公務員でなければ,地方自治法を見る人はまずいないと思います。
そのためなのか,福祉小六法には,地方自治法は掲載されていません。
本の帯に「国家試験対策のために」をうたっているなら,地方自治法は入れるべきだと思います。
ここで吠えても「M社」も「C社」には届かないと思います。
令和元年度改正によって,「福祉行財政と福祉計画」という科目は消滅しましたが,国家試験で市町村と都道府県の役割を問うことが続くなら,地方自治法は重要です。
第二条 地方公共団体は、法人とする。
② 普通地方公共団体は、地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるものを処理する。
③ 市町村は、基礎的な地方公共団体として、第五項において都道府県が処理するものとされているものを除き、一般的に、前項の事務を処理するものとする。
④ 市町村は、前項の規定にかかわらず、次項に規定する事務のうち、その規模又は性質において一般の市町村が処理することが適当でないと認められるものについては、当該市町村の規模及び能力に応じて、これを処理することができる。
⑤ 都道府県は、市町村を包括する広域の地方公共団体として、第二項の事務で、広域にわたるもの、市町村に関する連絡調整に関するもの及びその規模又は性質において一般の市町村が処理することが適当でないと認められるものを処理するものとする。
⑥ 都道府県及び市町村は、その事務を処理するに当つては、相互に競合しないようにしなければならない。
⑦ 特別地方公共団体は、この法律の定めるところにより、その事務を処理する。
⑧ この法律において「自治事務」とは、地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のものをいう。
⑨ この法律において「法定受託事務」とは、次に掲げる事務をいう。
一 法律又はこれに基づく政令により都道府県、市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、国が本来果たすべき役割に係るものであつて、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの(以下「第一号法定受託事務」という。)
二 法律又はこれに基づく政令により市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、都道府県が本来果たすべき役割に係るものであつて、都道府県においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの(以下「第二号法定受託事務」という。)
⑩ この法律又はこれに基づく政令に規定するもののほか、法律に定める法定受託事務は第一号法定受託事務にあつては別表第一の上欄に掲げる法律についてそれぞれ同表の下欄に、第二号法定受託事務にあつては別表第二の上欄に掲げる法律についてそれぞれ同表の下欄に掲げるとおりであり、政令に定める法定受託事務はこの法律に基づく政令に示すとおりである。
法定受託事務は,別表に示されているとおりですが,これがとても読みにくいものです。
さて,市町村と都道府県の役割の違いはイメージできますか?
この法則をここで示すのは簡単ですが,これからの勉強でぜひつかんでほしいと思います。
そのヒントは,今日の問題の中にもあります。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題47 法律に基づく,福祉計画に定めるべき事項に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 都道府県介護保険事業支援計画では,介護給付等対象サービスの種類ごとの量の見込みを基に,市町村の介護保険料を定める。
2 都道府県障害福祉計画では,各年度の指定障害者支援施設の必要入所定員総数を定める。
3 市町村障害者計画では,各年度における指定障害福祉サービス,指定地域相談支援又は指定計画相談支援の種類ごとの必要な量の見込みを定める。
4 市町村障害児福祉計画では,指定障害児入所施設等における入所児支援の質の向上のための事項を定める。
5 市町村地域福祉計画では,社会福祉を目的とする事業に従事する者の確保又は資質の向上に関する事項を定める。
介護保険には,地域密着型サービスという市町村が担当するものがありますが,これは原則から外れた例外事項です。
それでは,解説です。
1 都道府県介護保険事業支援計画では,介護給付等対象サービスの種類ごとの量の見込みを基に,市町村の介護保険料を定める。
多くの福祉計画は,策定期間の定めがないか,5年を一期とするものです。
介護保険事業計画は,策定期間が3年ごとという珍しいものです。
それは,第一号被保険者の保険料を定めるために必要だからです。
ということで,第一号被保険者の保険料を定めるのは,市町村介護保険事業計画だということになります。
2 都道府県障害福祉計画では,各年度の指定障害者支援施設の必要入所定員総数を定める。
これが正解です。
障害者総合支援法では,介護保険の地域密着型サービスのようなものはありません。
そのため,障害福祉サービスに関連するものは,すべて都道府県の役割です。
3 市町村障害者計画では,各年度における指定障害福祉サービス,指定地域相談支援又は指定計画相談支援の種類ごとの必要な量の見込みを定める。
障害者計画は,障害者基本法が根拠です。
障害福祉計画は,障害者総合支援法が根拠です。
必要な量の見込みを定めるのは,障害福祉計画です。
4 市町村障害児福祉計画では,指定障害児入所施設等における入所児支援の質の向上のための事項を定める。
質の向上に関するものは,都道府県の役割です。
5 市町村地域福祉計画では,社会福祉を目的とする事業に従事する者の確保又は資質の向上に関する事項を定める。
選択肢4と同じく,資質の向上に関するものは,都道府県の役割です。