2021年11月27日土曜日

グラウンテッド・セオリー・アプローチとKJ法

質的調査で,最も難しいのは,グラウンテッド・セオリー・アプローチ(GTA)ではないかと思います。

 

グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)

グレイザーとストラウスによって開発されたものです。



〈GTAの手順〉

インタビューや観察などで得られたものを文字化します。

そのポイントだと思われるものを書き出します。

似たようなものをまとめて,そのかたまりをコード化します。

それが「オープン・コーディング」です。

いくつかのかたまりをまたまとめていきます。そして,全体にタイトルをつけます。

それが一回目です。

もう一回,元のデータに戻って同じ作業を繰り返します。

そうすると,最初には気づかなかったものが見えてきます。

また繰り返します。

そうして,繰り返すうちに,これ以上新しいものが出てこなくなった状態を「理論的飽和」といいます。

グレイザーとストラウスは,共同してGTAを提唱しましたが,手法がちょっと違います。

ストラウス派は,まとまったものを再コード化する過程があり,それを軸足コーディングと呼びます。

作業の過程でもう少し深めてみたいところがあった場合は,新たにインタビューなどを行います。

GTAが,データの収集と分析を繰り返して,新しい理論を発見するものである,と言われるゆえんは,このようなプロセスを踏むからです。


GTAを使った例

あるスポーツの指導者にインタビューを行います。

その時の面接法は,構造化面接ではなく,多くの場合は,半構造化面接で行われます。

つまりいくつかの質問をした後に,自由に語ってもらいます。

それを録音して,後で書き起こします。

それを区切って書き出します。

それを似たようなものをまとめてコード化します。

例えば,「選手の調子が悪い時」といったようにタイトルをつける作業です。これがオープン・コーディングです。

KJ法は,書き出したものはすべて使うルールがありますが,GTAでは仲間に入れることができなかったものは,無理に使う必要はありません。
そしてまとめていきます。

一人の指導者ではデータが足りないので,他のスポーツの指導者にもインタビューを行います。

そして同じように作業を進めていきます。これ以上新しい概念が生まれてこないところまで何度も繰り返します。それが理論的飽和です。

さらに,別なスポーツの指導者にもインタビューを行います。

最終的なコンセプトとして,「指導者のあり方」というタイトルをつけます。

この作業を通して,指導者の指導方法という理論が生まれています。

やった~という感じですね。

GTAの手順が何となくでもわかっていただけましたか?

専門家から見ると,ちょっと違うよ,と思われるかもしれません。社会福祉士の国試のためには,この程度を理解しておけば十分です。

 

KJ法

川喜多二郎(かわきた・じろう)先生が考案したもので,川喜多先生のイニシャルを取ってKJ法と名付けられました。

質的データの整理のほかにアイディアをまとめる時にも用いられます。

良く行われるのは,付箋に書き出して,それをまとめていく方法です。

その過程を通して,新しい発見がなされます。

 

この2つとも同じ時代に考案されたものです。

たまたまなのかもしれませんが,洋の東西で同じようなものが作られたのはすごいと思います。


それでは,今日の問題です。



22回・問題83 質的データの分析に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 グラウンデッド・セオリー・アプローチでは,データの収集と分析が一体となり,繰り返し実施されるのが,その特徴の一つである。

2 KJ法を利用して質的データを分類するには,理論的枠組みに基づいてあらかじめ設定された分類軸が必要である。

3 ドキュメント分析を行う際,公的機関の統計や文書あるいは新聞・雑誌などのメディア文書は分析の対象となるが,日記や手記などの個人的記録は分析の対象とはならない。

4 グラウンデッド・セオリー・アプローチにおける軸足コーディングは,単一の事象に対して,複数のコードをはり付けていくことである。

5 KJ法は,質的データの分析において,主として仮説の検証を試みる際に活用される。

 


難しいですが,KJ法とGTAの出題頻度は高いので,覚えないのはもったいないです。

それでは,解説です。

 

1 グラウンデッド・セオリー・アプローチでは,データの収集と分析が一体となり,繰り返し実施されるのが,その特徴の一つである。

 

これが正解です。データの収集と分析を繰り返して,それ以上何も出てこなくなった状態を理論的飽和といいます。

 

GTAでは,この状態を目指して,データの収集と分析を繰り返します。

 

2 KJ法を利用して質的データを分類するには,理論的枠組みに基づいてあらかじめ設定された分類軸が必要である。

 

KJ法もGTAも最初は何もありません。そのため,これから何が出てくるのだろうかとワクワクするのです。

 

3 ドキュメント分析を行う際,公的機関の統計や文書あるいは新聞・雑誌などのメディア文書は分析の対象となるが,日記や手記などの個人的記録は分析の対象とはならない。

 

これは今まで何度出題されたのかわからないくらいに同じ内容が繰り返し出題されています。

日記や手記も分析の対象となります。

 

4 グラウンデッド・セオリー・アプローチにおける軸足コーディングは,単一の事象に対して,複数のコードをはり付けていくことである。

 

軸足コーディングは,前説のように,まとまったものを再コード化する過程です。

 

5 KJ法は,質的データの分析において,主として仮説の検証を試みる際に活用される。

 

KJ法もGTAも仮説の検証には用いません。

分析する過程で,新しい発見をしていきます。

仮説の検証を主に行うのは,量的調査です。

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