2024年5月13日月曜日

国家試験で実力を発揮するための秘策!

国家試験は独特な雰囲気の中で受けなければなりません。


周りのみんながとても優秀に見えます。


国試の集合時間から国試が始まるまでの時間はとても長いので,緊張感はどんどん高まります。


国試が始まり,問題文を読むと


何これ? 勉強したことがない。分からない!!


と思います。


冷静には問題文は読めなくなってしまいます。


試験委員は,過去問は参考にはしますが,過去問から国試問題を作っているわけではありません。


一次資料を参考に問題を作っていきます。そのため,同じことを述べた文であっても,別の表現になります。


それが先の


何これ? 勉強したことがない。分からない!!


と感じる理由だと考えています。


国試はある意味では,自分との戦いです。


国試勉強に至る過程はもちろん自分との戦いですが,国試当日も自分との闘いです。


今まで自分はこれだけ勉強してきたのだから,絶対に答えは分かる


と思えれば,試験委員が仕掛けたトラップをうまくかわすことができます。



今までこれだけ勉強してきたのに分からない。だめだ!


と弱気になれば,試験委員の思うつぼです。



合格する人も不合格になる人も実力の差は本当にわずかです。


試験当日,どれだけ強い気持ちで問題に向き合えるか?


過去問題でも模擬問題でも予想問題でも,最初に見たときはとても難しく思うはずです。

その気持ちをしっかり覚えておいてほしいと思います。


国試では,すべての問題が分からなくでも良いです。

4割程度は間違うことができます


弱い気持ちになって,本来解けなければならない6割を落とすことが致命傷となります。

前回のストレングスの問題は,分からなくても良い(間違っても良い)問題です。


国試で実力を発揮するためには・・・


自分に自信をもって臨むことです。


そのためには,まずはやるべきことを一つずつ押さえていくことが大切です。


問題の中には,必ず答えがあります。

落ち着いて読むことができれば,その答えを探し当てることができます。


チームfukufuku21は皆さんと一緒にそのヒントを考えていきたいと思います。


それでは今日の問題です。


第26回・問題114 

スーパービジョンに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 スーパーバイザーは,バーンアウトが懸念されるスーパーバイジーに対して,教育的機能を発揮することが求められる。

