓練,看護,医学的管理の下における介護等を行うサービスである。
法制度では「医療」は「療養」という名称が使われることが多いようです。
障害福祉サービスでは,「介護」の名称がつくのが複数ありますが,そのうち医療に関するものは「療養介護」です。
生活介護は,高齢者分野ではデイサービスに近いです。
つまり,医療は含まない通所系サービスです。
国家試験では,居宅介護(介護保険では訪問介護)と混同させるように出題されるので,注意が必要です。
2 行動援護とは,外出時の移動中の介護を除き,重度障害者の居宅において,入浴,排せつ,食事等の介護等を行うサービスである。
重度障害者というヒントがあります。
重度訪問介護だとわかります。
行動援護は,知的障害者や精神障害者に対する外出支援です。
似たものには,同行援護があります。これは,視覚障害者に対する外出支援です。
3 自立生活援助とは,一人暮らし等の障害者が居宅で自立した生活を送れるよう,定期的な巡回訪問や随時通報による相談に応じ,助言等を行うサービスである。
これが正解です。
もしも自立生活援助がわからずとも,「自立した生活」というヒントから「自立生活援助」だと考えることが可能です。
4 就労移行支援とは,通常の事業所の雇用が困難な障害者に,就労の機会を提供し,必要な訓練などを行うサービスである。
通常の事業所の雇用が困難な障害者に対する就労支援サービスは,就労継続支援です。
A型は,雇用契約を締結して利用します。
B型は,雇用契約を締結しないで利用します。
5 就労継続支援とは,就労を希望し,通常の事業所の雇用が可能な障害者に,就労のために必要な訓練などを行うサービスである。
就労を希望して通常の事業所の雇用が可能な障害者が利用するのは,就労移行支援です。
就労継続支援と異なり,期間を定めて利用するのが特徴です。