今日の問題は,介護保険に関する事例問題を取り上げます。
介護保険の内容がわからなくても,落ち着いてソーシャルワークの基本を考えると正解できそうな問題です。
それでは,早速,今日の問題です。
第32回・問題131
事例を読んで,L介護支援専門員(社会福祉士)が行う支援で,適切なものを2つ選びなさい。
〔事 例〕
脳梗塞後遺症で左片麻痺のMさん(84歳,要介護3)の在宅生活に向けた退院時カンファレンスが開催された。Mさんは79歳の妻と二人暮らしで,主たる介護者は妻である。Mさんは杖歩行の訓練中であるが,転倒防止のため車いすを使用している。カンファレンスで,「在宅生活でも車いすの継続利用が望ましい」と理学療法士の意見があった。そのため,自宅の住宅改修などを行う必要性があることが話し合われ,居宅介護支援事業所のL介護支援専門員が居住環境の見直しをすることとなった。
1 住宅改修は,Mさんより,介護者である妻の希望を優先する。
2 在宅生活のため,屋外の段差解消は必要ないと説明する。
3 浴室での座位保持のため,入浴用椅子の購入を勧める。
4 居宅介護住宅改修費の支給限度基準額は10万円であることを伝える。
5 畳からフローリングヘの変更が可能であると伝える。
選択肢1と2は,すぐ消去できるはずです。
特に,選択肢1は,ソーシャルワーク系の科目でも問われます。
優先するのは,本人の希望です。
残るのは,
3 浴室での座位保持のため,入浴用椅子の購入を勧める。
4 居宅介護住宅改修費の支給限度基準額は10万円であることを伝える。
5 畳からフローリングヘの変更が可能であると伝える。
の3つです。
2つ消去できた時点で,この問題は,66.7%の確率で正解できます。
結論を言えば,この中で誤りなのは,選択肢4です。
4 居宅介護住宅改修費の支給限度基準額は10万円であることを伝える。
居宅介護住宅改修費の支給限度基準額は,20万円だからです。
しかし,金額うんぬんよりも,この選択肢が正解になりにくい理由は,ほかの2つは,具体的な居住環境を提示しているのに対し,この選択肢4は,金額を提示していることです。
お金はとても重要なことであるのは当然のことです。
しかし,優先するのは,住宅改修の内容です。
必要なものをピックアップして,その見積もりを出してもらって,支給限度基準額がいくらで,自己負担できるのはどのくらいなのか,その中で優先すべきものは何か,の検討を進めていきます。
ということで正解は,選択肢3と5です。
3 浴室での座位保持のため,入浴用椅子の購入を勧める。
5 畳からフローリングヘの変更が可能であると伝える。
〈今日の注意ポイント〉
ケアマネジメントは,ニーズ優先が大原則です。
先に金額を提示するのは,ニーズ優先ではなく,サービス優先の考え方です。
「介護保険では,〇〇万円が支給されるので,その範囲で行える住宅改修は,〇〇です」という思考になっていきます。
これがサービス優先です。
ケアマネジメントに関する出題では,サービス優先のものが正解になることはないと言えるでしょう。
支給限度基準額の知識があった方がもちろん良いですが,試験委員が本当に問いたかったのは,支給限度基準額の金額ではなかったのではないかと思います。
特定の分野の人しかわからないものを社会福祉士の国家試験の論点にするのはフェアではありません。
細かい内容は,現場に入ってから覚えればよいものです。受験するのは,社会福祉士の国家試験であることは,絶対に忘れてはなりません。