2 スーパービジョン関係で起こるパラレルプロセスは,スーパーバイジーが過去の特定の人間関係をスーパーバイザーとの関係の中に投影することである。

3 ピアスーパービジョンとは,スーパーバイザーである上司から複数の同僚や仲間とともにスーパービジョンを受けることである。

4 スーパーバイザーが部下であるスーパーバイジーに対してスーパービジョンを行う場合には,管理上の責任を負う。

5 ライブスーパービジョンとは,スーパーバイザーと複数のスーパーバイジーでロールプレイを用いて行う討議形式の事例検討である。



スーパービジョンは,国試では超頻出です。


しっかり解けるようにしておきましょう。このような問題を落とすのはもったいないです。


しかし,超頻出だからといって簡単に答えられないようにトラップが仕掛けられているのはいつもの通りです。


スーパービジョンの機能

教育的機能

支持的機能

管理的機能


これは最低限覚えておきましょう。


これに加えて,スーパービジョンの種類も押さえておきましょう。


それでは詳しく見ていきましょう。


1 スーパーバイザーは,バーンアウトが懸念されるスーパーバイジーに対して,教育的機能を発揮することが求められる。


教育的機能は,スーパーバイジーの技能が不足しているとき,さらに伸ばすためのものです。古典的な「教育」のイメージそのままの機能です。


バーンアウトしそうなときには,スーパーバイジーは心が弱くなっています。

おそらくバイザーが良かれと思って発する言葉は受け入れる余裕はないはずです。


こんな時は,教育的機能を使ったスーパービジョンよりも,まずはその緊張状態やストレス緩和に努めるために支持的機能を使ったスーパービジョンの方が適切です。


よって×。


2 スーパービジョン関係で起こるパラレルプロセスは,スーパーバイジーが過去の特定の人間関係をスーパーバイザーとの関係の中に投影することである。


この時,初めて「パラレルプロセス」が出題されました。


この問題を見て,「こんなに勉強したのに分からない。困った!」と思ったことでしょう。

ここで焦ってしまったら,試験委員の思うつぼです。


パラレルプロセスは,試験委員が仕掛けたトラップです。

分からないときは,まずは冷静に▲をつけておきます。


しかしヒントはあります。


「スーパーバイジーが過去の特定の人間関係をスーパーバイザーとの関係の中に投影することである」は,何となく「転移感情」のことを言っているのではないか,と思えればとても勉強が進んでいる証拠です。


結果的にはこの選択肢は×です。


パラレスプロセスとは・・・


スーパーバイザーとスーパーバイジーとの関係が,ワーカーとクライエントの関係で展開されていくようになること。


簡単に言うと・・・


クライエントと良い関係が築けないワーカーがバイザーとの関係を通して,クライエントとの関係を築けるようになることやクライエントの話を受容できないワーカーがバイザーに受容してもらうことでクライエントの話を受容できるようになる


などがあります。


パラレルプロセスのパラレル(平行)という意味は,


スーパーバイザー ⇔  スーパーバイジー


クライエント   ⇔  ソーシャルワーカー


の関係が並行して進んでいくこと(パラレルプロセス)です。


3 ピアスーパービジョンとは,スーパーバイザーである上司から複数の同僚や仲間とともにスーパービジョンを受けることである。


スーパービジョンの種類

個別スーパービジョン

グループスーパービジョン

ライブスーパービジョン

ピアスーパービジョン

セルフスーパービジョン


などがあります。


複数が一緒にスーパービジョンを受けるのは,グループスーパービジョンです。


よって×。


4 スーパーバイザーが部下であるスーパーバイジーに対してスーパービジョンを行う場合には,管理上の責任を負う。


答えを先に述べるとこれは正解です。


スーパービジョンの機能には,「教育的機能」「支持的機能」「管理的機能」の3つがあります。


管理的機能と管理上の責任が結び付けば,正解にすることができたと思います。


しかし,国試会場の雰囲気に呑まれ,2つめの選択肢のパラレルプロセスに動揺しているとこの選択を冷静に読めなくなってしまいます。


5 ライブスーパービジョンとは,スーパーバイザーと複数のスーパーバイジーでロールプレイを用いて行う討議形式の事例検討である。


ライブスーパービジョンは,実際のクライエントにかかわりながら行うスーパービジョンです。


「スーパーバイザーと複数のスーパーバイジーでロールプレイを用いて行う」ものは,先述のようにグループスーパービジョンです。


ロープレを取り入れてもクライエントにかかわりながら行うものではないので,ライブスーパービジョンではありません。

2024年5月12日日曜日

理論系科目は難しいが,覚える意義は大きい!!

 バートレットが「ソーシャルワーク実践の共通基盤」を提唱したのは,1970年のことです。この辺りからソーシャルワークはどんどん進化していきます。


今,取り上げているのは,理論系科目である「ソーシャルワークの理論と方法」です。


何度も同じことを書きますが,「価値」「知識」を身につけるのは,避けて通れません。


頑張りましょう。


さて,今日の問題です。


第26回・問題101 

相談援助におけるエンパワメントアプローチに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 ソロモン(Solomon,B.)は,問題の外在化を中心にしたエンパワメントアプローチを提唱した。

