日本国憲法は,
第二十七条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
② 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
③ 児童は、これを酷使してはならない。
と規定しています。
この規定に基づき,日本の労働法制が形づくられています。
その中でも,労働基準法と労働安全衛生法は,中心的な位置にある法制度です。
それでは,早速,今日の問題です。
第32回・問題143
日本の労働法制に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 日本国憲法第28条が保障する労働三権は,団結権,団体交渉権,勤労権である。
2 労働者災害補償保険の保険料は,事業主と労働者が折半して負担する。
3 雇用保険法において失業とは,被保険者が離職し,労働の意思及び能力を有するにもかかわらず,職業に就くことができない状態にあることをいう。
4 最低賃金法に基づく地域別最低賃金は,都道府県知事が決定する。
5 労働契約法は,使用者は,労働者に1週間について40時間を超えて労働させてはならないと規定している。
それほど難しくない問題ですが,このように羅列されると混乱しそうです。
気持ちを落ち着けて問題に取り組むことが必要です。
それでは,解説です。
1 日本国憲法第28条が保障する労働三権は,団結権,団体交渉権,勤労権である。
日本国憲法が保障する労働三権は,
・団結権
・団体交渉権
・団体行動権
の3つです。
2 労働者災害補償保険の保険料は,事業主と労働者が折半して負担する。
労働者災害補償保険(労災保険)は,すべての労働者に適用される社会保険です。
被保険者という概念が存在しません。
そのために,保険料はすべて事業主負担です。
労災保険は,すべての労働者に適用されます。国籍,雇用形態,年齢,不法滞在,事業主の保険料滞納などに関係なく,労働災害,通勤災害の発生によって,適用されるのが特徴です。
3 雇用保険法において失業とは,被保険者が離職し,労働の意思及び能力を有するにもかかわらず,職業に就くことができない状態にあることをいう。
これが正解です。
労災保険と雇用保険は,日本国憲法が保障する勤労の権利を保障するための社会保険です。
いずれも戦後まもなく制度化されました。
雇用保険は,労災保険と異なり,加入要件があります。
①一週間の所定労働時間が20時間時間以上あること。
②同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれる者。
保険料は,基本的に労使折半ですが,雇用保険二事業は事業主のみ負担します。
4 最低賃金法に基づく地域別最低賃金は,都道府県知事が決定する。
地域別最低賃金は,厚生労働大臣又は都道府県労働局長が決定します。
5 労働契約法は,使用者は,労働者に1週間について40時間を超えて労働させてはならないと規定している。
使用者は,労働者に1週間について40時間を超えて労働させてはならないと規定しているのは,労働基準法です。
〈今日の注意ポイント〉
社会福祉士の国家試験では,根拠法がよく問われます。
根拠法を変えるだけで,簡単に問題がつくることが可能だからです。
今日の問題では,選択肢5がその例です。
根拠法が問われた場合は,落ち着いて考えてみるのが適切です。