令和元年度カリキュラム改正による国家試験は,第37回から実施されます。
実習時間が長くなることによって,それ以外の部分の履修時間が短くなり,それに伴い,科目が再編されています。
科目として,消滅するのは,
・福祉行財政と福祉計画
・就労支援サービス
・更生保護制度
の3つです。
ただし,覚える内容が減るわけではありません。
福祉行財政と福祉計画は,地域福祉と包括的支援体制
就労支援サービスは,それぞれの科目
に組み込まれます。
更生保護制度は,刑事司法と福祉
に生まれ変わります。
福祉行財政と福祉計画が苦手な人にとっては,科目が消滅することはうれしいことなのかもしれません。
しかし,「地域福祉の理論と方法」の後継科目となる「地域福祉と包括的支援体制」の中に入るので,この科目は覚えることが多く,とてもやっかいな科目になってしまいました。
平成19年度改正によって生まれた福祉行財政と福祉計画は,当初は何が出題されるのかわからなかったため,かなり苦戦しましたが,カリキュラム末期となる現在では,出題されるものの内容が固定化していることで,対策が取りやすい科目の一つとなっています。
あとは覚えられるか覚えきれないかの違いです。
ここで得点できないのは,ちょっともったいないように思います。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題42 福祉行政における都道府県の役割に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 老人福祉法の規定により,特別養護老人ホームに入所させる権限を持つ。
2 介護保険法の規定により,介護保険の保険者とされている。
3 「障害者総合支援法」の規定により,介護給付の支給決定を行う。
4 児童福祉法の規定により,障害児入所施設に入所させる権限を持つ。
5 知的障害者福祉法の規定により,障害者支援施設に入所させる権限を持つ。
(注)「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。
都道府県と市町村の役割は,複雑そうに思いますが,基本を押さえたうえで,例外を覚えればよいので,とても簡単です。
何が基本で,何が例外かは,ここで書くこともできますが,自分でぜひ整理してみてほしいと思います。
身体障害者と高齢者の入所は,平成2年の福祉関係八法改正で,都道府県から市町村に権限移譲されています。
その後,知的障害者も権限移譲されています。
それらと異なり,児童分野は
入所は,都道府県
通所は,市町村
と役割が分かれたままです。
入所措置は,専門的判断が必要なため,都道府県,そして専門機関である児童相談所が担います。
通所は,それほどの専門的な判断が必要とされないため,市町村が担います。
ということで,この問題の正解は,選択肢4です。
4 児童福祉法の規定により,障害児入所施設に入所させる権限を持つ。
それ以外はすべて市町村の役割です。
1 老人福祉法の規定により,特別養護老人ホームに入所させる権限を持つ。
2 介護保険法の規定により,介護保険の保険者とされている。
3 「障害者総合支援法」の規定により,介護給付の支給決定を行う。
5 知的障害者福祉法の規定により,障害者支援施設に入所させる権限を持つ。
わが国の社会保険制度は,現在4つありますが,都道府県が保険者なのは,国民健康保険のみです。
国民健康保険は,平成30年改正で,市町村に加えて都道府県が保険者となり,運営の責任主体となりました。
つまり,それ以前は,都道府県が保険者となる社会保険は存在していなかったこととなります。
今日の問題に関連して,障害者総合支援法の規定も整理しておきます。
自立支援医療は,育成医療(障害児に対する医療),更生医療(身体障害者に対する医療),精神通院医療(精神障害者に対する医療)で構成されています。
〈市町村〉
・育成医療
・更生医療
〈都道府県〉
・精神通院医療
というように役割が分かれています。ここにも注意が必要です。