2020年12月25日金曜日

障害者基本法

今回は,障害者基本法を取り上げます。

 

同法は,1970年・昭和45年に心身障害者対策基本法として成立したものを1993年・平成5年に改正したときに,現在の名前に変わりました。

 

今まで何度か改正されてきていますが,特に重要な改正は,以下の2つです。

 

【2004年・平成16年改正】

・「自立への努力」の削除(心身障害者は,その有する能力を活用することにより,進んで社会経済活動に参与するように努めなければならない)

・「差別の禁止」を規定(何人も,障害者に対して,障害を理由として,差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない)

 

【2011年・平成23年】

・障害者の定義の変更(身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害がある者であって,障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう)

・「合理的配慮」を規定(社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによって差別禁止の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない)

 

2011年改正は,障害者権利条約を批准するためのものです。

 

同法は,医療福祉,教育,雇用,住宅,バリアフリー,消費者保護など多岐にわたる施策の理念(方向性)を定めています。

 

そのため,同法は内閣府が所管しています。

 

そして,その理念にしたがって,具体的な施策は,障害者総合支援法などの各法が定めます。

この関係性は,しっかり頭に入れておきましょう。

 

障害者基本法が定める「障害者計画」は,障害者のための施策に関する基本的な計画です。

障害者総合支援法が定める「障害福祉計画」は,障害福祉サービスの提供体制の確保その他に関する計画です。

 

名称が似ていますが,その違いを確実に押さえるためには,障害者基本法の性格(障害者施策の基本法)を押さえておくことが大切です。

 

それでは,今日の問題です。

 

第28回・問題62 現行の障害者基本法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさし。

1 社会的障壁の除去について規定されている。

2 中央心身障害者対策協議会を置くことが規定されている。

3 市町村の行う地域生活支援事業について規定されている。

4 心身障害者本人に対する自立への努力について規定されている。

5 市町村障害者計画の策定は,市町村の判断に委ねると規定されている。

 

「現行の」と加えているのが,特徴の問題です。

 

現在の規定に加えてどのように発展してきたのかを同時に学べるとてもよい問題だと思います。

 

同じような問題は,老人福祉法でも使われたことがあります。

 

この問題の正解は,選択肢1です。

1 社会的障壁の除去について規定されている。

 

これは2011年改正で規定されたものです。この改正は極めて重要です。障害者権利条約を批准するための改正だからです。

 

それでは,ほかの選択肢も確認します。

 

2 中央心身障害者対策協議会を置くことが規定されている。

 

中央心身障害者対策協議会は,以前のものです。

 

現在は,「障害者政策委員会」となっています。

この委員会は,障害者基本計画の実施状況を監視しています。

 

3 市町村の行う地域生活支援事業について規定されている。

 

地域生活支援事業を規定するのは,障害者総合支援法です。

 

4 心身障害者本人に対する自立への努力について規定されている。

 

自立への努力は,当初はありましたが,2004年改正で削除されています。

 

5 市町村障害者計画の策定は,市町村の判断に委ねると規定されている。

 

障害者計画の策定は,当初は任意でしたが,現在は,都道府県障害者計画とともに策定は義務となっています。

2020年12月23日水曜日

基幹相談支援センター

今回は,基幹相談支援センターを取り上げます。


基幹相談支援センターは,障害者総合支援法に規定され,市町村が設置することができます。

設置義務はないところが注意ポイントです。

介護保険法に規定される地域包括支援センターも同じく設置は任意です。

合わせて覚えておきたいです。


業務として,地域における相談支援の中核的な役割を担っています。


それでは,今日の問題です。


第28回・問題61 「障害者総合支援法」における基幹相談支援センターに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 社会福祉士を置くことが義務づけられている。

