国家試験には,何度も何度も繰り返し出題されるものと,一度しか出題されないものがあります。
一度しか出題されないものを一生懸命になって覚えるのは,時間がもったいないです。
今日,取り上げる問題は,いかにも繰り返し出題されないと思われる問題です。
しかし,問題を解く訓練には使えます。
ぜひ取り組んでみてください。
第32回・問題134
厚生労働省の介護人材確保対策に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 介護福祉士の資格等取得者の届出制度では,離職した介護福祉士に対し,その再就業を促進し効果的な支援を行うため,都道府県福祉人材センターに氏名・住所等を届け出ることを努力義務としている。
2 介護保険制度の介護報酬における介護職員処遇改善加算では,介護サービス事業所・施設等が特段の届出や要件を問われることなく,介護職員の賃金増額などを図るための加算を取得できることとなっている。
3 福祉・介護人材確保緊急支援事業により,キャリア支援専門員が福祉事務所に配置され,個々の求職者にふさわしい職場を開拓するとともに働きやすい職場づくりに向けた指導・助言を行うこととなっている。
4 「2025年に向けた介護人材の確保」によると,介護人材の構造転換を図るために,専門性の高い人材を活用する「富士山型」の方策から,基礎的な知識を有する人材を活用する「まんじゅう型」の方策へと転換を図る必要性が示されている。
5 「2025年に向けた介護人材の確保」によると,中高年齢者等や介護未経験の者に対し,生活支援サービスの担い手養成のための研修の受講を支援するため,介護福祉士等修学資金貸付制度の充実を図るとされている。
(注) 「2025年に向けた介護人材の確保」とは,「2025年に向けた介護人材の確保~量と質の好循環の確立に向けて~」(平成27年2月25日社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会)のことである。
文字数がとんでもなく多い問題なので,そこからナンセンスです。
この問題が出題された時に受験した人は,勉強したことがない内容であり,さらには,文字数が多いので頭が混乱したはずです。
国家試験には,こういったタイプの問題がこれまでは一定数出題されてきました。これからも出題されるかどうかわかりません。
しかし,こういった問題も出題されると想定しておくと,試験当日の混乱をある程度,防止することができるように思います。
それでは,解説です。
1 介護福祉士の資格等取得者の届出制度では,離職した介護福祉士に対し,その再就業を促進し効果的な支援を行うため,都道府県福祉人材センターに氏名・住所等を届け出ることを努力義務としている。
これが正解です。
今後,再び出題されることがあるとすれば,この「介護福祉士の資格等取得者の届出制度」でしょう。
2 介護保険制度の介護報酬における介護職員処遇改善加算では,介護サービス事業所・施設等が特段の届出や要件を問われることなく,介護職員の賃金増額などを図るための加算を取得できることとなっている。
介護職員処遇改善加算を算定するためには,事前に届出する必要があります。
3 福祉・介護人材確保緊急支援事業により,キャリア支援専門員が福祉事務所に配置され,個々の求職者にふさわしい職場を開拓するとともに働きやすい職場づくりに向けた指導・助言を行うこととなっている。
キャリア支援専門員というのは聞いたことがなかったはずです。
こういったものがいきなり正解になることはあまりありません。
キャリア支援専門員が配置されるのは,都道府県社会福祉協議会です。
4 「2025年に向けた介護人材の確保」によると,介護人材の構造転換を図るために,専門性の高い人材を活用する「富士山型」の方策から,基礎的な知識を有する人材を活用する「まんじゅう型」の方策へと転換を図る必要性が示されている。
なんだかよくわからないものでしょう。
しかし,富士山はイメージできるでしょう。今後,目指されるのは,富士山型らしいです。
富士山は,すそ野が広がっているのが特徴です。富士山型は,そのように,すそ野を広げて,多くの人材を集めることをイメージしたものです。
まんじゅう型は,基礎的な資格を取ってから参入するもので,今までの方策です。
5 「2025年に向けた介護人材の確保」によると,中高年齢者等や介護未経験の者に対し,生活支援サービスの担い手養成のための研修の受講を支援するため,介護福祉士等修学資金貸付制度の充実を図るとされている。
介護福祉士等修学資金貸付制度は,介護福祉士や社会福祉士の受験資格を得られる学校に通う生徒に対して,修学資金を貸与するものです。
貸与なので卒業後は返還しなければなりませんが,資格を取って一定の実務を経験すると返還免除になるような措置も設けられています。
〈今日の注意ポイント〉
解説を読めば,「なるほど~」と思うでしょう。
しかし,国家試験会場では,解説してくれる人はいません。調べることもできません。
自分の頭で考えて,答えなければなりません。
これはとても辛いことでしょう。しかし,現場は,自分で考えて,行動できる人材を求めています。
社会福祉士の国家試験は,社会福祉士に必要な力をつけるためのものでもあります。
辛いのは,ほかの人も同じです。もう一頑張りです。