2 シュワルツ(Schwartz,W.)は,ストレングスはエンパワメントの燃料であると述べた。

3 グテイエレス(Gutierrez, L.)は,エンパワメントアプローチでは集団を通しての体験が重要であると述べた。

4 フレーレ(Freire,P.) は,エンパワメントアプローチに影響を与えたコンピテンスの概念を提唱した。

5 デュボイス(Dubois,B.)とミレイ(Miley,K.)は,問題解決モデルの援助過程に基づいてエンパワメントアプローチを示した。


エンパワメントアプローチの問題です。


第26回国試ではこの問題は最も難しいものだったのではないかと思います。


エンパワメントアプローチは,以前に書いたようにポストモダンに属するものです。ソロモンが1976年に提唱しました。


1950~60年代は,キング牧師に代表される公民権運動が吹き荒れた熱い時代です。


それよりもちょっと遅い感じがすると思いますが,抑圧されたパワーレス状態の黒人がその状況に気づき支援することを求めて提唱したものです。


少し遅めに出てきたというのは,問題は根強く残っていることを裏付けるものと言えます。


さて,それでは詳しく見ていきましょう。



1 ソロモン(Solomon,B.)は,問題の外在化を中心にしたエンパワメントアプローチを提唱した。



ソロモン=エンパワメントアプローチという単純化した知識だと引っ掛けられてしまう問題です。


「問題の外在化」という技法を用いるのは,エンパワメントアプローチとともにポストモダンに位置付けられる「ナラティブアプローチ」です。


ナラティブは「語り」を意味し,語りの中から新しい世界を見出すものです。


問題の外在化とは・・・


問題は自分が原因ではなく,自分の外にあるように置き換える技法です。



例えば,うつ病の患者が「私はうつでやる気ができない」と考えているとします。

外在化すると「うっちゃんが私からやる気を奪っていきます」といった語りになります。


うつ病に名前を付けて,「うっちゃん」としました。


かなり気が楽になると思いませんか?


このように問題の外在化はエンパワメントアプローチではないので×。



2 シュワルツ(Schwartz,W.)は,ストレングスはエンパワメントの燃料であると述べた。


シュワルツはグループワークの「相互作用モデル」を提唱した人です。


そこからストレングスのことは言わないだろうとは想像はつけられるかもしれませんが,かなり難しいものだと思います。


「ストレングスはエンパワメントの燃料である」と述べたのはコウガーという人らしいです。今のところはまだ国試にコウガーそのものの名前が直接出題されたことはありません。


クライエントにストレングス(強味)を見出すことはとても重要なので,しっかり覚えておきましょう。


3 グテイエレス(Gutierrez, L.)は,エンパワメントアプローチでは集団を通しての体験が重要であると述べた。


グテイエレスは,女性のエンパワメントに着目し,小集団活動が重要であると述べています。


よって正解です。


4 フレーレ(Freire,P.)は,エンパワメントアプローチに影響を与えたコンピテンスの概念を提唱した。


フレーレは,エンパワメントアプローチに影響を与えた人には間違いないのですが,福祉そのものの人ではなく,教育分野です。


フレーレのブラジルでの活動は,貧しい農民にその境遇を教えて,読み書き教育を行いました。読み書きができないことは次世代にも貧困が引き継がれる「貧困の再生産」につながります。


彼の活動は資本家から疎まれ一時は国外追放になりますが,その後帰国してスラム街でも識字教育を行いました。


ブラジルが最貧国の一つですが,目先の利益に目を奪われ国外追放してしまうようなところに問題の根源の深さを感じてしまいます。


コンピテンス概念を提唱したのはマルシアという人らしいです。


よって×。


コンピテンスとは能力のことを言います。


マルシアが提唱したコンピテンス概念は,クライエントが周りの環境に適応する能力のことです。


5 デュボイス(Dubois,B.)とミレイ(Miley,K.)は,問題解決モデルの援助過程に基づいてエンパワメントアプローチを示した。


先に答えを述べると,デュボイスとミレイは,問題解決モデルの援助過程に基づいてエンパワメントアプローチを示していません。


よって間違いです。


デュボイスとミレイをネットで調べてもほとんどヒットしません。


ヒットするのは,国試のこの問題に関するものばかりです。


〈今日の一言〉


今日の問題のような難しい問題は,おそらく今後は出題されません。しかし,時にはこういった問題が出題されることがないとは限りません。

そんなときでも,決して焦ることなく,落ち着いて考えて,答えが分からなければ,気持ちを知り変えて,次の問題に進むのが得策です。


2024年5月11日土曜日

さまざまなアプローチ

 ソーシャルワーク系の科目は


(共通科目)

