2022年4月12日火曜日

国民年金の第一号被保険者独自給付

国民年金には,第一号被保険者を対象とする独自給付があります。

 

厚生年金加入者である第二号被保険者,第二号被保険者の被扶養配偶者である第三号被保険者にはありません。

 

第一号被保険者独自給付 

付加年金

毎月の保険料に付加保険料を上乗せして納付することで,将来の年金額を増やすことができます。

寡婦年金

夫と10年以上継続して婚姻関係(事実上の婚姻関係を含む)にあり,死亡当時にその夫に生計を維持されていた妻に対して,その妻が60歳から65歳になるまでの間支給されます。

年金額は,老齢基礎年金額の4分の3です。

死亡一時金

第一号被保険者が老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま亡くなった時,生計を同じくしていた遺族に支給されます。

寡婦年金とは併給出来ないので,どちらかを選んで受給します。

 


それでは今日の問題です。

 

31回・問題52 年金保険に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 離婚した場合,当事者の合意又は裁判所の決定があれば,婚姻期間についての老齢基礎年金の分割を受けることができる。

2 老齢基礎年金は,25年間保険料を納付して満額の支給が受けられる。

3 老齢基礎年金は,65歳以降75歳まで支給開始を遅らせることができ,この場合,年金額の増額がある。

4 障害基礎年金は,障害認定日に1級,2級又は3級の障害の状態にあるときに支給される。

5 国民年金の第一号被保険者を対象とする独自の給付として,付加年金がある。

 

 

この問題は,出題当時は適切でしたが,現在だと正解は2つになります。

 

前説のように,1つめの正解は,選択肢5です。

5 国民年金の第一号被保険者を対象とする独自の給付として,付加年金がある。

 

現在では選択肢3も正解です。

3 老齢基礎年金は,65歳以降75歳まで支給開始を遅らせることができ,この場合,年金額の増額がある。

 

令和2年改正によって,令和4年4月から繰り下げ支給の範囲が従来の70歳から75歳に拡大しています。



 出典:日本年金機構ホームページ 

https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2022/0228.files/kurisage.pdf

 

老齢年金の受給権は,65歳になると発生しますが,この改正によって,需給開始を60歳~75歳の範囲で選択することができるようになりました。

 

繰り上げると年金額が減少し,繰り下げると増加します。

 

この金額は,一度決定するとその後変更されることはありません。

 

繰り上げて受給すると,減少した金額が一生続くことになります。

 

それでは,ほかの選択肢も確認します。

 

1 離婚した場合,当事者の合意又は裁判所の決定があれば,婚姻期間についての老齢基礎年金の分割を受けることができる。

 

年金分割ができるのは,老齢厚生年金です。

 

2 老齢基礎年金は,25年間保険料を納付して満額の支給が受けられる。

 

満額になるのは,40年間の納付が必要です。

 

4 障害基礎年金は,障害認定日に1級,2級又は3級の障害の状態にあるときに支給される。

 

障害基礎年金の障害等級は,1級と2級です。

 

障害厚生年金は,3級まであります。

 

障害基礎年金1級の支給額は,老齢基礎年金の満額の1.25倍です。

 

また,老齢基礎年金と異なり,保険料の納付期間による減額はされません。

 


〈今日の一言〉

 

社会保険制度は,基本的に事前に保険料を納付することで,保険事故が発生した場合に保険料を受け取ることができる制度です。

 

しかし,障害基礎年年金は,この原則にあてはまらないところがあります。

 

被保険者の期間がなくとも,あるいは保険料を納付せずとも受給できる制度があるからです。

 

たとえば,20歳前に初診日があり,国民年金の障害等級1級・2級に相当する場合,20歳になると障害基礎年金を受給することができます。

 

しかしこの場合は,収入が一定以上ある場合には受給制限があります。

 

学生納付特例制度を利用している学生が1級・2級に相当する障害を負った場合も障害基礎年金を受給することができます。この場合も保険料を納付せずともに障害基礎年金を受給することが可能です。

こういった理由から,障害基礎年金は,社会保険制度の中にありますが,社会福祉制度の側面を併せ持つ制度だと言えます。


国民年金制度が創設されたときに高齢だった人に支給される老齢福祉年金,そしてこの障害基礎年金と合わせて,国民皆保険が成り立っています。

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