2 総合的・専門的な相談支援を行う。

3 障害者支援施設の整備に関して都道府県と協議を行う。

4 包括的・継続的ケアマネジメント業務を行う。

5 介護予防ケアマネジメント業務を行う。


介護保険法が規定する地域包括支援センターと混同させるように出題されています。


地域包括支援センターに関するものは,以下の3つです。

1 社会福祉士を置くことが義務づけられている。

4 包括的・継続的ケアマネジメント業務を行う。

5 介護予防ケアマネジメント業務を行う。


正解は,選択肢2です。

2 総合的・専門的な相談支援を行う。


ものすごくシンプルな問題ですね。


障害福祉サービス

今回は,障害者総合支援法が規定する障害福祉サービスに関する問題を取り上げます。


まずは,問題です。


第28回・問題59 事例を読んで,F君が利用できる「障害者総合支援法」に基づく障害福祉サービスとして,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事例〕

 F君(9歳,男児)は,自閉症を伴う知的障害があり,特別支援学校小学部第3学年に在学中である。以前,障害福祉サービスの利用を申請し障害支援区分3(行動関連項目の合計点は10点)の認定を受けていたが,現在,サービスは利用していない。最近になって,時々激しい自傷行為や物を壊す行動がみられるようになり,両親は,F君が日常生活を安全に過ごす方法として障害福祉サービスの利用を検討している。

1 生活介護

2 重度訪問介護

3 療養介護

4 同行援護

5 行動援護


障害者総合支援法は,18歳以上の障害者を対象としていますが,障害児も利用できる障害福祉サービスがあります。


利用できるのは,

・居宅介護

・行動援護

・同行援護

・重度障害者等包括支援


利用できないのは,

介護給付のうち

・重度訪問介護

・施設入所支援

・生活介護

・療養介護


それと訓練等給付です。


ただし,重度訪問介護は,15歳以上なら利用できます。


この問題では,

 生活介護

2 重度訪問介護

3 療養介護


が消去できます。


残るは,

4 同行援護

5 行動援護


の2つです。


この2つは,ことばが似ているのでしっかり覚えましょう。


同行援護は,視覚に障害のある人が対象です。


F君は,視覚には障害がありません。


残るは,5 行動援護 です。


これが正解です。


行動援護は,判断能力の制限がある人を対象としています。F君に適したサービスだと言えるでしょう。


2020年12月22日火曜日

障害者福祉の歴史的発展

今回は,わが国の障害者福祉の歴史を取り上げます。


わが国の障害者福祉の始まりは,1949(昭和24)年の身体障害者福祉法だと言えるでしょう。


それ以前は,救貧制度の対象でした。


障害者の入所施設の始まりは,1960(昭和35)年の精神薄弱者福祉法(現在の知的障害者福祉法)です。


その後,1960年代に重度障害児・者の入所施設ができていきます。


それでは,今日の問題です。


第28回・問題58 障害者福祉制度の発展過程に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 身体障害者福祉法(1949年(昭和24年))では,国に身体障害者更生援護施設の設置が義務づけられた。