ソーシャルワークの基盤と専門職 6問

ソーシャルワークの理論と方法 9問


(専門科目)

ソーシャルワークの基盤と専門職(専門科目) 6問

ソーシャルワークの理論と方法(専門科目)  9問


の4科目あり,合計30問です。


国家試験の全出題数は,129問,約4分の1をソーシャルワーク系の科目が占めています。


国試で合格基準点を上回るためには,ここの攻略が欠かせません。


今日は,共通科目の「ソーシャルワークの理論と方法」からの問題です。


第26回・問題99 

相談援助のアプローチに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 バンデューラ(Bandura,A.)は,行動変容アプローチに取り入れられた社会的学習理論を提唱した。

2 ピンカス(Pincus,A.)とミナハン(Minahan,A.)は,一般システム理論に基づいてユニタリー・アプローチを提唱した。

3 ロビンソン(Robinson,V.)は,地域精神医学研究などの成果を取り入れた危機介入アプローチを提唱した。

4 バーク(Berg,I.)は,社会構成主義を基盤としたナラティブ・アプローチの発展に寄与した。

5 スモーリー(Smalley. R.)は,生態学に基づく機能的アプローチを体系化した。


ソーシャル・ケースワークは,イギリスで生まれ,アメリカで発展しました。


そのため,開発者はすべて外国人となります。


外国人アレルギーのある人にはちょっと嫌だなぁ,と感じるところかもしれません。



しかし,「価値」「知識」を身につけるためには避けて通れませんし,最も重要なものとなります。


頑張って覚えましょう。


話は変わりますが,近代化は科学の時代です。

19世紀から20世紀は科学技術が大きく進化した時代です。


そのため,20世紀はモダニズム(近代化)の時代と言えるでしょう。


ソーシャルワークもモダニズムの流れに沿って進化していきます。


最初に出てきたものは,フロイトの精神分析理論を基盤とする「診断主義アプローチ」です。このアプローチはその後ホリスの「心理社会的アプローチ」に引き継がれて今に至ります。


学習理論を基盤とする「行動変容アプローチ」,プラグマティズム(道具主義)を基盤とする「課題中心アプローチ」,危機理論を基盤とする「危機介入アプローチ」など,それこそさまざまなアプローチが開発されてきました。


モダニズムは,誤解を恐れずに言えば「こうやればこうなる」といったものと言えます。

実に科学の時代とともに発展したという感じがしませんか?


