介護保険の実施主体は,市町村です。
国は,市町村が参酌すべき指針を示します。
都道府県は,広域的な立場から市町村の調整,専門職の養成・資質の向上,基盤整備などを行います。
これらの関係性は,ほかの分野でもほとんど変わりありません。
ただし,介護保険には,ほかの分野と異なる部分があります。
市町村が事業者指定を行うものがあること(地域密着型サービス事業者など)などです。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題132
介護保険制度に関する次の記述のうち,国の役割として,正しいものを1つ選びなさい。
1 介護保険事業支援計画を策定すること。
2 介護給付費等審査委員会を設置すること。
3 介護保険に関する収入及び支出について特別会計を設けること。
4 市町村に対して介護保険の財政の調整を行うため,調整交付金を交付すること。
5 指定情報公表センターの指定をすること。
近年では,国の役割が出題されるようになってきていますが,拍子抜けしないでください。
基本を押さえるとどんな問題にも対応可能です。
それでは,解説です。
1 介護保険事業支援計画を策定すること。
国は,基本指針を策定します。
都道府県は,介護保険事業支援計画を策定します。
市町村は,介護保険事業計画を策定します。
2 介護給付費等審査委員会を設置すること。
介護給付費等審査委員会は,介護給付費請求書及び介護予防・日常生活支援総合事業費請求書の審査を行います。
設置するのは,国民健康保険団体連合会(国保連)です。
3 介護保険に関する収入及び支出について特別会計を設けること。
特別会計を設けるのは,市区町村です。
4 市町村に対して介護保険の財政の調整を行うため,調整交付金を交付すること。
これが正解です。
国は介護給付費の25%を負担しますが,定額分は20%です。
5%分が調整交付金と呼ばれるもので,市町村の介護保険財政の状況に応じて交付するものです。
5 指定情報公表センターの指定をすること。
介護サービス情報の報告の受理及び公表などを行う情報公表センターを指定するのは都道県知事の役割です。
〈今日の注意ポイント〉
今日の問題で特に覚えておきたいのは,指定に関する事務です。
制度の中には,国が指定するものもあります。
例えば,社会福祉士の国家試験を実施する機関などです。
国が指定するのは,このように全国に1か所しかないもの,あるいは数か所しかないものです。
多くの指定事務は,都道府県が行います。
ただし,前説に書いたように介護保険制度では,地域密着型サービス事業者や介護予防事業者,居宅介護支援事業者など,市町村が指定事務を担うものもあります。
これらは特別なものであり,指定は基本的に都道府県の役割であることを覚えておきたいです。