社会福祉調査の量的調査で得られるデータには,量的データと質的データあります。
これらについては,またの機会に詳しく紹介するとして,今日のテーマは「ピアソンの積率相関係数」です。
相関とは,変数Xと変数Yの間に関連があるという意味です。
Xの結果として,Yとなる。
こういったことが言えそうだ,ということを「相関がある」といいます。
相関係数は,相関の強さを表わし,範囲は「-1から1まで」です。
-1あるいは1の時が最も相関が強く,0は相関がないことを示します。
相関係数にはたくさんの種類がありますが,それぞれ計算方法が違うだけで基本は一緒です。
相関係数のうち,最も有名なものがピアソンの積率相関係数です。
国家試験でいつも出題されるのは,測定単位が異なると係数はどうなるのか,ということです。
結論を言えば,変わりません。
<例>
国試勉強を300時間行うと国試では120点とれる。
という仮説があるとします。
実際には,120点ではなくても100点程度得点できれば合格できます。
この場合の測定単位は,「時間」です。これが「秒」であっても結果に影響を与えるものではないと推測することはできそうです。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題79 ピアソンの積率相関係数に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 相関係数がゼロになった場合は,2つの変数の間にはいかなる関係も存在しない。
2 それぞれの変数の測定単位(mとcm,円とドルなど)が変われば,相関係数の絶対値の大きさも変化する。
3 変数Xと変数Yに正の相関が,変数Yと変数Zにも正の相関がある場合でも,変数Xと変数Zに相関が存在しないことがありうる。
4 2つの変数の間に相関があれば,どちらが原因となる変数でどちらが結果となる変数であるのかを特定できる。
5 相関係数が大きな値を示せば,2つの変数の間に必ず直接の関連がある。
ピアソンの積率相関係数は面倒なので,相関係数と略して考えましょう。
そうすると少しは気が楽になりませんか?
それでは解説です。
1 相関係数がゼロになった場合は,2つの変数の間にはいかなる関係も存在しない。
ゼロは確かに相関がないことを示すものです。
しかし,何らかの影響によって,そうなっているかもしれません。
2 それぞれの変数の測定単位(mとcm,円とドルなど)が変われば,相関係数の絶対値の大きさも変化する。
前説で述べたように,相関係数は,測定単位が変わっても変化することはありません。
先の例のように「時間」が「秒」,「得点」が「偏差値」でも良いわけです。
ただし,国家試験では,自分の得点はわかりますが,偏差値はわかりません。
3 変数Xと変数Yに正の相関が,変数Yと変数Zにも正の相関がある場合でも,変数Xと変数Zに相関が存在しないことがありうる。
久々に登場しました。
あいまい表現に正解多し
ということでこれが正解です。
どんなものでも可能性がゼロということはそんなにあることではないので,このような文章は成り立ちやすいのです。
4 2つの変数の間に相関があれば,どちらが原因となる変数でどちらが結果となる変数であるのかを特定できる。
相関係数は,相関の強さを表わすものであり,要因(独立変数)と結果(従属変数)の関係を特定するものではありません。
5 相関係数が大きな値を示せば,2つの変数の間に必ず直接の関連がある。
相関係数が大きな値を示すと相関が強いことを示します。
しかし,その間には,別の要因がかかわっているかもしれません。
この講座を受講した人のうち,〇%が合格した
といった広告を見ることがあります。
しかし,社会福祉士で言えば,模擬試験を受験したり,この学習部屋で勉強したり,といったことの努力の結果として合格しているのではないでしょうか。
これが,相関係数が大きな値を示しても,直接的な関連があるとは限らないという意味です。