その後,ポストモダン(脱モダニズム,あるいは反モダニズム)という潮流が生まれてきます。


エンパワメントアプローチ

エコロジカルアプローチ

解決志向アプローチ

ナラティブアプローチ


などがあります。


ポストモダンは科学的というよりは,「人間臭さ」の追求と言えるように感じています。

どのアプローチが優れていて,どれが劣っているというものではありません。


複数のアプローチをクライエントが置かれている状況に合わせて使い分ける知識と技術が必要です。


名前とアプローチ方法を丸覚えするのはもったいないです。

どのようなものなのかを理解しながら覚えていくことが大切です。


それでは,詳しく見ていきましょう。


1 バンデューラ(Bandura,A.)は,行動変容アプローチに取り入れられた社会的学習理論を提唱した。



心理学の知識と見事にブレンドされた問題です。


不適切な行動は,未学習あるいは不適切な学習の結果だと考え,学習理論を使って再学習させる⇒行動変容アプローチ


この知識でたいていは解けるのですが,さすがは社会福祉士の国試。そんなに簡単には正解されてくれません。


学習理論には,パブロフ,スキナー,ソーンダイク,ケーラー,そしてバンデューラなどたくさんの人名や学習理論が出てきます。


そのうち,バンデューラは観察学習を提唱しました。


よって正解。


2 ピンカス(Pincus,A.)とミナハン(Minahan,A.)は,一般システム理論に基づいてユニタリー・アプローチを提唱した。


ユニタリー・アプローチはこの時初めて出題されたものです。


受験した人は,おそらく正解かどうかはわからなかったと思います。


ここで少し解説すると,ピンカスとミナハンは,ソーシャルワークを構成するサブシステムについて言及しています。


このサブシステムは,一般システム理論に基づいています。


クライエントシステム

ワーカーシステム

ターゲットシステム

アクションシステム


のシステムです。


システム理論はとても重要です。なぜなら,それぞれはそれだけで存在しているわけではなく,周囲を含んで初めて成り立つものだからです。



システム理論と聞くと難しそう,と感じるかもしれません。


しかし社会はその構成要素そのもので機能するものではなく,周囲の構成要素と関連しながら機能します。


それらがどのように機能するのかを考えたのがシステム理論です。

勉強して損はないですよ。


話を戻します。


ユニタリー・アプローチを提唱したのは,ゴールドシュタインです。


ユニタリー・アプローチは,戦略・ターゲット・段階を重視するアプローチです。


3 ロビンソン(Robinson,V.)は,地域精神医学研究などの成果を取り入れた危機介入アプローチを提唱した。


危機介入アプローチは,キャプランの危機理論を基盤として,リンデマンが提唱したものです。

よって×。


ロビンソンは,タフトとともに診断主義アプローチを批判して,機能的アプローチを提唱した人です。


なお「機能」とは相談機関の機能を活用するという意味です。


4 バーク(Berg,I.)は,社会構成主義を基盤としたナラティブ・アプローチの発展に寄与した。


ナラティブ・アプローチは何度も出題されていますが,提唱者が出題されたのはこの回が初めてでした。


社会構成主義を基盤とするナラティブアプローチは,ポストモダンに位置するものです。


今後も必ず出題されると思います。提唱者はホワイトとエプストンです。


バーグは,シェザーとともに解決志向アプローチを提唱しました。


解決志向アプローチも,ポストモダンに位置するものです。


解決志向アプローチはいろいろな質問技法を用います。面白いですよ。



5 スモーリー(Smalley. R.)は,生態学に基づく機能的アプローチを体系化した。


生態学=エコロジカル・アプローチです。生活モデルに立脚したものです。


代表的論者は,ジャーメインとギッターマンです。


スモーリーは,先述のロビンソンとタフトが提唱した機能的アプローチを発展させた人です。

2024年5月10日金曜日

ソーシャルワーク実践の共通基盤は,価値,知識,技術!!

福祉の国家資格には,社会福祉士,介護福祉士,精神保健福祉士がありますが,社会福祉士は,どこかの領域に特化した資格ではありません。


社会福祉士は資格取得が難しい資格なので,資格を取った人はみんな苦労を共有しています。


そういう面での気持ちの共有はもともとあるとしても,他領域であっても共通したものを持っているのが社会福祉士の資格の特徴です。


現場で働きながら資格取得を目指している人は,技術は基本的に持ち合わせていると思います。


今,苦労して勉強しているものは,3つの共通基盤のうちの「価値」と「知識」を学んでいることになります。


まさに今やっている「ソーシャルワークの基盤と専門職」は,「価値」を身につけるための科目と言っても決して過言ではないと思います。

福祉の実践家から,真のワーカーになるためには,必要なことですし,避けて通ることができないものです。


それでは,今日の問題です。


第26回・問題94 

アドボカシーに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 利用者の権利を主張し,必要なサービスを要求する実践であり,その権利を擁護するためにまず法的手段を行使する。

