2025年10月30日木曜日

障害者総合支援法における相談支援

 

今日のテーマは,「障害者総合支援法における相談支援」です。

 

同法に規定される相談支援機関の中心は,基幹相談支援センターです。

 


〈基幹相談支援センターの業務〉

 

・総合的・専門的な相談の実施

・地域の相談支援体制強化の取組

・地域の相談事業者への専門的な指導助言,人材育成

・地域の相談機関との連携強化

・地域移行・地域定着の促進の取組

・権利擁護・虐待の防止


同センターの設置は,市町村の努力義務です。



34回・問題57 

「障害者総合支援法」における相談支援などに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 サービス利用支援では,利用者の自宅を訪問し,身体介護や家事援助等の介助を行う。

2 地域相談支援では,地域生活から施設入所や精神科病院への入院に向けた移行支援を行う。

3 相談支援は,訓練等給付費の支給対象となる。

4 基幹相談支援センターは,地域における相談支援の中核的な役割を担う機関である。

5 指定障害福祉サービスの管理を行う者として相談支援専門員が規定されている。

 

 

 それでは,解説です。

 

1 サービス利用支援では,利用者の自宅を訪問し,身体介護や家事援助等の介助を行う。

 

相談支援の問題なのに,介助を行うのはおかしいです。

利用者の自宅を訪問し,身体介護や家事援助等の介助を行うのは,居宅介護です。

 

サービス利用支援は,サービス等利用計画案を作成してケアマネジメントを行います。

 

2 地域相談支援では,地域生活から施設入所や精神科病院への入院に向けた移行支援を行う。

 

地域相談支援には,地域移行支援と地域定着支援があります。

 

地域移行支援は

 病院・施設等 ➡ 地域生活

 

です。

 

3 相談支援は,訓練等給付費の支給対象となる。

 

訓練等給付費の支給対象となるのは,訓練等給付です。

 

相談支援では,地域相談支援には地域相談支援給付費,計画相談支援には計画相談支援給付費がそれぞれ給付されます。

 

4 基幹相談支援センターは,地域における相談支援の中核的な役割を担う機関である。

 

これが正解です。

 

基幹相談支援センターがよくわからなくても「基幹」という名称から正解できてしまいます。

 

5 指定障害福祉サービスの管理を行う者として相談支援専門員が規定されている。

 

指定障害福祉サービスの管理を行う者は,サービス管理責任者です。

相談支援専門員は,障害者に対する相談支援を行います。


2025年10月28日火曜日

精神保健福祉法に規定される入院形態

 

精神保健福祉法は,社会福祉士の国家試験ではあまり出題されて来なかった法制度です。

近年になってようやく出題されるようになってきています。

 

今日のテーマは「精神保健福祉法に規定される入院形態」です。

 

任意入院
任意入院は,看護職員によって入院患者が殺された宇都宮病院事件によって,精神衛生法が精神保健法に改正されたときにできた制度です。

本人の同意で入院するものです。それまで本人の意思で入院するというものがなかったというのはちょっとびっくりですが,精神障害者に対する施策は,隔離だったということなのでしょう。

入院は自分の意思で行われるので,退院も自分の意思でできます。

しかし,悲しいですが退院制限というものがあります。

精神保健指定医が退院制限する場合は,72時間が限度です。

精神保健指定医ではない場合は,12時間が限度です。

退院制限があるのは,任意入院のみです。

任意入院以外は,医師の判断で退院の可否が決まるからです。


医療保護入院
自傷他害の恐れはないものの入院が必要な時,本人の同意がなくても,家族等の同意で行う入院です。


措置入院/緊急措置入院
措置入院は,自傷他害の恐れがある場合,都道府県知事の措置による入院です。

ただし簡単に措置入院が行われるものではありません。

精神保健指定医が2人以上で診察を行ったうえで,その診察結果が一致して初めて実施されます。

緊急措置入院は,ライシャワー駐日大使が精神障害者によって刺された事件によって,精神衛生法が改正されてできた制度です。

措置入院の一形態で,緊急を要する時に,精神保健指定医の診断は1人で措置入院を行うことができますが,入院時間は72時間が限度です。




④応急入院
応急入院は,精神保健法の成立によってできた制度です。

入院治療が必要な場合,本人や家族等の同意がなくても,精神保健指定医が必要性を認めることで行われる入院です。

精神保健指定医が診断した場合は72時間を限度,精神保健指定医ではない場合は,12時間が限度です。



さて,ここで整理しましょう。


任意入院と医療保護入院
 本人あるいは家族等の同意で行う入院です。


措置入院,緊急措置入院,応急入院
 本人あるいは家族の意思とは別に行われる入院です。


退院制限があるのは,任意入院のみ。


入院に時間の制限があるもの
 緊急措置入院,応急入院。


措置入院に時間の限度が設けられていない
 理由は,精神保健指定医2人の判断が一致した場合に行われるからです。


時間の限度を整理すると,

72時間と12時間しかありません。

24時間,36時間といったものはありません。




72時間・12時間法則は,入院も退院も共通

時間の限度を精神保健指定医とそれ以外という視点で整理すると,

精神保健指定医  72時間

それ以外  12時間

 

それでは,今日の問題です。

 

35回・問題62 「精神保健福祉法」に規定されている入院に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 任意入院では,入院者から退院の申出があった場合,精神保健指定医の診察により,24時間以内に限り退院を制限することができる。

2 応急入院では,精神科病院の管理者は,精神保健指定医の診察がなくても,72時間以内に限り入院させることができる。

3 医療保護入院では,精神保健指定医の診察の結果,必要と認められれば,本人の同意がなくても,家族等のうちいずれかの者の同意に基づき入院させることができる。

4 医療保護入院では,精神保健指定医の診察の結果,必要と認められれば,本人の同意がなくても,本人に家族等がいない場合は検察官の同意により入院させることができる。

5 措置入院では,本人に自傷他害のおそれがあると認めた場合,警察署長の権限に基づき入院させることができる。

 

なかなかの難問です。

 

早速解説です。

 

1 任意入院では,入院者から退院の申出があった場合,精神保健指定医の診察により,24時間以内に限り退院を制限することができる。

 

任意入院は,自分の意思により入院しますが,退院には制限があります。

 

精神保健指定医が診察した場合の退院制限は,72時間以内です。

 

2 応急入院では,精神科病院の管理者は,精神保健指定医の診察がなくても,72時間以内に限り入院させることができる。

 

応急入院は,精神保健指定医の診察がなくても入院させることができますが,その場合は12時間が限度です。

 

3 医療保護入院では,精神保健指定医の診察の結果,必要と認められれば,本人の同意がなくても,家族等のうちいずれかの者の同意に基づき入院させることができる。

 

これが正解です。

 

医療保護入院は,本人の同意がなくても,家族等の同意に基づき入院させることができます。

 

4 医療保護入院では,精神保健指定医の診察の結果,必要と認められれば,本人の同意がなくても,本人に家族等がいない場合は検察官の同意により入院させることができる。

 

医療保護入院は,家族等の同意に基づく入院形態です。

 

5 措置入院では,本人に自傷他害のおそれがあると認めた場合,警察署長の権限に基づき入院させることができる。

 

措置入院は都道府県知事の措置による入院形態です。

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