第37回国家試験から,令和元年度カリキュラムの内容となります。
新しい内容が含まれていますが,平成19年度カリキュラムの内容にあったもので削除されているものはほとんどありません。
今日の問題は,高齢者介護の内容ですが,これは第37回からの国家試験の出題基準には含まれません。
そのために,今日の内容が必要となるのは,第36回までということになります。
それでは,前説なしに今日の問題です。
第32回・問題130
片麻痺の要介護者に対する介護の方法に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 上着を脱がせるときは,麻痺のある側から脱がせ,着るときは麻痺のない側から袖を通す。
2 車いすからベッドヘ移乗介助する場合,ベッドに対して要介護者の患側に車いすを置く。
3 移動介助におけるボディメカニクス活用として,介助者の支持基底面を狭くとる。
4 食事時の座位姿勢として,頸部は体幹に対して後屈の姿勢とする。
5 杖歩行の介助を行う場合,介助者は杖を持っていない側の後ろに立つ。
社会福祉士の資格ができた背景は,やがて到来する高齢社会に対応できる人材を確保することがあります。
このために,介護概論という科目が作られ,社会福祉士も介護技術を学んできました。社会福祉士に求められる役割が変化し,令和元年度カリキュラムでとうとう消滅したことになります。
それでは解説です。
1 上着を脱がせるときは,麻痺のある側から脱がせ,着るときは麻痺のない側から袖を通す。
上着を脱がせるときは,麻痺のない側から脱がせ,着るときは麻痺のある側から袖を通します。
その理由は,頭の中でシミュレーションすると良いとわかると思います。
2 車いすからベッドヘ移乗介助する場合,ベッドに対して要介護者の患側に車いすを置く。
車いすからベッドヘ移乗介助する場合,ベッドに対して要介護者の健側に車いすを置きます。
これは実際に介助した経験がないと,シミュレーションすることができないかもしれません。
健側に車いすを置く理由は,健側を利用して,そこを軸に回転させて,移乗介助するためです。
3 移動介助におけるボディメカニクス活用として,介助者の支持基底面を狭くとる。
ボディメカニズムとは,物理学を生かして介助する方法です。
介助者の支持基底面とは,足の部分です。介助者の足を狭くすると,横方向に押されるとフラフラすることからわかるように,力が出ません。
介助者の支持基底面を広く取って,腰を少し落とせば,大きな力を生み出すことができます。
4 食事時の座位姿勢として,頸部は体幹に対して後屈の姿勢とする。
食事時には,頸部を後屈させると気道が開いてしまいます。
前屈させます。
5 杖歩行の介助を行う場合,介助者は杖を持っていない側の後ろに立つ。
これが正解です。
これは,シミュレーションで何とかわかるでしょう。
杖を持っていない側にバランスを崩しやすいからです。
〈今日の注意ポイント〉
知らないものであっても,考えることで答えられる問題は,意外と多くあります。
国家試験会場で落ち着くことは容易なことではありませんが,少しでも落ち着くことが何よりも大切だと強く思います。