難解に思える「社会福祉調査の基礎」でも,ちぁ~んと突破口は存在しています。
しっかり勉強すれば満点に近い点数は取れる手堅い科目になることでしょう。
と言うか・・・
「量的調査の集計と分析」以外はしっかり覚えると得点できるようになります。
出題されても1・2問の「量的調査の集計と分析」です。そんなに怖いことはないです。
さて,それでは今日の問題です。
第26回・問題89
社会調査における面接法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 非構造化面接では,対象者に自由に回答してもらうことになるので,調査内容に精通していない調査員を採用して,面接を実施してもらうのがよい。
2 半構造化面接では,インタビューのおおむね半分程度の時間を,質問内容や質問の順番などが詳細に決められた質問紙によって面接が進められる。
3 面接における会話を録音できない場合には,正確な面接記録を作成するために,面接時はできるだけ会話の書き取りを優先しなければならない。
4 非構造化や半構造化で行われることが多いフォーカスグルーブインタビューでも,質問内容や討議のルールなどを示したインタビューガイドを準備する方がよい。
5 面接法では,対象者との間に十分な信頼関係を築くことが重要であり,いわゆるオーバーラポールの状態を目指すのがよい。
旧カリキュラムでは,「社会調査の基礎」という科目名だったので「社会調査」と出題していますが,「社会福祉調査」と同じです。
さて,面接法には質問内容によって以下のように分類できます。
非構造化面接(自由面接)
半構造化面接
構造化面接
構造化とは・・・
前もって聞く質問を決めておくこと。
構造化面接は,それに沿って面接を行うことを言います。
非構造化面接は,逆に前もって質問項目は決めておかない面接法です。そのため,自由面接と言われます。
非構造化面接は質問が決まっていないので,インタビュアには高度な技術が求められます。
半構造化面接は,テーマに沿った質問をいくつか行って,その後は自由に語ってもらいます。
構造化面接は,決められた質問構造に沿って行われるので,比較的誰でも同じような答えを引き出すことができます。
これらを頭に入れておいて,それぞれを詳しく見て行きましょう。
1 非構造化面接では,対象者に自由に回答してもらうことになるので,調査内容に精通していない調査員を採用して,面接を実施してもらうのがよい。
非構造化面接は,自由に回答してもらいますが,ただ自由に回答してもらうだけではなく,必要な時には修正したり,深く聞き出すことが求められます。
調査のために雇われたアルバイト学生では難しいです。
よって×。
2 半構造化面接では,インタビューのおおむね半分程度の時間を,質問内容や質問の順番などが詳細に決められた質問紙によって面接が進められる。
久々に出ました。これは試験委員が勉強不足の受験生をひっかけようと意図して出したものです。
「半構造化」の意味が分からない受験生は,「半」という意味に引っ張られます。
「半構造化面接」→「半分の時間」と言ったように,「半」→「半」でつなげています。
勉強不足な人は,このような仕掛けに面白いように引っ掛かります。
作問者の思うつぼです。
半構造化の「半」の意味は,構造化面接と非構造化面接の中間なので「半」という表現をしています。
インタビューの時間の「半」分という意味ではありません。
よって×。
勉強が進んだ人なら,絶対に間違わないような問題で間違うのです。
試験委員は引っ掛けポイントを巧みにかくして作問します。問題に慣れていくと,そういうものが見えてくるようになります。
試験中にそれに気がつくと,笑いが止まらなくなってしまうので,注意が必要です。本当ですよ!
3 面接における会話を録音できない場合には,正確な面接記録を作成するために,面接時はできるだけ会話の書き取りを優先しなければならない。
今は,ICレコーダーのようなものがあるので,インタビューの時はそれを使うこともあるでしょう。
しかし録音機器を使用する場合は,調査対象者の許可が必要です。
隠し撮りするようなことは倫理上許されません。また事前に承諾を得ていたとしても,終わってから,録音したものを破棄するように求めてきた場合には,その意向に沿って録音内容を消去しなければなりません。
録音することを承諾されなかった場合,メモすることが必要です。
ここにソーシャルワークの力が活かされます。
会話の聞き取りを優先したために適切な対応ができなかったら,良いインタビューにはなりにくいでしょう。
書き取りに手間を取られていたとしても,うなずくことや相槌を入れることはできます。もしそれができないとすれば,ソーシャルワークスキルを磨くように心がける必要があるでしょう。
ある人は,1時間面接した内容は1時間かけて思い出せなければならないと言い切ります。
録音しておけば安心ですが,ソーシャルワークの面接の内容を録音することは稀です。
正確な面接記録を作成するのは,逐語記録を作成するためには必要ですが,対象者が語ったことの内容の中で特に重要な部分を書きとめておけば,後から思い出すきっかけになるはすです。
もしより正確な記録を残さなければならない調査であったとしたら,録音が承諾されないことも見込んで,記録係と一緒に行うべきだと考えます。
もしその準備をしなかったのであれば,研究デザインに誤りがあったと考えるべきでしょう。
ということでこの選択肢は×です。
4 非構造化や半構造化で行われることが多いフォーカスグルーブインタビューでも,質問内容や討議のルールなどを示したインタビューガイドを準備する方がよい。
これが正解です。
インタビューガイドとは,どのようにインタビューを進めていくかを先に作っておくものです。
非構造化面接は,構造化面接と違い,あらかじめ作成した質問項目によって進められるものではありません。
しかし,先述したように,聞きたいことを深めたり,良くない方向に進みそうになった時には,インタビュアの介入が必要となります。
面接は「出たとこ勝負」(準備なし)であってはなりません。そのために非構造化面接だとしてもインタビューガイドは必要です。
5 面接法では,対象者との間に十分な信頼関係を築くことが重要であり,いわゆるオーバーラポールの状態を目指すのがよい。
ラポールとは,ソーシャルワークでもおなじみですね。「信頼関係」のことを言います。
信頼関係があることで,普通の人だったら聞き出せないような話を引き出すことができることもあります。
しかしその関係が過剰になった場合は,本音を言いづらくなったり,また分析する過程で自分の感情が重なったりすることがあります。
昔から「過ぎたるは及ばざるがごとし」というように,何事もほどほどが良いものです。
よって×。
チームfukufuku21は,国試で出題されるものはすべて意味のあるものだと考えています。人によっては,国試は現場とは違う。勉強だと割り切って勉強すること,と言う人もいるみたいです。
社会福祉士の制度ができたときはそういうこともあったかもしれません。しかし今は出題が吟味されており,すべてがソーシャルワークを深めるものになっていると考えています。
もし,国試の勉強は資格を取るための意味しか持たないものであれば,その資格はペーパー以上の意味を持つことはないことになります。
一見ソーシャルワークに直接関係ないような科目に見える「社会調査の基礎」ですが,今日の問題で分かるように,ソーシャルワークを深めるためのヒントがたくさん含まれています。
先日の問題の質問紙を作るときの注意事項も,面接に応用できるものです。
国家試験は,社会福祉士に求められる姿を求めて出題します。