人によって勉強の進め方は違う
それはそれでよいでしょう。
国家試験の結果が残念だった方に共通しているのは,
問題を解く訓練をしていない,あるいは足りない
と感じていることです。
問題を解く訓練をしていないことは,スポーツで言えば,個々の練習はしていても,練習試合を行わずに,本戦に出場するのと同じようなものです。
本当に試合で勝とうと思えば,練習試合を積み重ねて,その結果を踏まえて修正して,また練習試合を繰り返す,というようなプロセスは欠かせません。
「問題を解く訓練」は,本番に近い形である模擬試験を受けたり,模擬問題集を解いたりすることでついていきます。
知識をつけることに精一杯になって,模擬試験も模擬問題集を解く時間がなくなることだけは,避けてください。
さて本題です。受験科目19科目を分けると法制度と理論系の科目に分けることができます。今,ご紹介している「福祉サービスの組織と経営」は,理論系の科目です。
法制度は,覚えれば得点になりやすいですが,理論系は,丸覚えはほとんど効かないと言っても過言ではないでしょう。
法制度と理論系の覚え方はおのずと変わって来ます。
理論系はちょっと面倒ですが,これはどういうことを言っているのか,自分なりに解釈することが大切です。
理論系が理解しにくい理由は,目に見えないものを言語化しているからと言えます。そういう面では,想像力豊かな方が有利と言えるかもしれません。
さて,それでは今日の問題です。
第26回・問題121
組織学習に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 組織学習論では,組織の偶発的,一時的な適応についても,組織学習としてとらえる。
2 ダブルループ学習とは,既存の枠組みとは異なる新しい可能性を探る組識学習の形態である。
3 組識学習は,新しいものを取り入れたり変革する過程を対象とするのであって,それが組織に定着する段階は対象としない。
4 組織学習では,試行錯誤や実験的取組により生み出される内的な知識獲得を重視し,他組織で成功したシステムの模倣は避ける。
5 医療・福祉事業のような非営利組織においては,営利組識に比較して組織学習の意義は低い。
今日の問題は,組織学習です。組織学習とは,組織も個人と同じように学習し,変化・発展していくことです。
組織であっても,個人であっても学習は学習ですから,分からないなりに,理解することは可能だと思います。
「組織学習,何,それ。分からない」と放棄したらその時点で終わりです。
それでは,詳しく見ていきます。
1 組織学習論では,組織の偶発的,一時的な適応についても,組織学習としてとらえる。
ちょっと難しそうですね。
学習といえば,心理学の学習理論が思い出されると思います。
スキナーのねずみの実験やソーンダイクの猫の実験,ケーラーのチンパンジーの実験などがあります。
特にソーンダイクの提唱した試行錯誤学習を思い起こしてみると,いろいろ試してみて偶然見つけた手掛かりを何度も繰り返すことで学習していくものです。
これで分かるように偶発的な出来事だけでは学習になりません。
それを繰り返すことで学習していきます。
組織学習も同じです。偶発的なものは学習ではありません。
繰り返しが必要です。
よって×。
2 ダブルループ学習とは,既存の枠組みとは異なる新しい可能性を探る組識学習の形態である。
ダブルループ学習という難しいものが出題されました。
組織学習には,
シングルループ学習
ダブルループ学習
があります。
シングルループ学習
すでに学んだことに従って行動し深めていく学習。
ダブルループ学習
シングルループ学習を行っているとき,新たな問題が起こり,それを解決していく学習。
発展する組織は,常にシングルループ学習とダブルループ学習を行っていることになります。
また,組織学習には,アンラーニングという重要な過程もあります。
ダブルループ学習によって新しく学んだことで,古くなり組織に合わなくなったやり方が出てきます。
それを捨て去ることをアンラーニングと言います。
話を戻します。
シングルループが既存,ダブルループが新規,なので正解です。
3 組識学習は,新しいものを取り入れたり変革する過程を対象とするのであって,それが組織に定着する段階は対象としない。
定着しないと学習とは言えません。
組織学習も同じ。組織に定着させるのが組織学習です。
よって×。
4 組織学習では,試行錯誤や実験的取組により生み出される内的な知識獲得を重視し,他組織で成功したシステムの模倣は避ける。
心理学の学習理論では,試行錯誤学習,洞察学習,模倣学習,観察学習などかあります。
試行錯誤学習と洞察学習は,自分一人で学習するものですが,模倣学習と観察学習は,参考にする他者が存在します。
これらも当然学習です。組織学習も同じです。
模倣も組織学習です。
よって×。
5 医療・福祉事業のような非営利組織においては,営利組識に比較して組織学習の意義は低い。
組織学習は,組織が変化・発展していくために行われます。営利・非営利に限らず,組織学習は必要です。
組織にとって現状維持は,あり得ません。
環境も人も変わるのに,その組織だけが現状維持することはないです。
はたから見て,現状維持を保っているとしたら,常に発展する努力をしているからにほかなりません。
よって×。
ダブルループ学習が分からなくても,他の選択肢を丁寧に読み込んでいけば消去できることでしょう。
「分からない」と放棄してしまったら,その時点で終わりです。
苦手心は捨て去りましょう。
国家試験は日本語で出題されます。
どこかに答えにつながるヒントを見つけられる可能性があります。