市町村と都道府県の役割は,制度系のどの科目でも出題されます。
これに強くなると,国試での得点力はグーンとアップします。
覚えにくいため,出題すると受験者に差が生じるので,国家試験にはとても向いた問題となります。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題131 障害者自立支援法における国及び地方公共団体の役割に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 国の役割として,厚生労働大臣は,障害福祉サービス,相談支援及び地域生活支援事業の提供体制を整備し,自立支援給付及び地域生活支援事業の円滑な実施を確保するための基本指針を定め,公表しなければならない。
2 市町村は,育成医療,更生医療,精神通院医療という3つの自立支援医療の支給認定の役割を担っている。
3 市町村は,身体障害者に関する相談及び指導のうち,専門的な知識及び技術を必要とする相談支援のために身体障害者更生相談所を設置しなければならない。
4 都道府県は,指定障害福祉サービス事業者が事業の設備及び運営に関する基準に従って適切な運営をしていないときは,その旨を厚生労働大臣に通知しなければならない。
5 都道府県は,市町村の相談支援をバックアップする観点から,指定相談支援事業者に障害程度区分の認定及び支給要否決定のための心身の状況,置かれている環境等を調査することを委託する役割を担う。
出題当時のままなので,障害者自立支援法となっているなど,今とは異なる部分はありますが,市町村と都道府県の役割を考えたとき,参考になる問題だと思います。
それでは解説です。
1 国の役割として,厚生労働大臣は,障害福祉サービス,相談支援及び地域生活支援事業の提供体制を整備し,自立支援給付及び地域生活支援事業の円滑な実施を確保するための基本指針を定め,公表しなければならない。
これが正解です。
国の基本的役割は,基盤を整備することです。
「基本指針」という名称でついているものは,国が策定します。
「基本指針」とついていて,都道府県や市町村が策定する,といったものは誤りです。
2 市町村は,育成医療,更生医療,精神通院医療という3つの自立支援医療の支給認定の役割を担っている。
現時点(2021年11月)では,自立支援医療の支給決定は
育成医療と更生医療 → 市町村
精神通院医療 → 都道府県
というように分かれています。
(ただし,この問題の出題時点では,育成医療の支給決定は都道府県の役割でした)
複雑なので,覚えにくいです。
しかし,この選択肢は,解答テクニック的に消去できます。
この問題が正しければ
2 市町村は,自立支援医療の支給認定の役割を担っている。
これでよいはずです。
しかし,そうなっていないのは,育成医療,更生医療,精神通院医療という3つの自立支援医療という部分に嘘があるからです。
こういったところに気がつくことができるようになれば,ムダなミスはなくなることでしょう。
3 市町村は,身体障害者に関する相談及び指導のうち,専門的な知識及び技術を必要とする相談支援のために身体障害者更生相談所を設置しなければならない。
この選択肢には珍しく間違いポイントが2つあります。
間違いポイント1
身体障害者更生相談所の根拠法は,身体障害者福祉法です。
間違いポイント2
身体障害者更生相談所の設置義務があるのは,都道府県です。
4 都道府県は,指定障害福祉サービス事業者が事業の設備及び運営に関する基準に従って適切な運営をしていないときは,その旨を厚生労働大臣に通知しなければならない。
指定障害福祉サービス事業者が事業の設備及び運営に関する基準に従って適切な運営をしていないときに報告義務があるのは,市町村です。
都道府県はこのことについて,さらに厚生労働大臣に報告しなければならない,という報告義務はありません。
報告したところで,厚生労働大臣が何か手を打つことはないでしょう。
5 都道府県は,市町村の相談支援をバックアップする観点から,指定相談支援事業者に障害程度区分の認定及び支給要否決定のための心身の状況,置かれている環境等を調査することを委託する役割を担う。
障害程度区分は,障害者自立支援法が障害者総合支援法になったときに,障害支援区分という名称に変わっています。
指定相談支援事業者に委託するのは,市町村の役割です。