福祉計画は,作成するだけではなく,その結果について,分析や評価を行うことが求められます。
そのため,それらの方法について,出題されることがあります。
令和元年度カリキュラム改正では,「社会福祉調査の基礎」が共通科目に変わりました。
質の評価は,平成19年度カリキュラム改正では,相談援助の理論と方法に含まれていましたが,「社会福祉調査の基礎」の内容に含まれることとなりました。
精神保健福祉士を受験する人にとって,質の評価についてあまり学ぶ機会がなかったのを是正する形になっています。
それでは今日の問題です。
第31回・問題46 福祉計画策定の一連の過程に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 市町村地域福祉計画の策定委員会の長は,当該市町村の住民の中から選出することとされている。
2 第5期障害福祉計画(2018年度(平成30年度)開始)を作成するための基本指針では,ニーズ調査の実施方法としてデルファイ法が推奨されている。
3 第7期介護保険事業計画(2018年度(平成30年度)開始)を作成するための基本指針では,PDCAサイクルの活用がうたわれている。
4 内閣府は,市町村子ども・子育て支援計画の実施状況に関する政策評価を毎年実施している。
5 介護給付の適正化における介護給付費通知事業は,シングル・システム・デザイン法によって評価される。
「社会福祉調査の基礎」では,この中の「デルファイ法」と「シングル・システム・デザイン法」を学ぶことになります。
もしかすると,PDCAサイクルも含まれるかもしれません。
これらの部分を覚えることがこの問題に取り組む意味です。
それ以外の部分は,二度と出題されません。
「第7期介護保険事業計画(2018年度(平成30年度)開始)を作成するための基本指針」の内容を覚えても無駄です。
覚えておくべきものは,第8期(令和3年度~5年度)では,2025年を目指した地域包括ケアシステムの整備,更に現役世代が急減する2040年の双方を念頭に,高齢者人口や介護サービスのニーズを中長期的に見据えることが求められたことでしょう。
国は,2040年に向けて動き出していることがよくわかるでしょう。
それでは,解説です。
1 市町村地域福祉計画の策定委員会の長は,当該市町村の住民の中から選出することとされている。
このような規定はありません。
2 第5期障害福祉計画(2018年度(平成30年度)開始)を作成するための基本指針では,ニーズ調査の実施方法としてデルファイ法が推奨されている。
デルファイ法は,専門家にアンケートを行い,それを相互に参照して,意見を集約していく方法です。
第5期障害福祉計画(2018年度(平成30年度)開始)を作成するための基本指針で推奨されたのは,専門家の意見を聴くことではなく,障害児の保護者の意見を聴くことでした。
3 第7期介護保険事業計画(2018年度(平成30年度)開始)を作成するための基本指針では,PDCAサイクルの活用がうたわれている。
これが正解です。
PDCAサイクルは,計画 → 実行 → 評価 → 改善 を繰り返していくことです。
4 内閣府は,市町村子ども・子育て支援計画の実施状況に関する政策評価を毎年実施している。
政策評価を行うのは,計画の終了後です。
市町村子ども・子育て支援計画の策定期間は,5年です。毎年評価を行うことの必然性はないことから,これはないだろうと推測することができます。
5 介護給付の適正化における介護給付費通知事業は,シングル・システム・デザイン法によって評価される。
シングル・システム・デザイン法(単一事例実験計画法)は,介入の効果を測定するために用いられるものです。
そのために,「相談援助の理論と方法」に含まれていたのでしょう。
介入前と介入後の変化を調べることによって,介入の効果を測定します。