後見人にはすべての法律行為について,取消権があります。
ただし,除外されているものがあります。
・婚姻などの身分行為。
・日用品の購入その他日常生活に関する行為
それでは,今日の問題です。
第22回・問題73 成年後見に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 成年被後見人が建物の贈与を受けたとき,成年後見人はこれを取り消すことができない。
2 保佐開始の審判を受けていた者が,事理弁識能力を欠く常況になった場合には,家庭裁判所は,職権で後見開始の審判を行うことができる。
3 成年被後見人が成年後見人の同意を得ないでした婚姻は,これを取り消すことができる。
4 自己の所有する不動産を売却した成年被後見人は,成年後見人の同意を事前に得ていた場合には,これを取り消すことができない。
5 成年被後見人が自己の所有する不動産を売却したとき,その時点で意思能力を有していた場合でも,成年後見人は契約を取り消すことができる。
前説のように,成年後見人は,「婚姻などの身分行為」「日用品の購入その他日常生活に関する行為」以外のすべての法律行為を取り消すことができます。
その視点でこの問題を読むと答えはすぐ見つかるでしょう。
それでは,解説です。
1 成年被後見人が建物の贈与を受けたとき,成年後見人はこれを取り消すことができない。
贈与という法律行為は,取り消すことができます。
2 保佐開始の審判を受けていた者が,事理弁識能力を欠く常況になった場合には,家庭裁判所は,職権で後見開始の審判を行うことができる。
「職権」ということばは注意が必要です。
後見開始等の審判は,請求権者(本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人,検察官)の請求によって,家庭裁判所が行います。
その際,家庭裁判所は,職権で成年後見人等を選任します。
職権とは,その職に認められた権限という意味です。
この場合の職権とは,家庭裁判所の権限で成年後見人等を選ぶという意味となります。
家庭裁判所は,国民の状態を把握しているわけではありません。申立てがあって,後見開始等の審判を行います。
職権で行うのは,成年後見人等を選任です。
3 成年被後見人が成年後見人の同意を得ないでした婚姻は,これを取り消すことができる。
婚姻等の身分行為は,日用品の購入その他日常生活に関する行為とともに取消すことができない例外事項です。
4 自己の所有する不動産を売却した成年被後見人は,成年後見人の同意を事前に得ていた場合には,これを取り消すことができない。
成年後見人は,「婚姻などの身分行為」「日用品の購入その他日常生活に関する行為」以外のすべての法律行為を取り消すことができます。
5 成年被後見人が自己の所有する不動産を売却したとき,その時点で意思能力を有していた場合でも,成年後見人は契約を取り消すことができる。
これが正解です。
一時的に意思能力を有しているかどうかは問われません。成年後見人は,「婚姻などの身分行為」「日用品の購入その他日常生活に関する行為」以外のすべての法律行為を取り消すことができます。