今回は,生活環境の調整を取り上げます。
生活環境の調整は,刑事施設や少年院に収容されている者の社会復帰を円滑に行うために,釈放後の住居,就業先その他の調整を行うことをいいます。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題150
事例を読んで,Z保護観察所が行うDさんの生活環境の調整に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
U矯正施設に収容されたDさん(55歳男性)は,施設からの釈放後に家族のもとで生活することを希望している。Z保護観察所に対し,U矯正施設からその旨の通知があった。
1 Dさんの生活環境の調整は,Dさんの仮釈放決定後に開始する。
2 Dさんの希望に関係なく,まずU矯正施設の所在地域にある更生保護施設への帰住を調整する。
3 Dさんの生活環境の調整を,保護司と協力して行うことは認められていない。
4 Dさんの生活環境の調整の方法として,Dさんの家族その他の関係人を訪問して協力を求めることがある。
5 Dさんの釈放後の就業先を確保することは,Dさんの生活環境の調整を行う事項に含まれない。
知識なしでも正解できてしまうような問題かもしれません。
今後は,このような問題づくりが下手なものは出題されることは少なくなるでしょう。
以前に書いたように,試験委員への支援が行われるためです。
それでは,解説です。
1 Dさんの生活環境の調整は,Dさんの仮釈放決定後に開始する。
仮釈放決定後では遅すぎます。それ以前から実施します。
2 Dさんの希望に関係なく,まずU矯正施設の所在地域にある更生保護施設への帰住を調整する。
帰住先がない場合は,更生保護施設も帰住先になり得ますが,それは最後の最後の手段です。
3 Dさんの生活環境の調整を,保護司と協力して行うことは認められていない。
生活環境の調整に限らず,保護観察官は,保護司と協力して活動を行います。
これは,指導監督,補導援護も同様です。
4 Dさんの生活環境の調整の方法として,Dさんの家族その他の関係人を訪問して協力を求めることがある。
これが正解です。
生活環境の調整は,その者の家族その他の関係人を訪問して協力を求めることその他の方法で行われます。
5 Dさんの釈放後の就業先を確保することは,Dさんの生活環境の調整を行う事項に含まれない。
釈放後の就業先の確保は,帰住先の確保とともに生活環境の調整に含まれます。
〈今日の注意ポイント〉
事例問題は,知識がなくても正解できる可能性が高いと言えますが,確実に正解するのはそれほど簡単ではありません。
慎重に考える姿勢を忘れてはなりません。
第32回の国家試験問題に約5か月にわたって取り組んで来ました。
これでようやく終わりです。ずっと取り組んできた方はお疲れさまでした。
次回から国家試験まで,国家試験の注意点などを紹介していきたいと思います。