2024年5月11日土曜日

さまざまなアプローチ

 ソーシャルワーク系の科目は


(共通科目)

ソーシャルワークの基盤と専門職 6問

ソーシャルワークの理論と方法 9問


(専門科目)

ソーシャルワークの基盤と専門職(専門科目) 6問

ソーシャルワークの理論と方法(専門科目)  9問


の4科目あり,合計30問です。


国家試験の全出題数は,129問,約4分の1をソーシャルワーク系の科目が占めています。


国試で合格基準点を上回るためには,ここの攻略が欠かせません。


今日は,共通科目の「ソーシャルワークの理論と方法」からの問題です。


第26回・問題99 

相談援助のアプローチに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 バンデューラ(Bandura,A.)は,行動変容アプローチに取り入れられた社会的学習理論を提唱した。

2 ピンカス(Pincus,A.)とミナハン(Minahan,A.)は,一般システム理論に基づいてユニタリー・アプローチを提唱した。

3 ロビンソン(Robinson,V.)は,地域精神医学研究などの成果を取り入れた危機介入アプローチを提唱した。

4 バーク(Berg,I.)は,社会構成主義を基盤としたナラティブ・アプローチの発展に寄与した。

5 スモーリー(Smalley. R.)は,生態学に基づく機能的アプローチを体系化した。


ソーシャル・ケースワークは,イギリスで生まれ,アメリカで発展しました。


そのため,開発者はすべて外国人となります。


外国人アレルギーのある人にはちょっと嫌だなぁ,と感じるところかもしれません。



しかし,「価値」「知識」を身につけるためには避けて通れませんし,最も重要なものとなります。


頑張って覚えましょう。


話は変わりますが,近代化は科学の時代です。

19世紀から20世紀は科学技術が大きく進化した時代です。


そのため,20世紀はモダニズム(近代化)の時代と言えるでしょう。


ソーシャルワークもモダニズムの流れに沿って進化していきます。


最初に出てきたものは,フロイトの精神分析理論を基盤とする「診断主義アプローチ」です。このアプローチはその後ホリスの「心理社会的アプローチ」に引き継がれて今に至ります。


学習理論を基盤とする「行動変容アプローチ」,プラグマティズム(道具主義)を基盤とする「課題中心アプローチ」,危機理論を基盤とする「危機介入アプローチ」など,それこそさまざまなアプローチが開発されてきました。


モダニズムは,誤解を恐れずに言えば「こうやればこうなる」といったものと言えます。

実に科学の時代とともに発展したという感じがしませんか?


その後,ポストモダン(脱モダニズム,あるいは反モダニズム)という潮流が生まれてきます。


エンパワメントアプローチ

エコロジカルアプローチ

解決志向アプローチ

ナラティブアプローチ


などがあります。


ポストモダンは科学的というよりは,「人間臭さ」の追求と言えるように感じています。

どのアプローチが優れていて,どれが劣っているというものではありません。


複数のアプローチをクライエントが置かれている状況に合わせて使い分ける知識と技術が必要です。


名前とアプローチ方法を丸覚えするのはもったいないです。

どのようなものなのかを理解しながら覚えていくことが大切です。


それでは,詳しく見ていきましょう。


1 バンデューラ(Bandura,A.)は,行動変容アプローチに取り入れられた社会的学習理論を提唱した。



心理学の知識と見事にブレンドされた問題です。


不適切な行動は,未学習あるいは不適切な学習の結果だと考え,学習理論を使って再学習させる⇒行動変容アプローチ


この知識でたいていは解けるのですが,さすがは社会福祉士の国試。そんなに簡単には正解されてくれません。


学習理論には,パブロフ,スキナー,ソーンダイク,ケーラー,そしてバンデューラなどたくさんの人名や学習理論が出てきます。


そのうち,バンデューラは観察学習を提唱しました。


よって正解。


2 ピンカス(Pincus,A.)とミナハン(Minahan,A.)は,一般システム理論に基づいてユニタリー・アプローチを提唱した。


ユニタリー・アプローチはこの時初めて出題されたものです。


受験した人は,おそらく正解かどうかはわからなかったと思います。


ここで少し解説すると,ピンカスとミナハンは,ソーシャルワークを構成するサブシステムについて言及しています。


このサブシステムは,一般システム理論に基づいています。


クライエントシステム

ワーカーシステム

ターゲットシステム

アクションシステム


のシステムです。


システム理論はとても重要です。なぜなら,それぞれはそれだけで存在しているわけではなく,周囲を含んで初めて成り立つものだからです。



システム理論と聞くと難しそう,と感じるかもしれません。


しかし社会はその構成要素そのもので機能するものではなく,周囲の構成要素と関連しながら機能します。


それらがどのように機能するのかを考えたのがシステム理論です。

勉強して損はないですよ。


話を戻します。


ユニタリー・アプローチを提唱したのは,ゴールドシュタインです。


ユニタリー・アプローチは,戦略・ターゲット・段階を重視するアプローチです。


3 ロビンソン(Robinson,V.)は,地域精神医学研究などの成果を取り入れた危機介入アプローチを提唱した。


危機介入アプローチは,キャプランの危機理論を基盤として,リンデマンが提唱したものです。

よって×。


ロビンソンは,タフトとともに診断主義アプローチを批判して,機能的アプローチを提唱した人です。


なお「機能」とは相談機関の機能を活用するという意味です。


4 バーク(Berg,I.)は,社会構成主義を基盤としたナラティブ・アプローチの発展に寄与した。


ナラティブ・アプローチは何度も出題されていますが,提唱者が出題されたのはこの回が初めてでした。


社会構成主義を基盤とするナラティブアプローチは,ポストモダンに位置するものです。


今後も必ず出題されると思います。提唱者はホワイトとエプストンです。


バーグは,シェザーとともに解決志向アプローチを提唱しました。


解決志向アプローチも,ポストモダンに位置するものです。


解決志向アプローチはいろいろな質問技法を用います。面白いですよ。



5 スモーリー(Smalley. R.)は,生態学に基づく機能的アプローチを体系化した。


生態学=エコロジカル・アプローチです。生活モデルに立脚したものです。


代表的論者は,ジャーメインとギッターマンです。


スモーリーは,先述のロビンソンとタフトが提唱した機能的アプローチを発展させた人です。

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