障害者総合支援法の実施主体は市町村です。
しかし,その中でも都道府県の役割があります。
その一つは,指定障害福祉サービス事業者の指定です。
障害福祉サービスには,介護保険法の地域密着型サービスにあたるものがないため,市町村が指定するものはありません。
ただし,一般相談支援と計画相談支援を行う指定特定相談支援事業者の指定だけは,市町村が行います。
指定事業者の指定の原則は,都道府県の役割です。
もう一つは,自立支援給付のうちの精神通院医療の支給決定です。
支給決定は,基本的に実施主体である市町村が行いますが,精神通院医療の支給決定だけは市町村に権限移譲されずに都道府県が実施します。
ただし,申請窓口は更生医療と育成医療と同じく市町村です。
更生医療と育成医療は,そのまま市町村が支給決定しますが,精神通院医療は,市町村を経由して都道府県に送られ,都道府県が支給決定します。
障害者総合支援法の中では,指定特定相談支援事業者の指定,そして自立支援医療のうちの精神通院医療の支給決定は,例外です。
原則は,指定事業者の指定は都道府県,支給決定は市町村です。
個別に覚えるととても複雑ですが,原則を覚えて,例外を押さえるとシンプルに覚えられるでしょう。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題59 事例を読んで,各関係機関の役割に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
特別支援学校高等部を卒業見込みのHさん(Q県R市在住,軽度知的障害,18歳,男性,両親は健在)は,卒業後,実家を離れ県内のS市にある共同生活援助(グループホーム)への入居と一般就労を目指し,各関係機関に相談している。
1 特別支援学校の特別支援教育コーディネーターが,サービス等利用計画案を作成する。
2 Q県が共同生活援助(グループホーム)の支給決定を行う。
3 S市が成年後見の申立てを行う。
4 相談支援事業所の相談支援専門員が,共同生活援助(グループホーム)への体験入居を提案する。
5 Hさんの卒業後,R市がHさんの就労先に職場適応援助者(ジョブコーチ)を派遣する。
自立支援給付には,介護給付と訓練等給付があります。
それぞれどのようなものがあるかイメージできますか?
共同生活援助は,訓練等給付に位置づけられます。
それでは,解説です。
1 特別支援学校の特別支援教育コーディネーターが,サービス等利用計画案を作成する。
サービス等利用計画案を作成するのは,指定特定相談支援事業者です。
指定特定相談支援事業者を指定するのは,都道府県と市町村のうち,どっち?
市町村です。
指定の原則は都道府県ですが,指定特定相談支援事業者の指定は例外的に市町村が行います。
2 Q県が共同生活援助(グループホーム)の支給決定を行う。
支給決定を行うのは,市町村が原則です。
共同生活援助(グループホーム)の支給決定は,市町村が行います。
例外は,精神通院医療の支給決定です。
3 S市が成年後見の申立てを行う。
市町村長も申立てを行うことができますが,市町村長申立てを行うのは,申立権者が不在の場合,あるいはいても行うことができない場合などです。
申立て権者であるHさんの両親は健在です。
4 相談支援事業所の相談支援専門員が,共同生活援助(グループホーム)への体験入居を提案する。
これが正解です。
訓練等給付には暫定支給の制度があるものがあります。
共同生活援助(グループホーム)はその一つです。暫定支給を利用して,体験してみます。
それでよければ本支給となります。
5 Hさんの卒業後,R市がHさんの就労先に職場適応援助者(ジョブコーチ)を派遣する。
職場適応援助者(ジョブコーチ)は,地域障害者職業センターが派遣します。
障害者総合支援法と異なり,障害者雇用促進法が規定するものを利用する場合,利用料は必要とされません。ジョブコーチの派遣を受ける場合も無料です。