条約を批准(国内で適用させる)には,条約の内容に合うように各法律を整備しなければなりません。
条約の内容に合っていない国内法があると,条約違反となってしまうからです。
今回のテーマである「障害者の権利に関する条約」は,2006(平成18)年に国連で採択されました。
日本は,その翌年に署名したものの,批准したのは,2014(平成26)年のことです。
この間,障害者基本法の改正,障害者虐待防止法や障害者差別解消法の制定などが実施されています。
今日の問題は,現在となっては,正解が2つになってしまっています。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題129 障害者を取り巻く社会情勢に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 身体障害者福祉法は,制定時には身体障害者の更生を目的とし,更生とは英語のリハビリテーションの訳で,医学的な回復を意味している。
2 1982(昭和57)年に開催された国連総会は,国際障害者年の趣旨をより具体的なものとするため,「障害者に関する世界行動計画」を採択した。
3 1995(平成7)年に,政府は「障害者プラン」(ノーマライゼーション7か年戦略)を発表し,「入所施設は真に必要なものに限定し,地域資源として有効に活用する」とした。
4 支援費制度において,障害児の在宅サービス及び施設サービスが従来の措置制度から契約制度に移行した。
5 2006(平成18)年の国連総会において「障害者の権利に関する条約」が採択され,日本政府はこの条約を批准した。
現在では,正解が2つになってしまう理由は,選択肢5です。
5 2006(平成18)年の国連総会において「障害者の権利に関する条約」が採択され,日本政府はこの条約を批准した。
この問題が出題された当時(2010年)では,日本は条約に署名したものの,まだ批准していませんでしたが,その後,批准したからです。
それでは,ほかの選択肢も解説します。
1 身体障害者福祉法は,制定時には身体障害者の更生を目的とし,更生とは英語のリハビリテーションの訳で,医学的な回復を意味している。
身体障害者福祉法では,更生という用語が用いられています。
この選択肢のとおり,リハビリテーションを意味していることは適切です。
一般的に,リハビリテーションというと医学リハビリテーションをイメージしがちですが,身体障害者福祉法で更生が意味するのは,職業リハビリテーションです。
戦争でケガをした元・軍人の社会復帰が求められたからです。
2 1982(昭和57)年に開催された国連総会は,国際障害者年の趣旨をより具体的なものとするため,「障害者に関する世界行動計画」を採択した。
これが正解です。
1981(昭和56)年は「完全平等と参加」をテーマにした「国際障害者年」でした。
その翌年に「障害者に関する世界行動計画」が採択されています。
3 1995(平成7)年に,政府は「障害者プラン」(ノーマライゼーション7か年戦略)を発表し,「入所施設は真に必要なものに限定し,地域資源として有効に活用する」とした。
障害者プランも新障害者プランも近年は出題されたことがないので,覚える必要はあまりないかもしれません。
「入所施設は真に必要なものに限定し,地域資源として有効に活用する」としたのは,障害者プランに続いて策定された「新障害者プラン」(2002年)です。
4 支援費制度において,障害児の在宅サービス及び施設サービスが従来の措置制度から契約制度に移行した。
支援費制度は,障害福祉に契約制度を取り入れたもので,2002年に導入されたものです。
2006年に障害者自立支援法が施行されて,わずか3年で役割を終えました。
障害児支援は,通所系と入所系がありますが,支援費の仕組みが取り入れられたのは,通所系だけです。
入所系(ここでいう施設サービス)は,措置制度のままでした。