2 東京パラリンピック(1964年(昭和39年))の開催を契機に,知的障害者を対象としたスペシャルオリンピックスが法制化された。

3 社会福祉基礎構造改革の理念に基づき,大規模コロニー計画が進められた。

4 障害者基本法の改正(2004年(平成16年))で,同法による障害者の範囲に難病等の者も含まれるようになった。

5 「障害者総合支援法」の施行により,重度訪問介護の対象者が障害児にも拡大された。

(注) 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。


勉強不足の人は,勘で正解できるような問題ではありません。

勉強している人も正解はそんなに簡単ではないでしょう。


なぜなら,正解はびっくりのものだからです。


1 身体障害者福祉法(1949年(昭和24年))では,国に身体障害者更生援護施設の設置が義務づけられた。


身体障害者更生援護施設という聞いたことのないものが出題されています。


聞いたことがないのは,当然だと言えるかもしれません。

なぜなら,現在は,「身体障害者社会参加支援施設」と名称が変わっているからです。


1950年当時,身体障害者更生援護施設として,以下の施設が規定されました。

①身体障害者更生指導施設

②中途失明者更生施設

③身体障害者収容授産施設

④義肢装具製作施設

⑤点字図書館

⑥点字出版施設


これらは覚える必要はありません。


このあと,1951年に社会福祉法人ができたことで,民間の身体障害者更生援護施設が設立されていくことになります。


それではほかの選択肢も見てみましょう。


2 東京パラリンピック(1964年(昭和39年))の開催を契機に,知的障害者を対象としたスペシャルオリンピックスが法制化された。


スペシャルオリンピックスが法制化されているなら,もっと有名なはずです。

必ず勉強の過程で出てきたはずです。

しかし,そうではありません。

なぜなら,法制化されていないからです。


3 社会福祉基礎構造改革の理念に基づき,大規模コロニー計画が進められた。


社会福祉基礎構造改革は,1990年代に行われたものです。


大規模コロニーは,1960年代から始まり,「社会福祉施設整備緊急5カ年計画」(1971~1950年)で広がっていきます。


4 障害者基本法の改正(2004年(平成16年))で,同法による障害者の範囲に難病等の者も含まれるようになった。


障害者基本法には,難病等は今でも入っていません。

なぜなら,障害者基本法は,施策の方向性を定めるものなので,サービスを規定するものではないからです。

障害者総合支援法で難病等が含まれた理由は,難病患者は,制度のはざまにあり,障害福祉制度を利用するのは困難だったためです。


5 「障害者総合支援法」の施行により,重度訪問介護の対象者が障害児にも拡大された。


障害児は今も対象には含まれません。

重度訪問介護の対象に加わったのは,重度の知的障害者と精神障害者です。

2020年12月21日月曜日

ICF(国際生活機能分類)

今回は,ICF(国際生活機能分類)を取り上げます。


 ICFに用いられている用語 

心身機能

身体系の生理的機能(心理的機能を含む)

身体構造

身体の解剖学的部分

機能障害

心身機能または身体構造上の問題

活動

課題や行為の個人による遂行のこと

参加

生活・人生場面への関わりのこと

活動制限

個人が活動を行うときに生じる難しさのこと

参加制約

個人が何らかの生活・人生場面に関わるときに経験する難しさのこと

環境因子

人々が生活し,人生を送っている物的な環境や社会的環境,人々の社会的な態度による環境を構成する因子のこと


背景因子には,環境因子のほかに個人因子がありますが,ICFでは,社会的・文化的に差があるため,定義づけしていません。しかし,それまでの人生の経験など個人的なものであることには間違いありません。

 

それでは,今日の問題です。

 

第28回・問題57 事例を読んで,国際生活機能分類(ICF)の「参加制約」に該当するものとして,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事例〕

 Eさん(49歳,男性)は,脳性麻痺で足が不自由なため,車いすを利用している。25年暮らした障害者支援施設を退所し1年がたつ。本日,どうしても必要な買物があるが,支援の調整が間に合わない。その場での支援が得られることを期待して,一人で出掛けた。店まで来たが,階段の前で動けずにいる。

1 脳性麻痺で足が不自由なこと

2 階段があること

3 支援なしで外出できること

4 店で買物ができないこと

5 障害者支援施設を退所したこと

 

「参加制約」を「個人が何らかの生活・人生場面に関わるときに経験する難しさのこと」とたように言葉だけで覚えていると,とても難しいと思うでしょう。

 

単純に「参加するのが難しいこと」と考えるとどうでしょう?

 

「参加」とはどのようなことを指すのか,正確にはわからなくても,何かに参加するということは推測できそうです。

 

この問題の正解は,選択肢4です。

 

4 店で買物ができないこと

 

「参加」は,「活動」とセットで覚えるべきものです。

 

たとえば「活動」は,店まで行くことです。

 そこに「買い物をする」という要素が加われば「参加」となります。


ただし,「活動」と「参加」は,明確に分けることができないので,「活動と参加」という一つのカテゴリーとなっています。


それでは,ほかの選択肢もみてみましょう。

 

1 脳性麻痺で足が不自由なこと

 

これはわかりやすいですね。機能障害です。

 

2 階段があること

 

階段があることは,環境因子です。

 

3 支援なしで外出できること

 

支援なしで外出できることは,活動と参加です。

 「できる」ということばから,「制約」は結び付かないでしょう。

 

5 障害者支援施設を退所したこと

 

これは,何だかわかりにくいですが,これが「個人因子」です。

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