2020年6月15日月曜日

逸脱行動論の基礎知識~特にラベリング理論



今回は,逸脱行動論を学びます。

逸脱行動論とは,人はどのようにして逸脱していくのかを論じたものです。

逸脱行動論にはいくつも種類がありますが,最近の国家試験では,ラベリング理論を学んでほしいと思っているのではないかと感じることがあります。

ラベリング理論
周りが逸脱者だとレッテルを貼ることで逸脱すると考える。
分化的接触論
文化学習理論
逸脱者と交流し,逸脱行為を学ぶことで逸脱すると考える。
機会構造論
合法的ではない機会に多く接触することで逸脱すると考える。
アノミー論
文化的発展によって人々の欲求が高まるが,その欲求を満たすことができないときに逸脱すると考える。
社会統制理論
人の絆があるとき,仕事や学業などに打ち込んでいるときは,逸脱が減ると考える。

ラベリング理論だけが,本人の理由によって,逸脱したり,逸脱が減少すると考えるのではなく,周りが逸脱者生み出す,という理論となっています。

つまり問題の根源は,本人ではなく,レッテルを貼る周りの人だということになります。

それでは今日の問題です。


29回・問題21 ラベリング論の説明として,正しいものを1つ選びなさい。

1 機能主義的な立場から順機能・逆機能,顕在的機能・潜在的機能といった概念を導入しつつ,逸脱や逸脱行動を説明する立場である。

2 地域社会にある文化摩擦に着目し,社会解体がその地域の犯罪などを生み出すとみる立場である。

3 資本主義社会における生産関係の矛盾から派生してくるものが社会的逸脱であるとみる立場である。

4周囲の人々や社会統制機関などが,ある人々の行為やその人々に対してレッテルを貼ることによって,逸脱は作り出されるとみる立場である。

5 犯罪や非行などの社会問題は,下位集団文化の中で学習され,その文化を通じて世代から世代へと伝承されていくとみる立場である。


この問題は,1テーマで構成されているものです。


1テーマの問題は,それを理解している人にとっては難しくないですが,きっちり覚えていない人にとっては,ハードルが高い問題です。

1テーマの問題はそういった意味でとても怖いものだと言えます。

この問題は,ラベリング理論を正解にしたので,正解しやすい問題になったものと思います。

1テーマでもラベリング理論ではないものを正解にした問題なら,とても難しいものとなるでしょう。

さて,問題に戻ります。


正解は,選択肢4です。

4 周囲の人々や社会統制機関などが,ある人々の行為やその人々に対してレッテルを貼ることによって,逸脱は作り出されるとみる立場である。

レッテルを貼るという表現が古臭いですが,この言葉を知っていれば,すぐ正解できるものものでしょう。

レッテルを貼ることで逸脱するというのがラベリング理論です。

それでは,念のために,ほかの選択肢もみていきます。


1 機能主義的な立場から順機能・逆機能,顕在的機能・潜在的機能といった概念を導入しつつ,逸脱や逸脱行動を説明する立場である。

これはアノミー論を述べたものです。

逆機能の概念を提唱したのは,マートンです。
アノミー論は,マートンが提唱したものです。
そのため,機能主義的な視点で逸脱を分析しています。


2 地域社会にある文化摩擦に着目し,社会解体がその地域の犯罪などを生み出すとみる立場である。

これは,社会構造論について述べたものですが,これはよくわからないものです。
消去法で答えにたどり着こうと思ったときに障害になる選択肢でしょう。


3 資本主義社会における生産関係の矛盾から派生してくるものが社会的逸脱であるとみる立場である。

これは,コンフリクト理論について述べたものでずが,これもよくわからないものです。
しかし,「心理学理論と心理的支援」や「福祉サービスの組織と経営」などで,コンフリクトは,「紛争」「葛藤」などと学びます。

ここからベリング理論ではないと推測することができそうです。


5 犯罪や非行などの社会問題は,下位集団文化の中で学習され,その文化を通じて世代から世代へと伝承されていくとみる立場である。

これは,分化的接触論(文化学習理論)について述べたものです。


<今日の一言>

この問題には,社会統制理論が含まれていません。

次に逸脱行動論を出題する時には,社会統制理論を含めてくることも考えられるので,念のために覚えておきましょう。

社会統制理論は,ほかの逸脱行動論と異なり,逸脱しないのは,どのような場合なのかを考えるものです。

絆を感じられたり,仕事や学業などに打ち込んでいるときには,逸脱が減少すると考えます。

これが社会統制理論です。

でもやっぱり,ラベリング理論を中心として出題するのではないかと思います。

というのは,第32回国試では,以下のような問題が出題されたからです。

32回・問題21 社会問題は,ある状態を解決されるべき問題とみなす人々のクレイム申立てとそれに対する反応を通じて作り出されるという捉え方がある。このことを示す用語として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 社会統制論
2 緊張理論
3 文化学習理論
4 構築主義
5 ラベリング論

正解は,選択肢4の「構築主義」です。
構築主義は,ある問題を「問題だ」とクレイム申立てすることで,社会問題化すると考えるものです。

構築主義的アプローチもラベリング理論と同じように,周りの人が社会問題化に仕立て上げていくところに共通点があります。

構築主義的アプローチでは,誰かがクレイム申立てをしなければ,社会問題として明らかになってこないところに特徴があります。

最新の記事

子ども・子育て支援法

  子ども・子育て支援法は,これまでにも出題されてきましたが,正式に出題基準に含まれたのは,第37回国家試験です。 子ども・子育て支援制度は,市町村が実施主体になっています。 支給申請は,市町村に対して行います。 児童福祉法には,入所系があるので都道府県の役割がありますが,子ども...

過去一週間でよく読まれている記事