2 福祉サービスの提供者が利用者のアドボカシーを行うことは,所属する機関への利益相反行為に当たり,専門職倫理から逸脱する。

3 マイノリティなど,特定のグループに属する人々の利益を主張・代弁する活動は行わない。

4 利用者の権利が侵害された状態が調整や交渉によっても解決しない場合は,福祉施設,行政機関などとも対決する。

5 利用者にとって最適な選択を専門的見地から決定し,利用者を説得する。


アドボカシーは,権利擁護のことです。


ソーシャルワークの重要な機能です。

というか中心的機能と言ってもよいかもしれません。


それでは詳しく見ましょう。


1 利用者の権利を主張し,必要なサービスを要求する実践であり,その権利を擁護するためにまず法的手段を行使する。


法的手段を行使して権利擁護することは,リーガルアドボカシーと言います。


「まず法的手段を行使する」という問題文を見て,真っ先に浮かんだのは,詐欺の類いです。


未払いが発生しており,放っておくと法的手段に訴えます


といったものです。


法的手段を行使するのは最後の最後の手段です。


優秀なワーカーは,たくさんの方法を知っていて,場面に合わせて,それを使います。


よって×。


2 福祉サービスの提供者が利用者のアドボカシーを行うことは,所属する機関への利益相反行為に当たり,専門職倫理から逸脱する。


クライエントへのアドボカシーを行うことは,時には所属する機関と対決することもあります。


利益相反になるからと言って,アドボカシーを行わないのは,それこそ専門職倫理から逸脱します。


よって×。


3 マイノリティなど,特定のグループに属する人々の利益を主張・代弁する活動は行わない。


アドボカシーには,個別のクライエントに対して行う「ケースアドボカシー」と,同じようなニーズを持つ集団に対して行う「クラスアドボカシー」があります。


マイノリティに対するアドボカシーはクラスアドボカシーです。


よって×。


4 利用者の権利が侵害された状態が調整や交渉によっても解決しない場合は,福祉施設,行政機関などとも対決する。


クライエントのアドボカシーのためには,所属機関,行政機関などとも対決することもあります。


よって正解。


5 利用者にとって最適な選択を専門的見地から決定し,利用者を説得する。


ソーシャルワークの中で,説得する,指導する,といった言葉が出て来たら,それらはすべて間違いです。瞬時に×をつけましょう。


よって×。


ソーシャルワークの基本は,自己決定


現在のカリキュラムでの国試問題をどのように作るかを検討したとき,合格点に達していても,ある問題が不正解だと不合格にする,というルールが検討されたことがあります。


医師の国家試験ではそのルールが導入されています。


社会福祉士は間違っても致死的になることはなく,看護師国試も検討したけれど導入には至らなかった経緯もあり,ルール導入は見送られました。


もしそのルールが社会福祉士に適用するなら,この問題のような「説得」「指導」といったものではないでしょうか。



「価値」「知識」はしっかり身につけたいです。


国試に向けた勉強はそれを身につけるものです。


「技術」はあっても,「価値」「知識」がないとしたら,社会福祉士としては不適切です。


きつい言葉かもしれませんが,「価値」「知識」が足りないと,試験センターから「あなたはもう一年勉強を頑張ってね」という通知が送られてくることでしょう。


今の努力は,そうならないためのものです。


合格への階段を一歩ずつ確実に上っていきましょう!!

2024年5月9日木曜日

ノーマライゼーションの国家試験問題

 今回は,ノーマライゼーションに取り組みます。


前説なしで,今日の問題です。


第26回・問題93 ノーマライゼーションの理念に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 すべての人間とすべての国とが達成すべき共通の基準を宣言した世界人権宣言の理念として採用された。

