保護観察制度は,更生保護法の中心をなします。
民法の成年年齢は20歳から18歳に引き下げられていますが,少年法の少年の年齢は,20歳のままで変更がありません。
そのために,18歳と19歳は新しく特定少年と規定され,18歳未満の少年とは異なる扱いがなされます。
保護観察の第1号と第2号は,少年を対象としていますが,特定少年に関しては少し異なります。
保護処分に関する特定少年についての詳細の出題は,まだ出題されないと思うので,今はとりあえず,18歳未満の少年についてしっかり覚えておきたいです。
今の時点(2024年1月)では覚えなくてもよいと思いますが,特定少年の保護処分は
・少年院送致
・2年間の保護観察
・6か月の保護観察
の3種類です。
児童自立支援施設・児童養護施設送致がありません。考えてみると,これまでも18・19歳の少年には,児童自立支援施設・児童養護施設送致は適用されていなかったのかもしれません。
児童自立支援施設・児童養護施設は,児童福祉施設だからです。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題147
保護観察に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 保護観察は,保護観察対象者の居住地を管轄する保護観察所が行う。
2 保護観察の対象者は,自らの改善更生に必要な特別遵守事項を自分で定める。
3 保護観察処分少年の保護観察期間は,保護処分決定の日から,原則として18歳に達するまでの期間である。
4 保護観察の良好措置として,仮釈放者には仮解除の措置がある。
5 保護観察の不良措置として,少年院仮退院者には退院の措置がある。
問題自体は難しいですが,正解すること自体はそれほど難しくはありません。
過去問を正解できることも大切ですが,正解以外のものを覚えないと過去問を解くことの意味はなさなくなります。
それでは解説です。
1 保護観察は,保護観察対象者の居住地を管轄する保護観察所が行う。
これが正解です。この問題を正解するのは,それほど難しくないという理由がわかると思います。
逆に,この選択肢を正解として選べなかったら,つまり消去法を使って正解するのはとても難しい問題です。
それではそのほかの解説です。
2 保護観察の対象者は,自らの改善更生に必要な特別遵守事項を自分で定める。
特別遵守事項を定めるのは,保護観察所の長あるいは地方更生保護委員会です。
3 保護観察処分少年の保護観察期間は,保護処分決定の日から,原則として18歳に達するまでの期間である。
保護観察処分少年の保護観察期間は,保護処分決定の日から,原則として20歳に達するまでの期間です。
4 保護観察の良好措置として,仮釈放者には仮解除の措置がある。
保護観察は,保護観察官と保護司によって,指導監督と補導援護という方法で行います。
そのうち,遵守事項を守っているか確認するのは,指導監督に当たります。
保護観察には,良好措置というものがあり,態度が良好であれば,本退院などがあります。
しかし,仮釈放者,つまり3号観察の者には,良好措置の制度はありません。
仮釈放者に良好措置として,仮解除してしまうと,裁判所が決めた刑期が変わってしまうためです。
5 保護観察の不良措置として,少年院仮退院者には退院の措置がある。
少年仮退院者,つまり2号観察の者が,本退院するのは,保護観察の良好措置です。
不良措置で退院するのはおかしなことになってしまうでしょう。
〈今日の注意ポイント〉
この問題には,保護観察官と保護司が出題されていませんが,これらの職種の役割が出題されます。
その際,「それぞれ役割分担がある」という内容のものが出題されることがよくあります。
しかし,更生保護法には役割分担の規定はありません。かなりの頻度で出題されているので,注意が必要です。