福祉の国家資格には,社会福祉士,介護福祉士,精神保健福祉士がありますが,社会福祉士は,どこかの領域に特化した資格ではありません。
社会福祉士は資格取得が難しい資格なので,資格を取った人はみんな苦労を共有しています。
そういう面での気持ちの共有はもともとあるとしても,他領域であっても共通したものを持っているのが社会福祉士の資格の特徴です。
現場で働きながら資格取得を目指している人は,技術は基本的に持ち合わせていると思います。
今,苦労して勉強しているものは,3つの共通基盤のうちの「価値」と「知識」を学んでいることになります。
まさに今やっている「ソーシャルワークの基盤と専門職」は,「価値」を身につけるための科目と言っても決して過言ではないと思います。
福祉の実践家から,真のワーカーになるためには,必要なことですし,避けて通ることができないものです。
それでは,今日の問題です。
第26回・問題94
アドボカシーに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 利用者の権利を主張し,必要なサービスを要求する実践であり,その権利を擁護するためにまず法的手段を行使する。
2 福祉サービスの提供者が利用者のアドボカシーを行うことは,所属する機関への利益相反行為に当たり,専門職倫理から逸脱する。
3 マイノリティなど,特定のグループに属する人々の利益を主張・代弁する活動は行わない。
4 利用者の権利が侵害された状態が調整や交渉によっても解決しない場合は,福祉施設,行政機関などとも対決する。
5 利用者にとって最適な選択を専門的見地から決定し,利用者を説得する。
アドボカシーは,権利擁護のことです。
ソーシャルワークの重要な機能です。
というか中心的機能と言ってもよいかもしれません。
それでは詳しく見ましょう。
1 利用者の権利を主張し,必要なサービスを要求する実践であり,その権利を擁護するためにまず法的手段を行使する。
法的手段を行使して権利擁護することは,リーガルアドボカシーと言います。
「まず法的手段を行使する」という問題文を見て,真っ先に浮かんだのは,詐欺の類いです。
未払いが発生しており,放っておくと法的手段に訴えます
といったものです。
法的手段を行使するのは最後の最後の手段です。
優秀なワーカーは,たくさんの方法を知っていて,場面に合わせて,それを使います。
よって×。
2 福祉サービスの提供者が利用者のアドボカシーを行うことは,所属する機関への利益相反行為に当たり,専門職倫理から逸脱する。
クライエントへのアドボカシーを行うことは,時には所属する機関と対決することもあります。
利益相反になるからと言って,アドボカシーを行わないのは,それこそ専門職倫理から逸脱します。
よって×。
3 マイノリティなど,特定のグループに属する人々の利益を主張・代弁する活動は行わない。
アドボカシーには,個別のクライエントに対して行う「ケースアドボカシー」と,同じようなニーズを持つ集団に対して行う「クラスアドボカシー」があります。
マイノリティに対するアドボカシーはクラスアドボカシーです。
よって×。
4 利用者の権利が侵害された状態が調整や交渉によっても解決しない場合は,福祉施設,行政機関などとも対決する。
クライエントのアドボカシーのためには,所属機関,行政機関などとも対決することもあります。
よって正解。
5 利用者にとって最適な選択を専門的見地から決定し,利用者を説得する。
ソーシャルワークの中で,説得する,指導する,といった言葉が出て来たら,それらはすべて間違いです。瞬時に×をつけましょう。
よって×。
ソーシャルワークの基本は,自己決定
現在のカリキュラムでの国試問題をどのように作るかを検討したとき,合格点に達していても,ある問題が不正解だと不合格にする,というルールが検討されたことがあります。
医師の国家試験ではそのルールが導入されています。
社会福祉士は間違っても致死的になることはなく,看護師国試も検討したけれど導入には至らなかった経緯もあり,ルール導入は見送られました。
もしそのルールが社会福祉士に適用するなら,この問題のような「説得」「指導」といったものではないでしょうか。
「価値」「知識」はしっかり身につけたいです。
国試に向けた勉強はそれを身につけるものです。
「技術」はあっても,「価値」「知識」がないとしたら,社会福祉士としては不適切です。
きつい言葉かもしれませんが,「価値」「知識」が足りないと,試験センターから「あなたはもう一年勉強を頑張ってね」という通知が送られてくることでしょう。
今の努力は,そうならないためのものです。
合格への階段を一歩ずつ確実に上っていきましょう!!