2 1950年代のデンマークにおける精神障害者本人の会の活動を通して生み出された。

3 ニィリエ(Nirje,B)が唱えた原理には,ライフサイクルにおけるノーマルな発達経験が含まれる。

4 バンク-ミケルセン(Bank-Mikkelsen,N.)らの働きにより,スウェーデンにおいて世界で初めて法律の基本的理念として位置づけられた。

5 全米ソーシャルワーカー協会の倫理綱領(1996年採択,2008年改定)において,倫理的原理の一つとして明記された。


それでは,詳しく見ていきましょう。


1 すべての人間とすべての国とが達成すべき共通の基準を宣言した世界人権宣言の理念として採用された。


世界人権宣言は,第二次世界大戦で多くの人権が踏みにじられたことを受けて,戦後の1948年に国際連合で決議されたものです。


ノーマライゼーションが世界で初めて明文化したのは,デンマークの1959年法です。


つまり世界人権宣言の時はまだノーマライゼーションは存在していないことになります。


そこからも推測できますが,誤りです。


2 1950年代のデンマークにおける精神障害者本人の会の活動を通して生み出された。


今でこそデンマークは高福祉の国として知られていますが,歴史をひもとけば,貧しかった時代が長く続きました。


アンデルセン童話の「マッチ売りの少女」はデンマークの話です。アンデルセン自身がデンマークの人です。


ノーマライゼーションは,バンク-ミケルセンが,知的障害児が保護の名のもとに施設収容されている現状を変えようと,知的障害児の親の会と一緒に処遇改善を行ったことが始まりです。


よって×。


3 ニィリエ(Nirje,B)が唱えた原理には,ライフサイクルにおけるノーマルな発達経験が含まれる。


ニィリエはスウェーデン時間です。バンク-ミケルセンが「ノーマライゼーションの父」とするなら,ニィリエは「ノーマライゼーションの育ての父」と呼ばれます。


なぜなら,ニィリエは,ノーマライゼーションとはどのようなものを指すのかを明確にしたからです。


ノーマライゼーションは,ノーマル化することです。つまりどのようなものをノーマル(健常)にするのか,かが分かっていることでノーマライゼーションは一層進みやすくなります。


ニィリエが提唱した「ノーマライゼーションの8つの原理」とは以下のようなものです。


①1日のノーマルなリズム

②1週間のノーマルなリズム

③1年間のノーマルなリズム

④ライフサイクルにおけるノーマルな発達経験

⑤ノーマルな個人の尊厳と自己決定

⑥その文化におけるノーマルな性的関係

⑦その社会におけるノーマルな経済水準とそれを得る権利

⑧その地域におけるノーマルな環境形態と水準


問題文の「ライフサイクルにおけるノーマルな発達経験」はこのうちの4つめの原理です。よって,これが正解です。


バンク-ミケルセンやニィリエに共通しているのは,障害があってもなくても同じ社会で生活することです。


日本は「地域共生社会」の実現に向けて動き始めています。


地域共生社会の理念の原点は,ノーマライゼーションやソーシャル・インクルージョンにあります。


4 バンク-ミケルセン(Bank-Mikkelsen,N.)らの働きにより,スウェーデンにおいて世界で初めて法律の基本的理念として位置づけられた。


育ての父であるニィリエの功績で,ノーマライゼーションはスウェーデンで大きく花が咲きました。


そのため,勉強不足の人は,ノーマライゼーション=スウェーデン,だと思ってしまいがちです。


バンク-ミケルセンの活動の理念を世界で初めて法に取り入れたのは,デンマークの1959年法です。


よって×。


5 全米ソーシャルワーカー協会の倫理綱領(1996年採択,2008年改定)において,倫理的原理の一つとして明記された。


倫理的原理

サービス,社会正義,人の尊厳と価値,人間関係の重要性,誠実,コンピテンス


6つです。ノーマライゼーションは含まれていません。


よって×。


これはかなり勉強していないと分からない選択肢のように思うかもしれません。

しかし倫理綱領はたいてい大きな理念で構成されます。


ノーマライゼーションはそれらから考えると方法論の一つだと言えます。

そこから考えると,ノーマライゼーションは入って来ないだろうと予想することはできそうです。

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