障害者基本法は,1970(昭和45)年の心身障害者基本法を1993(平成5)年に改正した際に,名称変更して現在に至ります。
1993年の改正では,障害者の範囲に精神障害者を含めています。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題135 障害者基本法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 国及び地方公共団体の責務規定として,障害者の福祉を増進し,及び障害を予防することが定められている。
2 都道府県及び市町村は,それぞれ都道府県障害者計画又は市町村障害者計画を策定するよう努めることとされている。
3 国及び地方公共団体は,「障害者の日」の趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めなければならない。
4 自立への努力として,障害者は,その有する能力を活用することにより,進んで社会経済活動に参加するよう努めなければならない,と規定されている。
5 国及び地方公共団体は,障害のある児童及び生徒と障害のない児童及び生徒との交流及び共同学習を積極的に進めることによって,その相互理解を促進しなければならない。
この問題は,変な問題です。
何が変なのかというと,改正前の内容を出題しているからです。
このタイプの問題はあまり見たことがありません。
改めて考えてみると,出題方法が甘くて,問題視されたのかもしれません。なぜなら,第28回に出題されたときは「現行の」という言葉が含まれているからです。
それでは解説です。
1 国及び地方公共団体の責務規定として,障害者の福祉を増進し,及び障害を予防することが定められている。
「障害者の福祉を増進し,及び障害を予防すること」は,以前の規定です。
問題視されたかもしれないものの一つはこれです。
現行法では定められていないですが,以前は定められていたからです。
そのため,厳密に完全に誤りだとは言えないのでしょう。
ただし,不適切問題にはなっていません。
2 都道府県及び市町村は,それぞれ都道府県障害者計画又は市町村障害者計画を策定するよう努めることとされている。
現在は,いずれも策定義務があります。
3 国及び地方公共団体は,「障害者の日」の趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めなければならない。
かつては,12/9を障害者の日としていましたが,現在は障害者週間(12/3~9)となっています。
4 自立への努力として,障害者は,その有する能力を活用することにより,進んで社会経済活動に参加するよう努めなければならない,と規定されている。
自立への努力はかつてあった規定ですが,現在は削除されています。
自立の種類は,
5 国及び地方公共団体は,障害のある児童及び生徒と障害のない児童及び生徒との交流及び共同学習を積極的に進めることによって,その相互理解を促進しなければならない。
これが正解です。
障害者基本法は,多領域にわたった施策の方向性を打ち出しているものです。
そのため,法を所管しているのは,内閣府です。
厚生労働省だけでは実現不能です。
その一つが,教育の分野です。
教育に関しては,以下のように規定しています。
第十六条 国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない。
2 国及び地方公共団体は、前項の目的を達成するため、障害者である児童及び生徒並びにその保護者に対し十分な情報の提供を行うとともに、可能な限りその意向を尊重しなければならない。
3 国及び地方公共団体は、障害者である児童及び生徒と障害者でない児童及び生徒との交流及び共同学習を積極的に進めることによつて、その相互理解を促進しなければならない。
4 国及び地方公共団体は、障害者の教育に関し、調査及び研究並びに人材の確保及び資質の向上、適切な教材等の提供、学校施設の整備その他の環境の整備を促進しなければならない。
〈今日の一言〉
障害者基本法が定めている基本的施策は,以下の領域です。
・医療・介護等
・教育
・療育
・職業相談等
・雇用の促進等
・住宅の確保
・公共施設のバリアフリー化
・情報の利用におけるバリアフリー化
・相談等
・経済的負担の軽減
・文化的諸条件の整備等
・防災及び防犯
・消費者としての障害者の保護
・選挙等における配慮
・司法手続における配慮等
・国際協力
実に幅が広いことがわかります。
そのため,法を所管するのは内閣府でなければならないのです。