2022年4月11日月曜日

社会保障の事例問題

「社会保障」では,事例問題が出題されます。


制度がわからなければ答えるのは難しい問題です。


しかし,知識がある人にとっては,知識の応用は求められないのでとても簡単です。


よほどのうっかりがなければ正解できるでしょう。


それでは前説なしに今日の問題です。


第31回・問題51 事例を読んで,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 Dさん(45歳)は,正社員として民間会社に勤務している。Dさんの父親Eさんが脳梗塞で倒れ,常時介護を必要とする状態になり,要介護4の認定を受けた。

1 Dさんが法定の介護休業制度を利用し,賃金が支払われなかった場合,雇用保険の介護休業給付金を受給することができる。

2 DさんがEさんの介護のために短時間勤務に切り替え,収入が従前よりも低下した場合,労働者災害補償保険から特別障害者手当が支給される。

3 Eさんが介護保険の居宅サービスを利用する場合,保険給付の区分支給限度基準額は,Eさんの所得に応じて決定される。

4 Eさんが75歳以上の後期高齢者の場合,Eさんの介護保険の利用者負担は減免の対象となる。

5 Eさんの介護保険の利用者負担が高額介護サービス費の一定の上限額を超過した場合,追加の利用者負担が求められる。


「社会保障」の事例問題は,事例のスタイルはとっていますが,知識そのものが問われていることがわかるでしょう。


解くのが楽しくなるような問題だと思いませんか。


とりあえず,事例を整理しておきます。


Dさん:45歳,民間会社の正社員。

Eさん:Dさんの父親,脳梗塞により要介護4の認定を受ける。


ムダな情報は一切ない事例です。


それでは,このシンプルな事例を手がかりとして問題を解いていきます。


1 Dさんが法定の介護休業制度を利用し,賃金が支払われなかった場合,雇用保険の介護休業給付金を受給することができる。


これが正解です。


雇用保険に加入するのは,一週間の所定労働時間が20時間以上,継続して31日以上雇用される見込みのある労働者です。


Dさんは,民間会社の正社員だと明記されているので,雇用保険の加入者だと考えられます。


そのため,介護休業給付金を受給できる可能性があります。


雇用保険の雇用継続給付には

・高年齢雇用継続給付

・介護休業給付


の2つがあります。


以前は,育児休業給付も失業等給付の雇用継続給付に含まれていましたが,2020年4月に失業等給付から独立しています。


2 DさんがEさんの介護のために短時間勤務に切り替え,収入が従前よりも低下した場合,労働者災害補償保険から特別障害者手当が支給される。


特別障害者手当は,特別児童扶養手当法にある制度です。


20歳以上の障害者が在宅生活する場合に給付されるものです。

Dさんは障害者ではありません。


3 Eさんが介護保険の居宅サービスを利用する場合,保険給付の区分支給限度基準額は,Eさんの所得に応じて決定される。


介護保険の要介護認定は,介護保険サービスを利用した場合,介護保険からの給付額の上限を定めるものです。


つまり,区分支給限度基準額は,要介護度によって決まります。



4 Eさんが75歳以上の後期高齢者の場合,Eさんの介護保険の利用者負担は減免の対象となる。


介護保険料の減免制度は確かに存在します。


市町村が独自にその内容を条例で定めますが,年齢による減免はありません。

多くの場合は,生活困窮者などが減免対象としています。


5 Eさんの介護保険の利用者負担が高額介護サービス費の一定の上限額を超過した場合,追加の利用者負担が求められる。


高額介護サービス費は,利用者負担が一定の上限額を超過した場合に給付するものです。



〈今日の一言〉


社会保障の事例問題は,多くの制度を混ぜて出題するので,知識が不足している人は容易に正解することができません。


そういった意味で,受験者をふるいにかけるのに適した出題方法だと言えるでしょう。

難易度は高いですが,それぞれの制度をきっちり押さえていくことで正解できるはずです。

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